華湖の湖~おもらし絵ブログ~

主に学校内でのおもらしを、自作絵やコミPo!を使って表現していくブログです。おもらしに興味のある方はもちろんの事、興味の無い方にも、こう言う性癖もあると言う事を理解してもらえたら嬉しく思う限りです。公開している絵に関しては、転載は止めて下さい。

overwrite~第6話~(完)

前回までのあらすじ

『卒演』本番に向けて、本格的に始動し始めた黄水大附属高等学校演劇部。
亜理紗達のおもらしの練習も、日を追うごとに過酷さを増して行きました。
冬休みの練習中、トイレに行く事を禁止された亜理紗は、
練習中におもらしをして、他の部員にお世話をされる内に、パニックを起こさなくなるまでに成長を遂げました。
そして、冬休み最後の練習では、初めて2人同時おもらしを成功させます。
その後も、過激なおもらしの練習は続き、おもらし担当の4人は、
着実におもらしをコントロールする術を身に着けて行きました。
本番前日のリハーサルも無事に終えて、遂に『卒演』当日の朝を迎えるのでした。



2016年度、黄水大附属高等学校演劇部卒業記念公演、当日の朝。

「ふぁ~~・・、っん!!いい天気」
いつもの時間より若干早く目覚めた亜理紗は、
部屋の窓のカーテンを開けると、差し込んで来た陽射しに目を窄めました。

「これならお客さんも来やすいわね、良かった・・・、さて・・・と」
そう呟いた亜理紗が、視線を外から部屋のベットに向き変えると、
そこには、いつものアレが描かれていました。

アレとは勿論、ベットを黄色く染めるおねしょの世界地図です。
カーテンを開ける前から、お尻と背中に感じる濡れた感触で分かってはいましたが、
今朝の世界地図は、いつも以上の規模で描かれているように感じました。

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「あー、凄・・・、本番に向けて臨戦態勢バッチリ・・・・って事で・・・・」
亜理紗は苦笑いを浮かべながら、最早毎日の日課となってしまったおねしょの後始末を始めました。
布団を干した亜理紗は、おねしょパジャマを着たまま、台所にいるお母さんにおねしょの報告をします。
これも毎朝の日課の一つです。

「お母さん、あの・・・、今日もその・・・、おねしょ・・・してしまいました・・・」

「・・・早くシャワー浴びてきなさい」
始業式の日以降、お母さんは何も言いません。

亜理紗は「うん」と小さくうなずくと、いそいそとお風呂場に向かいました。
びしょびしょのパジャマを脱ぐ亜理紗、背中やお尻の部分は、
度重なるおねしょの影響でだいぶ黒ずみが目立って来ています。

「いつも、おしっこで汚してごめんね、でも・・・、それも今日で終わりだから」

シャワーを終えると、朝食の準備を進めるお母さんが声を掛けて来ました。

「悪いわね亜理紗、折角の晴れ舞台なのに・・・、せめて私だけでも見に行ければ良かったんだけど・・・」

「ううん、良いよ、気にしないで・・・」
申し訳なさそうに言うお母さんに、亜理紗は下着姿で言いました。
寧ろ亜理紗は、両親が仕事の都合で来れない事にホッとしている位でした。

(幾ら舞台演出とは言え、
実の娘が皆の前でおしっこをもらすのを見て、嬉しい訳ないもんね、私もちょっと嫌だし・・・)
自室に戻り、制服に着替えた亜理紗は、朝食を食べ終えると家を出ました。

「それじゃあ、頑張ってね」

「うん、行って来ます」
亜理紗はお母さんに手を振ると、学校に向けて歩き出しました。



「おはよう珠樹」

「おはよう」
駅に向かう途中の道で珠樹と合流すると、お互いに挨拶を交わしました。
そしてそのまま、並んで歩きます。

「いよいよだね」

「うん・・・」
挨拶の後、歩きながら2人が交わした会話はこれだけでした。
今日に至るまで様々な事がありましたが、お互い上手く言葉に出来なかったのです。
その後、無言のまま2人で並んで歩く事20分、
駅の改札を抜けて、学校の最寄り駅行の電車が出るホームに着きました。

「あっ、ところでさ、亜理紗の家はおばさん達来るの?ウチは折角の晴れ舞台だから来るって・・・」
駅のホームで電車を待っている時、それまでの沈黙を破って突然珠樹が話し始めました。
スマホを弄っていた亜理紗は、慌てて言葉を返しました。

「ううん、ウチの親は来ない」

「そっかぁ、残念だね・・・、って・・・そうでも無いか」
そう言って、珠樹は照れ笑いを浮かべました。

「おもらしについては、後でどうせわかっちゃうだろうけど、
その場にいない方が、なんか安心するわ」

「だよね・・・、お母さん達、
私が舞台上でおもらしする所見たらびっくりするんだろうなぁ・・・」
複雑な表情を浮かべる珠樹に、亜理紗は

「ってか、そもそも珠樹が考えた事だし、『卒演』ってそういうものでしょ」
と、突っ込みました。

すると、珠樹は「確かにそうだね」っと言うと、その場で大きく伸びをして気持ちを切り替えました。
程なくして、電車がホームに到着しました。

「それじゃあ、頑張りますか!!」

「そうね」
電車に乗った2人は、さっきまでとは逆に、
最寄りの駅に着くまで、今日の舞台について目一杯話し合いました。



学校に着くと、既に数十人のお客さんが『卒演』の会場である特別ホールの前で列を作って待っていました。
時刻は8時10分を過ぎた所、開場までまだ3時間以上もあるのに、皆とても熱心です。

「見て珠樹、もう人があんなに並んでる・・・、どうしよう、ちょっと緊張してきちゃった」
亜理紗が人の列を見ながら言いました。

「早いよ亜理紗・・」

「それにしても、去年ってこの時間に人並んでたっけ??確かそんなにいなかったと思うんだけど・・・」

「それは多分、去年より席が増えたからじゃないかな」
亜理紗の疑問に珠樹は直ぐに答えました。

「去年の卒演の後、チケットが取れなかったって苦情が学校にたくさん来たみたいで、
それで、川名さんや生徒会が中心になって、学校側にホールの2階席の開放を要請したの、それが承認されたから」

「・・・え?それじゃあ今回は2階席も埋まるの!?」

「うん」
珠樹は大きく頷きました。

「でもその増やした2階席が指定席じゃないらしくて・・・、
だから多分、少しでもいい席で見ようって思ってくれてるんじゃないかな」

「・・・なるほどね」

「もらしがいがあるね、亜理紗!!」

「馬鹿っ!!なによそれっ!!」
珠樹の冗談にそう返しながらも、改めて列を見つめた亜理紗は、
こんな時間から期待して待ってくれている人達の為に、
最高の演技と、何より最高のおもらしを見せなくちゃと気合を入れ直しました。



昇降口に着くと、後輩部員の2人が亜理紗と珠樹が来るのを待っていました。

「「部長、朝野先輩おはようございます!!卒演本番、頑張って下さい!!!」」

「「うん、ありがとう」」
目を輝かせて言う2人に、亜理紗と珠樹は笑顔で答えました。

「私達、先輩達の事ずっと応援してましたから、
本番前にこれだけはどうしても言っておきたくて」

「朝野先輩がヒロイン降りるって言った時は、
本当、どうなるんだろうって思いましたもん・・。
この日を無事迎える事が出来て、私、ホッとしてます」

「心配かけてごめんなさい、その分、今日は良い演技を見せるから、ちゃんと見ててね」
亜理紗が言うと、後輩達は元気よく「はい」と答えました。

「あなた達の前座にも期待してるから、しっかりね」

「勿論です、部長!!」

黄水大附属高等学校演劇部、『卒業記念公演』は、
勿論名前の通り、卒業生である3年生のみで行う舞台がメインですが、
その前に1・2年生のみで行う前座が組み込まれているのです。
ここでの活躍が、来年に大きく影響してくるので、前座とは言え1・2年生の部員も気合が入ります。

「私、今日の前座でアピールして、必ず来年の文化祭や卒演で、
朝野先輩みたいにヒロインの座を射止めて見せますよ!!」

「ちょっと、私だって負けないからね、紗季ちん!!」

「・・・2人とも頑張ってね」
亜理紗は苦笑いを浮かべながら後輩達にエールを送りました。

「私達も、今年の演出はどう言うものかなぁって、今から楽しみで仕方が無いです」

「1・2年生の予想も、去年以上に盛り上がりましたよ、
何せ、天才渡辺部長の脚本に、朝野先輩、野口先輩の出演ですからね!!
まぁ、おまけで星野先輩が主人公だし・・・」

「て・・・天才って・・・」
珠樹が照れくさそうに前髪を弄りました。

「占いが得意な川崎さん(1年)が占った所によると、
今年の演出は『水』が関係してるって出たんですけど・・・?先輩、近いですか!?」

「駄目駄目、そう言う質問は禁止よ」
舞台の内容は当日であっても絶対に秘密です。
珠樹が注意すると、後輩はごめんなさいと頭を下げました。

「それでは、部長、朝野先輩、舞台終了後にまた」
上履きに履き替えると、後輩の2人は部室とは逆の方向に歩いて行きました。
公演の内容は3年部員以外には秘密なので、
最終の打ち合わせも、1・2年と3年で、それぞれ別に行わなければなりません、
その為、1・2年の部員は部室以外の場所に集まっているのです。

「・・・水だってさ、珠樹」

「近かったね、私、顔に出ちゃいそうだった」

「川崎さん、恐るべきだね」
部室まで向かう途中、亜理紗と珠樹は、
後輩の予想が余りに近くて驚きを隠せませんでした。

(私達のおもらしを見た後、あの子達、どう思うのかな・・・)
亜理紗はふと、そんな事を思い
中学でおもらしをした時の、失望したような後輩の眼差しが頭の中を過りました。

(もう後輩のあんな顔は見たくない・・・)
少し弱気になった亜理紗でしたが、

「私達がおもらししたら、あの子達きっと驚くだろうね」
珠樹が笑顔でそう言った事で、弱気は何処かに飛んで行ってしまいました。

(そうよね、あの子達が悪く思うハズがないわよね!!)
気持ちを切り替えた亜理紗は、並んで歩く珠樹と共に部室に入って行きました。



8時30分、3年部員総勢15人が部室に揃った所で、朝の最終の打ち合わせが行われました。

扇状に並ぶ部員の前に立った珠樹が話し始めます。

「皆おはよう、今日はいよいよ本番です。
高校生活最後の舞台、絶対に成功させましょう!!」

「「はい!!」」

「それじゃあ、今後のスケジュールを説明します。
まずは、1・2年生の終了の報告を受けてから、開場に移動して最終リハーサル。
その後は、役者と衣装は開場の控室で着替えとメイク、他の裏方さんは、川名さんの指示に従って動いて下さい。
・・・川名さん、よろしく頼むわ」

「はい部長!任せて下さいっ!!」
川名さんが、大きな声で返事をしました。

「それと私と亜理紗、野口さん佐藤さんは、今からトイレ禁止。
万全の状態でおもらし出来るように上手く調整して下さい。
まぁ、今日までずっと練習して来たから大丈夫だと思うけど・・・」
おもらし担当の3人が頷くと、最後に珠樹が、

「それと、くれぐれも本番前にもらさないようにね」
っと念を押しました。

本番前にもらしてしまえば、次の尿意が来るまで大分時間が掛かり、舞台でおもらしが出来なくなってしまいます。
つまりそれは、『おもらし』こそが最大の見せ場である、今回の舞台の失敗を意味するのです。

「これで説明は終わります、質問ある人いる?」
最後に珠樹がそう尋ねましたが、特に質問は出ませんでした。

「じゃあ、1・2年生のリハーサルが終わるまで、暫く待機ね」
珠樹が言うと、皆は部室のあちこちに散って行きました。
舞台装置の設置の話をしたり、台本を読んだり、はたまたスマホを眺めたり、
1・2年生から連絡が入るまで、各々が別行動をして過ごします。

亜理紗は、珠樹と話しながら時間を潰そうと思いましたが、
珠樹は川名さんと今後の事について話し合っていて、亜理紗と会話している余裕はなさそうでした。

(う~ん、それじゃ台本でも見直しておくか・・・)
そう思い、亜理紗は台本を広げました。
するとそんな亜理紗の前に、野口さんがやって来ました。

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「朝野さん、調子の方はどう?」

「え・・?普通に元気よ」
亜理紗が台本から目をそらして言うと、

「そうじゃなくて、おしっこ・・・、尿意の方よ」
っと野口さんは返しました。

「大丈夫よ、この何ヶ月の間、ずっとおしっこの事ばっかり意識して来たのよ。
リハーサル終わる頃に、水分入れれば、丁度本番には良い感じに仕上がるわ」
亜理紗が淡々とした口調で言うと、
野口さんはニッコリ微笑んで「それなら良かった」と言いました。

「なら、私が舞台でおもらしする事は無いかな・・、
それこそ、部長が言ったように本番前におもらししない限り」

「する訳無いでしょそんな事」

「だよね、する訳無いよね。
じゃあ私、トイレ行って来ようかな~」
そう言って背中を向ける野口さんを、亜理紗は慌てて止めました。

「ちょっと野口さん!!珠樹の許可なしにそんな事しちゃ・・・」

「えへへ~、冗談よ、まぁ万が一って事が無いとも限らないし」

「えへへ~、じゃないわよ全く・・・」
代役の2人は、代役の必要が無いと判断されれば、トイレに行く事が許されますが、
その判断は、本番開始直後、部長の珠樹が決定する事になっているのです。
その前に、トイレに行くなんて事をすれば、珠樹・・・、
と言うより、鬼の副部長(川名さん)が黙っていないでしょう。
まぁ、野口さんは川名さんの事をそんなに恐れて無いみたいですが・・・。

「私や佐藤さんの分も、部長や朝野さんには頑張って貰わないと、最高のおもらしを頼むね!!」

「言われなくてもそのつもり」
野口さんのエールに対して、亜理紗は自信満々に答えました。

そうして暫くすると、2年生男子部員がリハーサル終了の連絡を伝えにやって来ました。

「よーし、それじゃあ行くぞ!!」
川名さんの号令に従い、3年部員は会場に入りました。



「はいOK、本番もこの調子でよろしく」
前日のように川名さんのOKが出た所で、最後のリハーサルも問題無く終了しました。
後は、着替えを済ませて、1・2年生の前座が終わればいよいよ本番です。
このリハーサルでは当然おもらしはしませんが、
リハーサル中、亜理紗は本番に向けて順調におしっこが溜まっている事を感じました。

その後、役者である、亜理紗、珠樹、野口さん、佐藤さんの女子4人と、
星野君、矢野君の男子2人は、それぞれ別の控室に入り着替えを始めました。
それと、衣装担当の増岡さんもです。

着替えと言っても学園物なので、学校の制服とは別の制服に衣装替えするようなものなのですが、
それでも、舞台様に作られた衣装に袖を通す事で、本番へ向けて意識が一層高まりました。

着替えを終えて程なくすると、遂に開場を時間を迎えて、特別ホールの中に次々と人が入って来ました。
開場直後、指定席ではない2階席のあちこちで、席の取り合いが起こりましたが、
会場警備を担当している生徒会役員達が上手く対処して大きな問題になる事はありませんでした。

開場から30分が過ぎると、もうすっかり席は埋まってしまいました。
そして、会場に集まった多くのお客さんは、今か今かと開演の時を待っています。

開演まで残り5分、既に舞台袖に待機している亜理紗は、
おしっこを我慢しながらそっと席の方を見て驚きました。

「珠樹、凄いなにコレ!!去年より多いよ!!」

「そりゃ、2階席にも人入ってるんだから当たり前だよ」

「そ・・それは、そうなんだけどさ・・・」
2階席にも人が入る、と言う話だけの時より、
実際に目で見た今の方が、去年との変化をより強く感じて、亜理紗の気持ちを大きく揺さぶりました。

「こんな大勢の前で私達、これからおしっこをもらすんだね・・・」
合唱コンクールの時も、大人数の前でしたが、
この日の特別ホールの客入りは、その時の3倍に迫る人数です。

「何、今更怖気づいたの?」
珠樹は、不安げな顔で呟いた亜理紗を心配して言いました。
それに対して、亜理紗は首を横に振りました。

「寧ろ逆、絶対最高のおもらしをしてやるって気持ちが高まったわ」
そんなやり取りをしている内に、開演前の挨拶の為、
2年生の現役生徒会長が舞台袖から、ステージに向かって歩いて行きました。

いよいよ開演です。



生徒会長の短いあいさつが終わると、直ぐに1・2年生部員による前座が始まりました。
異世界ファンタジー物の一部分にスポットを当てた内容です。
お約束の演出は無く、3年生抜きの初めての舞台のお披露目と言う意味合いが強いです。
ただ、前述した通り、ここでの評判が来年度の部構成に大きく影響する為、
脚本も裏方も役者も前座とは言え物凄く気合が入っているのが見て取れました。

現部長の珠樹も去年、卒演の前座の脚本が評価された事で、
役者の星野君、野口さん、裏方の川名さんと言う部長候補との争いを制したのです。

舞台袖では、そんな前座を見ながら珠樹、野口さんら、
現部長・元部長候補達が集まって何やら話をしていました。
来年度の部長を誰にするのかと言う事を話しているのでしょう。

(来年、部長が誰になっても、演劇部の伝統と誇りを受け継いで頑張って欲しいな)
話し合う珠樹達を見ながら亜理紗は思いました。

30分弱の前座は、あっという間に終わりを告げ、本日のメインイベントが始まる時間になりました。
前座のセットから本番の舞台セットに切り替える為に一度ステージの幕が下ろされると、3年部員の緊張感が一気に高まります。

「急げ!!」
「そっちに脚立置いて」
「照明大丈夫ー?」

演技が終わり、ホッと腕を撫でおろした1・2年部員に代わり、
3年裏方部員達が、慌ただしく舞台セットの設置を開始しました。

(おしっこ・・・、良い感じに溜まってる、練習通りにもらせそうだわ)
裏方部員が設置に追われる中、亜理紗はおなかを摩って膀胱の状態を確認しました。

設置が終われば、いよいよ舞台の幕が上がります。

(やっと・・・、やっとここまで来たね、亜理紗ちゃん・・・)
この舞台が終われば、亜理紗のトラウマも、珠樹の願いも、その全てが解決される・・・。
珠樹は感情の高ぶりを抑えきれませんでした。

(あ・・・忘れてた、もう佐藤さんと、野口さんには、トイレ言って貰っても良いか。
もう、万が一が起こる事は無いだろうし・・・)

しかし・・・・。
それは珠樹がそんな事を考え始めた矢先に起こったのです・・・。

幕が下りてから、約5分。

舞台の切り替えも終わりに差し掛かっていました。
その時、亜理紗の傍では外川さんが、豆田君(裏方部員)に頼まれて、2メートル程の高さの脚立に上って作業をしていました。
しかし、外川さんは、脚立での作業に慣れてなかったのです。

グラッ!!

「えっ?あっ!!」
作業に夢中になる余り、脚立の上で変に体重をかけてしまった外川さんは、大きくバランスを崩しました。

「きゃっ!!!」
ヤバいっと思った時にはもう遅く、外川さんの体は脚立と共に大きく傾き、後は倒れるだけでした。

「危ないっ!!!!」

バターーーンッ!!!!

・・・・・・・。

・・・・。

「「何今の音?」」
「「なんか倒れた??」」
「「事故?!」」
脚立が倒れる音は、ステージの外にも聞こえる程で、客席は騒然となりました。

「外川さん!!」
「おいっ!!大丈夫か!!」
「大変っ!!!」
ステージ上では、3年部員全員が外川さんの元に駆け寄りました。

「ふぅ・・・、危なかった、ケガは無い?」
「あ・・・ありがとう、亜理紗ちゃん」
大分高い所から倒れた外川さんでしたが、ケガ一つなく無事でした。
傍にいた亜理紗が、とっさの判断と持ち前の運動神経で、落ちる直前の外川さんに飛びつき、抱きかかえたのです。

「はぁ~~、良かったぁ2人とも無事だね」
2人の無事を確認してホッとした珠樹でしたが、次の瞬間その表情が一気に青ざめて行きました。

「あ・・・亜理紗・・・・、おしっこ・・・・」

「・・・え?」
ショワワァァァァァアアァァァァアアアアァァァ~~~~・・・・・
外川さんを助ける事に必死だった亜理紗は、安心した弾みに、
朝から大事に大事に溜め込んだおしっこを、盛大に放出してしまったのです。
水溜りは、あっという間に亜理紗の周りに広がりました。

「あ・・・!!ああっ!!嘘!?嫌!!止まって!!止まってぇええ!!!!」
亜理紗の悲痛の叫びは、決して恥ずかしさから来るのものではありませんでした。
こんな所で出しても何の意味もない、お願いだから止まって!!!
そう願い、増岡さんお手製の可愛い衣装の上から必死に股間を押さえますが、
無情にも一度出始めてしまったおしっこは膀胱内を空にするまで止まる事はありませんでした。

「珠樹・・・、どうしよう・・・、わ・・・私・・・・」
おもらし後、まるで覇気を失った亜理紗は、おもらししたままの状態で珠樹を見上げました。

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「・・・・・・・・」
珠樹は亜理紗以上に茫然自失して、亜理紗の生み出したおしっこの水溜りをぼんやりと眺めていました。

「・・・うそ、でしょ・・・」
そして数秒後には、まるで電池の切れた人形のように、膝から崩れ落ちました。



『申し訳ありません、開始まで今しばらくお待ちください・・・、繰り返します・・・』
亜理紗の最悪のおもらしの後、川名さんは直ぐアナウンスの指示を出しました。
急いでおしっこで汚れた床を拭き、今後の事を考えなければなりません。
1・2年生が完全にステージから去った後だったので、演出バレしていない事が不幸中の幸いでした。

「皆、ご・・ごめんなさい、私が・・・私がぼさっとしてたから・・・・」
外川さんが皆の前で深々と頭を下げて謝りました。

「いや、外川さんに頼んだ俺が悪いんだよ、本当すみません・・・」
豆田君も続けて謝ります。

「今はそんな事はどうでもいい!!これからどうするかを考えろ!!時間無いんだから!!」
川名さんの激が飛び、ステージに重苦しい雰囲気が漂いました。

「朝野、お前は取りあえず服着替えろ、増岡、衣装の予備準備してるよな?」

「え・・・うん」
増岡さんは大急ぎで予備の衣装をとりに行きました。

(やっちゃった・・・、もうおしっこ出ない・・・、終わった・・・何もかも・・・)
未だに放心状態の亜理紗は、川名さんの言葉に反応すらできず、
びしょ濡れのスカートを身に着けたまま、立ち尽していました。

「・・・・・」
珠樹も同様で、膝立ちで両手で顔を覆った状態で固まっていました。

「野口?お前まだおしっこしてないよな?」

「はい」

「・・・良かった、まだ行ける」
野口さんに確認を取った川名さんは、ホッと息を吐き出すと、
この世の終わりような格好で固まっている珠樹の元に歩み寄りました。

「部長、いつまでそうしてるつもりですか?立って下さい」
そう言うと川名さんは、そっと珠樹を立たせました。
そして死んだような顔をした珠樹に提案します。

「こうなった以上、代役の野口をヒロインにして、野口の役を朝野か外川に替えるしかありません。
これまで頑張って来た朝野には可哀想だと思いますが、今からおしっこを溜めるのは無理ですし」

「・・・・」

「それで良いですよね?」

「・・・嫌」
川名さんの問いに、珠樹は首を横に振りました。

「え・・?嫌って・・・??、ですが、部長・・・」

「嫌っ!!絶対に嫌っ!!何で!!なんでよぉおお!!!」

「「!?」」
珠樹のこれまで一度も見せた事のない取り乱しように、
川名さんは勿論、他の部員達も動揺を隠し切れませんでした。
それまで放心状態だった亜理紗も驚いて、珠樹の様子をじっと見守ります。

「ここまで来たのに、あと少しなのに・・・、亜理紗・・・亜理紗ちゃんが・・・」
小さい声で言葉を発する珠樹の目から一筋の涙が零れ落ちました。

(珠樹・・・・)
涙を流す珠樹を見て、亜理紗の胸はギュッと締め付けられました。

(ごめん珠樹、でも私・・・もうおしっこ出ない・・・、
くそっ!!くそっ!!くそぉっっ!!!何で・・・何でよりよってこんな肝心な時に・・・・)
そして、自分自身の不甲斐なさに怒りを堪え切れず、ギュッと拳を握りしめました。
両目からは涙も溢れてきました。

「部長、時間がないんです、とにかく落ち着いて下さい!!
こういう事態に備えて、今まで野口が準備していたんでしょ!!」

「・・・・わかってるわよ、そんな事は、
でも、駄目なの・・・駄目なのよ!!それじゃあ!!」

「部長っ!!いい加減にして下さい!!!」
川名さんが珠樹の両肩を掴んできつい口調で言いました。
部長の珠樹には最大限の敬意をもって接している川名さんでも、
この切羽詰まった状況の中、決断を下さない珠樹に苛立ちを隠せなくなって来ました。

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「痛いな!!何するのよ!!」
そんな川名さんを睨みつける珠樹。
それはまるで、ずっと思い描いていた思惑通りに行かなかった怒りをぶつけているかのようでした。

珠樹にとって、今年の卒演は、これまでの伝統を引き継ぎ無事に公演を終える事、
脚本家になると言う夢の為のアピールをする場と言う目的も勿論あります。
でも、一番の目的は、亜理紗にトラウマを克服して貰い、再びバレーボールのコートに戻って貰う事です。
その為には、亜理紗におもらしをして貰わなければ仕方がありません。
代役では意味が無いのです。
しかし、そんな目的がある事は、当事者である珠樹と亜理紗以外、知りません。

「部長、早く指示を・・・、朝野に拘る理由は知りませんが、これ以上お客さんを待たせる訳には行きません」

「・・・・・・」

「部長!!!」
顔を背けた珠樹に、再び川名さんが迫りました。

「・・・・・」

「「何で?」」
「「・・・野口さんじゃ駄目なの?」」
「「何のための代役・・??」」

それでも、何も言わない珠樹に、
川名さんだけでは無く、傍で様子を見ている他の部員達も不信感を抱き始めました。

(珠樹・・・・)
亜理紗と珠樹の事情は、ハッキリ言ってしまえば私情でしかありません。
卒演が2人だけのものではない以上、意地を張り続けるのは単なる我儘です。
それに幾ら珠樹が嫌と言っても、亜理紗が劇中におもらしをするのはもう無理です。
この場は川名さんの言い分が正しいのは明らかでした。

(残念だけど、ここは野口さんに任せるしかない、きっとまたチャンスはあるわよ)
亜理紗は珠樹を説得する事に決め、珠樹の傍に歩み寄ろうとしました。

(・・・あ!!?)
その時、必死な顔で珠樹に迫る川名さんの顔を見た亜理紗は、ある事を思い出しました。

(あれは確か・・・、冬休みに入る前・・・、もしかしたら!!?)
亜理紗は、向かう先を珠樹から、野口さんに変えました。

「えっ!!朝野さん!!何っ!!」
野口さんは、突然に自分に向かって来た亜理紗に驚きましたが、
亜理紗はそんな事には構わずに言いました。

「野口さん!!あの時のアレ!!今持ってる?!」

「え・・?あの時のアレ?って??」
具体性が無さ過ぎる亜理紗の問いに野口さんは戸惑いました。

「だからアレよ!!冬休み前に川名さんに使った奴・・・」
そう言うと野口さんは、理解したと言った顔をしました。

「・・・もしかして、おしっこしたくなる成分?」

「そうそれ!!」
亜理紗は目を大きく開けて野口さんを見つめます。
そんな亜理紗の視線から逃れるように、野口さんは少し顔を横に向けて言いました。

「一応・・・持って来てる・・・けど・・」

「あるのね!!」
それを聞いて、目を輝かせる亜理紗。
話を聞いた珠樹も期待感に溢れる顔を見せました。
でも、野口さんは浮かない顔をしています。

「・・・・」

「それ私に飲ませて!!!そうすれば、私、公演中におしっこ出来るかも・・・」

「やめた方が良いよ・・・」
野口さんは申し訳なさそうな顔をして言いました。

「え!?」

「アレね、副部長に試す前に自分で飲んでみたの。
確かに飲めば直ぐおしっこしたくなるだろうけど・・・、
我慢するとか、そう言う次元じゃないよ、したくなったら」

「我慢できないって事?」

「出来ないよ、多少の個人差はあるだろうけど、
したくなったら数分と持たずにもらすと思う・・・。
ね?そうだったでしょ、副部長??」

「え!?あ・・・ああ、そうだな、
したいと思ってからは、あっという間だった」
野口さんに振られて、川名さんは慌てて言葉を返しました。

あの日の川名さんのおもらしについては、
あの場に居合わせた人達以外には秘密にしていた事もあり、
この話を聞いた他の部員は、驚いた顔を見せました。

(くっ・・・、バレちゃったじゃないのよぅ・・、マジで覚えてろよ野口ぃ~~)
部員達の様子に気付いた川名さんは、顔を真っ赤にして恥ずかしがりました。

「飲んでからどれくらいで効果が出るかもまちまちだし、
たまたまおもらしするタイミングに当たれば良いけど、
もし違ったら・・・、そんなの危険過ぎるでしょ?」

「それは・・・・」
亜理紗は野口さんの言い分に言い返す事が出来ませんでした。
クライマックスの盛り上がりで、驚きの余りと言うタイミングでおもらしするからこそ、
観客は、おもらしを『演出』だと思う事が出来るのであって、
タイミングが狂えば、それは、
舞台中にしたくなってやってしまったと言う、単なる『粗相』と捉えられてしまいます。
それはもう、卒演の失敗を意味するのと同じです。
おしっこしたくなる成分を利用してのおもらしは、我慢出来ない以上、
失敗する可能性の方が圧倒的に高く、野口さんの言う通り、余りにも危険過ぎます。
また、確率は低いですが、最後までしたくならずに公演を終えてしまう可能性だって無くはないのです。

いずれにせよ、リスクの方が高すぎて野口さんとしては、
とてもおススメ出来る方法ではありませんでした。

「部長、私に任せて貰えませんか?
部長がそこまで朝野さんに拘るのには、きっと深い理由があるからなんでしょうけど。
私としては、最初で最後の卒演を失敗で終わらせたくないんです」
野口さんは珠樹に向かって言います。

「わ・・・私!!我慢出来るよ!!ううん、してみせる!!!」
それを聞いた亜理紗は慌てて反論しました。
僅かな可能性を見出した今、自分の為にも、自分の復活を心から望んでいる珠樹の為にも、
やりたいと言う気持ちになったのです。
もう珠樹を説得して、野口さんに譲る気持ちはありませんでした。

「飲んだ事も無いくせに、適当な事言わないで!!
卒演を・・・、今まで必死に皆で積み上げてきたものを無駄にする気!!!」
そう言って野口さんは亜理紗を真剣な表情で見つめました。

「部長、私も野口の意見に賛成です。
朝野の提案は余りに危険です、野口が使えない状況ならまだしも、
そうでない以上、順当に代役の野口をヒロインにして進めるべきです」
川名さんも野口さんに続いて言いました。

「誰が何と言おうと私は出来る!!信じて珠樹!!だって、私がやらないと意ー・・・」

「朝野っ!!お前の意見は分かったから少し黙ってろ!!!」

「もうやめて!!!」
珠樹が言うと、部員全員が部長の珠樹に視線を向けました。

「野口さん、その薬早く持って来て」

「え・・!!ってまさか部長!!!」

「ヒロインは亜理紗で行くわ、変更は無しよ」

「危険過ぎます!!もし失敗したら」
珠樹の決定に川名さんは戸惑いました。

「全責任は私が負うわ、それに、我慢出来るんでしょ?亜理紗?」

「勿論、やれるわ」
亜理紗は珠樹の問いに自信に満ちた顔で頷きます。

「そんな根拠のない言葉に・・・」

「川名さん、私、もう決めたの・・・、これは『部長命令』よ」
この言葉にその場に居る部員全員に衝撃が走ました。

「っ・・・、わ・・・わかりました・・・。野口、急いで薬持ってこい!」
若干渋い顔をした川名さんが、野口さんに言います。

「あっ!・・・は・・・はい」

「あ・・待って野口さん、ついでにおしっこもして来ちゃっていいわ」

「・・・わかりました」
野口さんは珠樹に向かって頷くと、猛スピードで、おしっこしたくなる成分をとりに行きました。

「・・・朝野、後はお前次第だ、頼んだぞ」
渋い顔を向けながら川名さんは言いました。
珠樹の決断に納得していない事は一目瞭然です。
野口さんも多分そうでしょう、しかし、『部長命令』と言われた以上、彼女達は従うしかないのです。

『部長命令』
それは、黄水大附属高等学校演劇部で唯一人、現役部長にのみ与えれられる特権です。
『部長命令」に、他の部員は如何なる理由があろうと反論する事は認められません。
利用制限などはない為、面白半分に『部長命令』を頻発する部長もいれば、
逆にその強制力の強さ故に、他の部員との溝が深まるのを恐れて、一切利用しない部長もいます。
珠樹は後者の方だった為、
亜理紗を含め、部員全員がここでの『部長命令』に驚きを隠せませんでした。

「あ・・・ありがとう珠樹、それと、ごめんね、こんな事になっちゃって・・・」
珠樹の前に来た亜理紗は、そう言って謝りました。

「謝る事ないよ、亜理紗がいなかったら、外川さん、今頃どうなってたか分からないし、
それに何より亜理紗ちゃんの為だもん」

「珠樹・・・」
するとそこに、増岡さんがやって来ました。

「朝野さん、急いで着替えて、濡れた服はこれに入れて後で渡してくれれば良いから」
そう言うと増岡さんは、予備の衣装を亜理紗に押し付けるようにしました。
衣装を手にした亜理紗は、駆け足で控室に向かいました。

「佐藤さん、佐藤さんも、もういいわ、今の内におしっこ・・・」
自分の代役である佐藤さんの事を思い出した珠樹は、佐藤さんに指示を出しました。

「あ・・・、くふぅ・・・」
しかし・・・・。

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「あ・・・ああっ!!!だめぇ・・だめぇぇええ!!!」
ジョパァァァアアァァァァァァァアァァァァアアァァーーー
パシャパシャパシャパシャパシャ・・・・・

珠樹の指示を受けた直後、佐藤さんは、我慢の限界を迎えて、
幕の上がる前のステージでおしっこをもらしてしまいました。

「・・・お前まで、何してんだ!!馬鹿っ!!」

「ご・・ごめんなさい、ごめんなさいぃぃぃ・・・・」
川名さんに怒られた佐藤さんは、水溜りの中心にしゃがみ込んで、その場で泣いてしまいました。

「とにかく、急いで片付けて!!佐藤さん、気にしないで良いよ、
どの道出してもらうつもりでいたし、それがトイレじゃなかっただけよ」
珠樹は佐藤さんの前に座って、慰めました。

「ぶ・・・部長~~~・・・・、ううう・・・」
佐藤さんのおもらしの後始末が粗方済んだ頃、亜理紗と野口さんが戻って来ました。



『大変長らくお待たせ致しました、まもなくー・・・』
亜理紗が着替えを終えて戻って来ると、アナウンスが流れました。

そして、ゆっくりとステージの幕が上がります。

「「待ってましたぁ~~」」
「「期待してるぞ~」」
パチパチパチパチパチパチパチ・・・・
それを見て、観客席からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こりました。

観客席が再び静まり返ると、主人公役である星野君が、最初のセリフを言いました。
遂に舞台が始まったのです。

亜理紗は、舞台袖で星野君と、矢野君の演技を緊張した様子で見守っていました。
最初の出番まで、後数分はあります。

「朝野さん?渡したアレ、どうした?」
亜理紗とほぼ同時に最初の出番が来る野口さんが、亜理紗に声をかけました。

「もう飲んだわ」
一言そう答えた亜理紗に、野口さんは難しい顔をしました。

「早くない?」

「だって、公演時間は約1時間よ、効き目が来るのが遅かったらまずいじゃない」

「まぁ、そうだけど・・・、もし効き目が早く来たら・・・」

「その時は我慢するって、さっき散々言ったでしょ」

「・・・まぁ、こうなった以上、朝野さんを信じるしかないよね」

「任せて、野口さん」
亜理紗は、野口さんに向けて小さくガッツポーズをしました。
そんな事をしている内に、2人の出番が近づいて来ました。

「亜理紗、私、亜理紗がヒロインをやり遂げてくれるって信じてるから、2人で最高のおもらしをしようね!!」
ステージに上がる直前、2人より登場の遅れる珠樹がやって来て声を掛けました。

「勿論よ!!」
珠樹の言葉に、亜理紗は笑顔で答えました。

そして出番の時を迎えて、颯爽とステージ上に姿を現しました。

「「キャーーーー!!」」
「「朝野先輩ーーーっ!!頑張ってーー」」
その瞬間、観客席に座る後輩達から黄色い声援が沸き起こりました。



(・・・来ない)
公演開始から40分、亜理紗はステージに立って演技をしながら焦りを感じ始めていました。
まだ尿意が来ないのです。

(どうしよう・・・、このまま尿意が来ないなんて事になったら・・・)
大抵の場合、30~1時間に以内に効果が表れるのですが、勿論個人差があります。
稀にそれ以上の時間が掛かったり、極稀に効果がないと言った事もあるのです。

もし亜理紗が後者だった場合、かなりまずい状況です。

観客席からは、余りにも普通過ぎる恋愛劇に、
不満ともとれる声を発する人や、退屈過ぎて欠伸をする人が出始めました。

例年であれば、もうこの辺りで一度や二度は、過激演出が出てきているのですが、
今年は、最後のおもらしに集約させると言う珠樹の方針の為、それもありません。
演出目的で見に来た大半の人にしてみれば、当然の行動と言えるでしょう。

それでも、お客さんが帰らないのは、最後まで見ればきっと何かある、と期待しているからに他なりません。
このような状況の今、もし亜理紗がおもらしを出来なかったら、
『金返せー!!』と大暴動に発生するかもしれません。

出番を終えて舞台袖に引き上げる亜理紗を、珠樹と川名さんが心配そうに出迎えます。

「今の所は順調だよ亜理紗」

「うん・・・、でもお客さんの顔が、余り楽しそうじゃないのが何か悔しい」

「気にしないで、お客さんが見たいのはお約束の部分だけだもん」

「まぁ、そうだけどさ・・・」
不満そうな顔をする亜理紗に、川名さんが口を挟みました。

「そんな事より、おしっ・・・、尿意の方はどうなんだ?」

「・・・まだ来ない」

「そうか・・・」
苦虫を噛み潰したような顔をする川名さん。

「大丈夫だよ、まだ時間あるし、最悪、私だけでもおもらしすれば・・・、まぁ大分印象は弱くなるけど・・・・」
ここまで言うと、珠樹は亜理紗の手を握りました。

「まだ時間はあるもん、大丈夫だよ・・、大丈夫・・、信じてるから」
まるで自分自身に言い聞かせるように珠樹は言いました。

公演開始から45分、再び出番が来た亜理紗は、珠樹に見送られながらステージに戻りました。
数分遅れて、珠樹もステージに登場し、2人で主人公を巡るライバル関係を熱演しました。



公演開始から48分、珠樹と主人公を巡る口論を演じている時、亜理紗は下腹部に違和感を感じました。

(この感じ・・・、もしかしたら来たのかな?)
時間内に尿意が訪れた事にホッとしたのも束の間・・・。

ゾワゾワゾワゾワ・・・・!!!

「-っ!!!!!」
亜理紗は一気に、今にも溢れ出してしまいそうな尿意に襲われました!!!

(うわっ!!何コレ!!!ヤバイヤバイヤバイヤバイっ!!!!)
まだ演技の途中だった亜理紗は、必死に平静を装いステージに立ち続けました。

「あ・・・ふっ・・・・くぅ・・・」
呼吸を整えようとしますが、強烈な尿意に遮られ上手くいきません。
薬とはいえ、まさかこれ程まで急激な尿意に襲われるなんて、亜理紗は思ってもみませんでした。

(もれ・・・る、もれ・・・ちゃ・・・)

(亜理紗!?)
異変に気が付いた珠樹は、機転を利かしたアドリブで、一度、亜理紗を連れて舞台裏に引き上げました。

「川名さん、急いで!!」

「はい!!」
舞台裏に戻った珠樹は、川名さんに指示して、急いでカンペを書かせました。

『星野、矢野、野口、次の指示まで暫くアドリブで』
このように書いたカンペを、ステージに立つ3人に向けると、3人は小さく頷きました。

「3人とも、頼んだわよ・・・」
ステージに向かって小声で呟くと、珠樹は、直ぐに視線を隣で苦しそうにしている亜理紗に向けました。

「う・・・はぁ・・・、はぁ・・・」
ギュウ~~~~~・・・・・
しゃがみ込み、無我夢中で両手で股間を押さえつけて、膀胱からおしっこが出るのを防いでいる亜理紗。
その表情には、先程までの余裕は一切感じられません。

「効き目が表れたのね?後どれ位もちそう???」
珠樹は心配そうに亜理紗の事を見つめます。
ですが、今の亜理紗には言葉を返す余裕はありません。

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「む・・・り・・・・」

「朝野!!お前自分でやれるって言ったんだぞ!!まだもらすな!!!死んでも耐えろ!!」

(そ・・・そんな事言ったってぇ・・・、まさかこんなに強烈なんて・・・、
野口さんの言った通りだわ、こんなの我慢できる訳無い・・・)
ギュウ~~~~~・・・・・

「あまり時間がないわ、この際シーン78-82は飛ばして」

「ですが、81を飛ばすと、ストーリーに大きな欠損が・・・」

「確かにそうね・・・・」

(何でも良いから早くして・・・・)
珠樹と川名さんは隣で話し合っているのに、その声がとても遠くに聞こえました。
もう亜理紗にまともは演技は出来ません、尿意に耐える事だけで精一杯です。

珠樹は台本にペンを走らせ、時間を短くするべく、内容を変更しました。
そしてその台本を、川名さんに渡します。

「後7、8分・・・・、いや、5分・・・。
川名さん、これで行くから全員に通達、急いで!!!」

「はいっ!!」
台本を受け取った川名さんは、大慌てで動き出しました。

「亜理紗、あと5分だけ我慢して!!
それとごめん、辛いだろうけど、おもらし前の最後のセリフだけお願い、
後は我慢するだけで良いから・・・」

「・・・・」

「出来るよね?」

コクッ・・・
うずくまりながらも亜理紗は何とか珠樹の問いに答えました。

(やるしか・・・ないじゃない、やるって決めたんだから・・・、
で・・・でも、後5分か・・・、この苦しみを後5分も・・・)
股間を握りしめながら、亜理紗は立ち上がりました。

(ひぐっ!!でるぅぅ~~!!)
立った事でより一層尿意の波が強まります。
何とか踏みとどまった亜理紗は、股間を押さえつつヨロヨロと歩き出しました。

「次、ステージに出たら最後まで戻れないけど、もう少しだから頑張って!!亜理紗!!」

「だ・・・だいじょ・・・ぶよ、任せてって・・・言った・・っじゃな」
そう言って、亜理紗は珠樹に引きつった笑顔を向けました。

「うんっ!!それじゃあ行くよ!!あ・・、ステージ上で前押さえは駄目よ」

「わ・・・わかってる・・・わよ・・・」
ラストに向かって、亜理紗と珠樹は歩き出しました。



「・・・うっ・・・、くぅ・・・」
モジモジ・・・、
モジモジ・・・

時間が1秒、1秒経過する度、ステージ上を細かく移動する度、亜理紗の尿意は強さを増して行きました。
一瞬でも気を抜けば、大量のおしっこがパンツを突き抜けてステージに飛び散る事は間違いありません。

(前押さえられないのが辛すぎる・・・、足もこれ以上動かしたらきっとバレちゃうし・・・)
モジモジ・・・
モジモジ・・・

「はぁ・・・う・・・、ん・・・はぁ・・・はぁ・・・」

(も・・・もう駄目だよ珠樹ぃ・・・、出ちゃう・・・おしっこ出ちゃうぅぅ~・・・)

亜理紗の我慢の限界を考慮して、後半の台本を大幅修正したので、
亜理紗のおもらし前のセリフは後1度だけです、それを乗り越えれば、おもらしシーンまでは1分と時間は掛かりません。

(私のセリフまだなの?早く・・・早くして、お願いぃぃ!!!)
もう亜理紗は、自分が何をしているのかさえわからなくなって来ました。
早くおしっこがしたい、おしっこを出してしまいたい・・・、頭の中がその気持ちだけでいっぱいになりそうでした。

「・・・!」
傍で必死におしっこを我慢している亜理紗を見て、
本当に限界が近い事を悟った主役の星野君は、その場でアドリブを利かして、会話部分を更に大幅に削りました。

星野君の行動に一瞬慌てた珠樹ですが、直ぐ対応して物語を進めます。
これでおもらしまでの時間をさらに短縮できたはずです。

(ナイス星野君!!)
珠樹は星野君にウインクして、感謝の気持ちを伝えました。

(亜理紗のセリフもうすぐだよ、頑張れ!!)
そして心の中で亜理紗にエールを送りました。

ブルッ!!

(・・・って、私もそろそろ・・・や・・・やばっ)

「はぁ・・・はぁ・・・・」
亜理紗の呼吸はどんどん荒くなり、視界も霞んで来ました。
そして、ステージに立っていると言う意識も急激に薄れて行きました。

モジモジ・・・
モジモジ・・・

(私・・何でこんなに必死でおしっこ我慢してるんだろ?
もう・・・しちゃっても良いよね・・・・?
あの時だって、我慢できずに皆が見てる前でもらしちゃったんだし・・・、
今更もう一回もらしたって大差無いじゃん・・・)

モジモジ・・・
モジモジ・・・

(これだけ我慢してると、出した時物凄く気持ち良いんだろうな~・・・、
練習の時からそうだったし・・・、ああ早くおしっこしたいなぁ~・・・、
気持ちよく・・・皆の前で・・・)

モジモジ・・・
モジモジ・・・

(練習?皆の前??あれ・・・何で私、おしっこ我慢してるんだっけ?)

「・・・・!!」

(そうだ!!卒演!!ここで最高のおもらしを!!!)
亜理紗が我に返ったのは、おもらし前の最後の台詞を言う直前でした。

「○○○○~~」
亜理紗は必死に平静を装い、何とかおもらし前の最後の台詞を言い終えました。
後は、おもらしシーンでおもらしをするだけです。

(危なかった、完全に意識が飛んでたわ・・・、もう少しでもらす所だった・・・)
ホッとした亜理紗ですが、まだ油断は出来ません。
おもらしするタイミングまでには、まだ少し時間があります。
もう一刻の猶予もない今の亜理紗にとって、その少しの時間でさえ我慢しきれるか分かりませんでした。

(駄目・・まだ・・・、もう少しだから・・・、何のために今まで必死に練習してきたのよ!!)
自分自身に激を飛ばす亜理紗、でも強烈過ぎる尿意の波は、そんな亜理紗の意志を直ぐにへし折ってしまいました。

ゾワゾワゾワゾワ・・・

「・・・あっ!!」
ジョ・・・

パンツに温かみが広がるのを感じ、亜理紗は慌てました。
・・・何とか決壊は免れましたが、次に波が来たらもう防ぎ切れそうにありません。

(・・・もう駄目、もう少しだったけど、私、これ以上我慢できない・・・、
したい・・・おしっこしたい・・おしっこしたい、おしっこ・・・・)

モジモジ・・・
モジモジ・・・

(ごめんね珠樹、私もう無理、もれちゃ・・・)
亜理紗は我慢を諦めかけて、珠樹の方を向きました。

「・・・・!!」
すると、珠樹の様子を見て亜理紗の表情が変わりました。
さり気なく足をモジモジと動かして、かなり辛そうにしていたからです。
表情からも余り時間が残されていない事がわかりました。
自分の事で精一杯で考えが及びませんでしたが、
珠樹だって、ステージでのおもらしに備えて、朝からトイレに行っていないのです。
直ぐにでもおしっこがもれそうな状況は、亜理紗と大して変わりません。

(そうだよね・・・、珠樹だっておしっこしたいんだよね)
必死に尿意に耐える珠樹を見て、亜理紗は気持ちを切り替えました。

(珠樹だってずっと辛かったんだ・・・、
おしっこしたくてもそんな態度一切取らずに我慢して、
その上、私の為に台本を直して、励ましてくれて・・・)
亜理紗は、さっきまで自分の事しか考えて無かった事をとても恥ずかしく感じました。

(今だけじゃない・・・、
中2の時におもらしして、塞ぎ込んでた私を助けてくれたのも珠樹だし、
その時のトラウマを克服する、今回のプランを考えてくれたのも珠樹。
・・・私はいつだって珠樹に助けられてばっかり)

舞台上では、主人公役の星野君が、今まさにヒロインとライバルどちらを選ぶのか、
結論を出すシーンが演じられていました。
おもらしシーンはもうすぐそこです。

(これだけ散々助けて貰っておいて、私の方から諦めるだなんて・・・、
そんな事、出来る訳ないじゃない!!!)

ゾワゾワゾワゾワ・・・

「ひぐっ・・・・あ・・・っぅ~~~」
ここで過去最高の尿意の波に襲われた亜理紗ですが、
珠樹の気持ちに応えるため、そして勿論、自分自身為に最後の力を振り絞り耐えきりました。

星野君が亜理紗の方を向きました。
いよいよ、最後の愛の告白シーンです。

(珠樹・・・、最高のおもらしを見せるわよ!!)

「やっぱり俺、お前の事が好きだ!!俺と・・・、付き合ってくれ!!!」

「!!!!!」
星野君の台詞を聞いた直後、
亜理紗は、感極まった飛び切りの表情を見せました。
そして・・・・。

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ショワワァァァァァァァァァァァァァァァアアアアァァァアアァアァ~~~~・・・
バチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャ・・・・・・・・・

「ふぁ・・・あ・・・ふぅ~~~・・・・」
股間の緊張を解くと、おしっこは一瞬のうちにパンツを突き抜けて、
少し開いた足の間から流れ落ちて行きました。
水溜りが広がり出した頃、亜理紗は両手を股間にもって行きました。
スカートの前に瞬く間におしっこの染みが広がります。

(下着が熱・・・、はぁ・・き・・・気持ち・・・いい・・・)
やっと我慢から解放された亜理紗は、おもらしの余りの気持ちよさに、
数秒間、舞台上である事を忘れて悦に入ってしまいました。

「・・・・」
そして亜理紗が我に返った頃には、足元にはおびただしい量のおもらしの水溜りが広がっていました。

観客達は、亜理紗の突然のおもらしに一瞬戸惑いを見せましたが、
タイミング的にこれこそが今年の『演出』なんだと理解すると、即座に大歓声と拍手が沸き起こりました。

「「おおおーー!!」」
「「そうきたかー!!」」
「「新しい!!」」
「「ちょ・・・おもらしとか!!!」」
「「こんなのわかるかぁ~~!!!」」
「「可愛い~~!!!」」
「「斜め上過ぎるだろ!!」」
「「待ったかいあった~~!!!」」

(皆、喜んでくれてる・・・、私のおもらしを・・・・)
皆が喜びの声を上げるのを見て、亜理紗は下半身からだけではなく、顔からも熱いものが零れ出しそうになりました。

(うれしい・・・、私、おもらししたのに・・・、物凄く嬉しい・・・・)
合唱コンクールの時とは、比べ物にならないくらい大勢の前でおもらしをしたのに、
亜理紗は、その時とは全く逆の感情で心が満たされて行きました。
そして、その感情が、過去のトラウマを塗り潰して行くのがわかりました。

(や・・・やったね亜理紗!!良し・・・、私も・・・・)
そして、亜理紗のおもらしの熱狂が醒め止まない内に、

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シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウオウオウオゥオオォオオオォォォォ~~~・・・
バチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャ・・・・・・・・・

今度は珠樹が、振られたショックで絶望の表情をしておもらしをしました。
亜理紗と同様に、その足元に広大な水溜りを広げていきました。
勿論スカートもびっしょりです。

「「こっちの子ももらした!!」」
「「まさかの連続おもらしきたーーー!!」」
「「今年の卒演神過ぎる!!!」」
「「このさっきまでの地味な話とのギャップ・・・」」
「「考えたやつ天才だろ!!」」
珠樹のおもらしで、観客はさらに熱狂しました。

(やった、やったわ珠樹!!)
(亜理紗!!)
観客席から拍手が続く中、亜理紗と珠樹は互いに笑顔を向けて『演出』の成功を喜びました。

その後、残りのシーンを演じきり、舞台は大成功で幕を閉じました。
こうして珠樹の思惑取り、亜理紗のおもらしのトラウマは、
舞台での拍手喝采と言う嬉しい記憶に『上書き』されたのです。



「亜理紗ーーー!!!」
ガバッ!!!

ステージの幕が下ろされた直後、感極まった珠樹が亜理紗の胸に飛び込んで来ました。

「うわっ!!だから危ないってば!!手もおしっこで濡れてるし」

「だって・・・、上手く行ったんだもん、嬉しくて・・・、
本番前にもらした時には、もう本当どうなるかと・・・・」

「心配かけてごめん」
亜理紗が言うと、珠樹は胸に埋めた顔を上げました。

「それで・・・、どう?」
珠樹の言う、「どう?」とは、嫌な記憶は『上書き』されたのか?と言う事でしょう。
そうだとわかった亜理紗は、珠樹を見つめて笑顔で言いました。

「うん・・・、もう大丈夫、ありがとう、珠樹」

「・・・おかえり、亜理紗ちゃん」

「ただいま」

「はぁ・・、それにしても上手くいって良かった・・、よく我慢出来たね」
2人で話している横に、ホッとしたような表情をした野口さんがやって来ました。

「我慢できるって言ったじゃない」

「大分辛そうだったけどね・・・、まっ・・・いいか、とにかくお疲れ」
そう言って野口さんは、亜理紗の肩を叩きました。

「・・・・ご・・・、ごめんなさい、わ・・・私、本番前に、しちゃって・・・・、
代役の役目を果たせなくて・・・」
続いてやって来たのは佐藤さん、どうやら未だにさっきのおもらしを気にしているみたいです。

「さっきも言ったけど気にしないで、舞台は上手くいったんだし」
丁度、控室に言っていた亜理紗は、何の事か分かりませんでしたが、
珠樹が言うと、佐藤さんは「はい・・」っとそれでも納得できないと言う表情をしました。

「お疲れ様でした、取りあえず、部長と朝野は早く服を着替えて・・・・」
川名さんもやって来て、2人に着替えを進めます。
ですが、そこに更なる来訪者がやって来ました。

「部長ーーー!!朝野先輩ーーー!!お疲れ様です!!!」

「驚きました、最高でした、感動しましたー!!!」
朝、2人の前にやって来た後輩達です。

「まさか、今年の演出がおもらしだったなんて、流石部長・・・、やっぱ天才ですよー」

「それに先輩達のおもらし姿、めちゃ可愛かったです!!」
感動しっぱなしの後輩達に、亜理紗と珠樹はタジタジでした。
調子に乗った後輩は、最後にこんなお願いをしてきました。

「あの・・・、駄目なら仕方ないですけど・・・、
もし許してくれるなら、今のおもらし姿の先輩達と写真を取らせて下さいませんか?
私・・・、今日の感動をずっと残しておきたいんです!!!」
後輩は自分のスマホを取り出して、頭を下げました。

「紗季ちん!!、それは流石に駄目だって・・・」
亜理紗と珠樹は、少しだけ驚きましたが、後輩のお願いを快く受け入れる事にしました。

「良いよ、その代わり自分で楽しむだけよ、SNSとかに上げるのは禁止、わかった?」

「はい勿論です!!!ありがとうございます!!!」

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カシャ

その後、2人は着替えを済ませ、部員達はホールの控室に移動しました。
そこで反省会や、軽い打ち上げなどが行われた後、夕方の暗くなりかけた時間に解散となりました。



「珠樹、帰ろうか」
少し薄暗くなった控室には、既に亜理紗と珠樹しか残っていません。
鞄を背負った亜理紗の問いに、珠樹は少し険しい顔をして言いました。

「あのね、亜理紗、ちょっと良いかな?」

「・・・ん?何よ改まって・・・」

「卒演が無事終わった今ね、亜理紗に会って貰いたい人達がいるの・・・」

「・・・は?」
何だそれは、っと亜理紗は不思議に思いました。

(会って貰いたい人達・・・?人達????)
珠樹が妙に複雑な表情をしている事も気になりましたし、
複数形なのも気になりました。

珠樹は一体誰に、会わせようとしているのでしょう・・・。

「呼んでくるから、ちょっと待っててくれる?」

「えっ・・ちょ!!」
亜理紗の不安をよそに、珠樹は勝手に話を進めて
控室から出て行ってしまいました。

ソワソワしながら、一人で待つ事、数分。
開かれた扉から、数人の見知った顔が亜理紗の前に現れました。

「あ・・朝野先輩、お久しぶりです」

「あなた達・・・・」
それは中学時代、当時バレー部の後輩だった1、2年の部員達でした。
おもらしした日の翌日以降は全く顔を合わせていないので、
数年ぶりに見た彼女達は、少し大人びて見えましたが、間違いありません。

「あなた達がどうして・・・ここに??」
訳が分からないと言った態度を取る亜理紗に、
彼女達と一緒に戻って来た珠樹がフォローを入れました。

「私が呼んだの、この子達に、亜理紗の事を見て貰いたくて」

「って事は、舞台も・・・見てたの?」

「うん・・・、それとね、あの時の真実を、
トラウマを克服した今の亜理紗に知って貰いたくて。
その事を、この子達の口からちゃんと言って貰いたくて」

「あの時の真実?」
珠樹の言ってる事がまるで理解できない亜理紗は、不安を募らせました。
それを察した当時2年の後輩の一人が、とても申し訳なさそうな顔して話し始めました。

「先輩がおもらししちゃった次の日・・・、
私達、先輩を無視して馬鹿にするような態度を取りましたよね。」

「・・・・」

「ほ・・・、本当は私達・・・、あんな態度取りたくなかったんです」

「・・・え?」

「た・・・確かに、先輩がおもらししちゃったのを見た直後は、
中学生にもなって・・・って、思いましたけど。
でも、おもらししちゃってもキャプテンはキャプテンだし、
寧ろあんな恥ずかしい思いをしちゃったキャプテンを、
私達で励まして上げよう、そう・・・思ってたんです」

「・・・・」
ここまで聞いて、亜理紗は大体の事を理解しました。

「で・・・でも、副キャプテンが・・・・」
後輩は口元を押さえました。

「あ・・朝野先輩を、ひ・・引き摺り下ろす絶好のチャンスだから・・・、
朝野を無視しろ、軽蔑しろ、お・・・おもらしを、馬鹿にして追い出せ・・・って、
合唱コンクールが終わった後、部員全員を呼び出して言ったんです」

バレー部には、亜理紗の圧倒的な実力を快く思わない者も数多くいました。
副キャプテンと彼女を支持する数人がその代表格です。
おもらしした翌日は、亜理紗もそんなアンチ勢が馬鹿にしてくる事はある程度覚悟していました。
でも、まさか、後輩を呼びつけてそんな事まで言っていたなんて。

「嫌ですって言ったんです。
そんな事したら、朝野先輩がバレー部に来られなくなりますって・・・。
でも、言う通りにしないと、ただじゃ済まさないって・・・。
わ・・・私達じゃどうしようも無かったんです・・・」
後輩は、ここまで話すと泣き出してしまいました。
他の後輩達も下を向いて俯いています。

「その後、本当に先輩は、バレー部に来なくなって、
部活どころか教室にも来てないって知って・・・・。
私達、とんでもない事しちゃった、謝らなきゃって・・・。
でも、今更謝った所で、余計先輩を傷つけちゃうんじゃないかって思って・・・」

「ごめん亜理紗、私、この子達が後悔してるって、
亜理紗が保健室登校してる時から知ってたの、
でも、あの時の亜理紗に行ってもきっと逆効果だと思ったから、
亜理紗の心の傷が癒えるその時まで待ってもらう事にしたの」
珠樹が後輩の話をフォローするように言いました。

「朝野先輩・・・、いえ、朝野キャプテン!!」
後輩達は、姿勢を正し、真っ直ぐに亜理紗の方を向きました。

「「すみませんでした!!!!」」
後輩達は大きな声で言うと、亜理紗に深々と頭を下げました。

「・・・・・」
亜理紗は、頭を下げたままじっとしている後輩達をじっと見つめました。
暫くの沈黙が続いた後、ゆっくりと亜理紗が口を開きました。

「もう良いわ、頭上げてよ・・・」
言葉を受けて後輩達はゆっくりと頭を上げました。

「言いたい事が全くない訳じゃないけど、そもそも悪いのはあいつら(副キャプテン達)だし、
あなた達の気持ちは伝わったから、だから・・・、もう良いわよ」

「キャプテン・・・」
後輩達はホッとした様子を見せました。

「と言うか、元はと言えば、トイレに行かずにおもらしした私が全部悪いのよね。
私に人を恨む権利なんてないわ・・・、全部自業自得よ」
亜理紗はここで後輩達に背負向けて、大きく伸びをしました。

「所であなた達、さっきの舞台観たんでしょ」

「「・・・はい」」
後輩達の返事を聞いて、亜理紗は振り向きざま、自信に満ちた表情をして言いました。

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「どうだった、私のおもらし、最高だったでしょ?」





~epilogue~

7年後。

都内某所のファーストフード店に、眼鏡を掛けたスーツ姿の小柄な女性が一人、
コーヒーを啜りながら人を待っていました。

「遅いなぁ亜理紗・・・、あんまり時間無いのに」
それは、元黄水大附属高等学校演劇部部長、渡辺珠樹です。

珠樹は高校を卒業後、大学に通いながら、自作の脚本を多くのコンクールに応募しました。
元々才能がある事に加え、あの『卒演』の脚本が全国的に評判だったこともあり、珠樹の脚本は早々に賞を受賞しました。
そして、大学を卒業する前から、珠樹の元には脚本依頼の仕事が舞い込むようになりました。

珠樹は脚本家になると言う夢を実現させたのです。

今では、TVドラマをメインに、映画や舞台の脚本も手掛ける、
業界にその名を知らぬものはいない超売れっ子脚本家となっていました。

「・・・もう」
珠樹は腕時計で時間を確認しました。
っと、そこにやっと待ち人である亜理紗がやって来ました。
真っ直ぐ、珠樹の居る席に向かう亜理紗を見て、
店内にいた何人かの人が、「え?」「もしかして??」「あの人!?」っと、驚いた顔を見せていました。

(・・・さっすが、有名人)

「ごめん珠樹、遅れちゃった」
そう言って、普段着姿の亜理紗は珠樹の前に座りました。

「もう・・、今日しか時間無いからって言って来たの亜理紗でしょ、
こっちは無理矢理時間作って来たって言うのに・・・」

「いやぁ、久しぶりの完全オフだから、つい寝過ぎちゃって・・・」

「全く・・、全日本のエースがこれじゃ、オリンピックが思いやられるわね」

亜理紗は高校を卒業後、大学ではバレー部に入部してコートへの復帰を果たしました。
初めこそ、数年のブランクが響いて実力を発揮できませんでしたが、
半年もすると、天才の本領を発揮して、メキメキと頭角を現して行きました。
そして、2年でエース、3年ではキャプテンを務めると言う、中学時代さながらの順風満帆な道を歩みました。
それだけではなく、3年と4年の時には、2年連続で大学選手権で優勝を果たし、
朝野亜理紗の名を、全国に轟かせる事になりました。
大学卒業後は、実業団チームに所属し、そこでは初年度からエースとして活躍しました。
それから程なくして、全日本のメンバーに選ばれました。
現在、全日本でもエースとして、チームで一番の得点を上げる活躍を見せています。
全日本のエースですから、当然知名度は抜群です。
先程のように、通りすがりに、「えっ」っと思われる事も少なくありません。

また、スポーツ誌の記者からのインタビューも度々あります。
そこで必ずといっていい程、聞かれる事がありました。
それは、中学2年の途中から大学入学までの、バレー部に所属していない空白期間の事です。

『学校の部活レベルでは意味無いと思ったからですか?』
等と憶測を語る記者に対して、亜理紗は常に

「いえ、中学時代、学校でおしっこをもらしてしまって、それがトラウマになってしまい、
バレーが出来なくなってしまったんです、細かい事は省きますが。
でも、トラウマを抱えてた高校時代に所属していた演劇部で学んだ事は、今の私にもしっかり活かされています」
っと、真実を包み隠さず話す様にしています。

そんな事もあって、亜理紗宛のファンレターの中には、
学校でおもらしをしちゃった女の子達からの物も結構あるそうです。

『勇気もらいました』
『朝野選手でもおもらししちゃうんですね、なんか安心しました』
『私も過ぎた事(おもらしの事)は忘れて頑張ります』
『朝野選手も私と同じって思うと、親近感沸きます』
等、亜理紗は全国のおもらしっ娘達の心の支えとなっているのです。

「・・・で、その後、珠樹の方はどう?野口さんにOK貰えたの?」

「駄目、TVには出ないって。舞台こそ私の生きる道だからって」

「野口さんらしいわね・・・」
亜理紗は小さく苦笑いをすると、注文したコーヒーを一口飲みました。

「しょうがないから、TV向けの脚本を、舞台向けに書き直してる所よ、
全く、ただでさえ忙しいのに・・・」

「頑張れー、珠樹が自分で選んだ道なんだから」

「わかってるわよ」

元黄水大附属高等学校演劇部2枚看板女優の一人、野口良乃さんは、
高校を卒業後も、舞台一筋の人生を歩んでいます。
演技について一切妥協しない精神は今でも健在だそうです。

「まぁ、野口さんは良いとしても・・・、佐藤さんは・・・」

「あ・・・、う~~ん・・・」

「送られて来たDVD見た?」

「見た・・・けど・・・」
そう言って2人は暫く口を閉ざしました。

珠樹の代役として、共におもらしの練習を頑張った佐藤栞音さんは、
その後、何とエッチなビデオの世界に入りました。
それも、おもらしを専門とするおもらし女優になったのです。

『卒演』の本番前におもらしをしてしまい、自分の仕事を果たせなかった事が、
佐藤さんの心にはずっと残ってしまいました。

その為、佐藤さんは、

「私のおもらしは、まだ終わってない!!」
っと言う思いの元、今でもおもらしに身を置く生活をしているのです。

「やっぱり、ちょっと責任感じちゃうなぁ~、私・・・」
下を向いてそう話す亜理紗に、珠樹は、

「まぁ、本人が楽しそうだから良いんじゃない・・。
この前会った時なんか、これが私の天職だったのかもって、嬉しそうに言ってたわよ。
私、その後、佐藤さんの生おもらし見せられたし・・。
寧ろ、ありがとうみたいな事まで言ってたわよ」
と言って励ましました。

「なら、まぁ、良いのかな・・」

「う・・うん」
気まずい雰囲気になって来たのを察した珠樹は、
話題を替えようとスマホを取り出して、ある写真を見せました。

「ねぇ見てコレ、川名・・・じゃなくて、関本さんからさっき送られて来たの」

「わぁ、可愛い、2人目生まれたんだね、男の子、女の子?」

「男の子だって・・・」

「一姫二太郎だぁ」

元黄水大附属高等学校演劇部副部長、川名(現・関本)美和さんは、
大学を卒業後、就職した会社で運命の出会いを果たし、結婚しました。
あの鬼の副部長が真っ先に結婚なんて・・・!!
っと、結婚を聞かされた時、元同級生部員達は驚きを隠せませんでした。

「たまに連絡取り合うんだけど、未だに私に対して敬語なのよね・・・。
当時から嫌だったんだけど、まぁ部長だからって我慢してたのよ。
もう部長じゃないから止めてって言ってるのにさ・・・」

「川・・・、関本さんにとっては、今も昔も、珠樹は尊敬する部長なんでしょ」

その後、2人で他愛の無い近況報告をする事数分。

「いけない、・・私もう行かなきゃ」
腕時計を確認した珠樹が慌てて席を立ちました。

「番組の打ち合わせ?」

「うん、来年の新番組のね・・・、バレーが題材のドラマなの」

「え・・それって・・・・?」
亜理紗は何となく自分を指さしました。

「うん、そうだよ、亜理紗がモデル。
私がずっとやりたかった話だよ」

「へぇ・・、そうなんだ」
亜理紗は照れくさくなって頭を掻きました。

「番組成功の為にも、次の試合も必ず勝ってよね!!私も時間作って応援に行くから」

「勿論よ、私がエースでいる内は誰が相手だろうと負けたりしないわ!!」
自信たっぷりに亜理紗が言うと、珠樹は「うん」と頷いて歩いて行きました。

「あ・・待って、珠樹!!!」
背を向けて歩く珠樹を、亜理紗は呼び止めました。
驚いた珠樹は慌てて振り向きました。

「私、絶対世界一のバレー選手になるから!!」

7年経って・・・、

「オリンピック・・・、必ず、金メダル取って見せるから!!」

進む道は変わってしまった2人ですが・・・。

or047.jpg
「うん、期待してるよ、亜理紗ちゃん!!」

珠樹が、バレーで輝く亜理紗を『ちゃん』付けで呼ぶことだけは変わっていません。



こんばんは。

overwrite、ようやく完結しました。

全3話、1ヶ月を目途に終わらせる予定が、蓋を開けてみれば倍の6話で完結までに1年掛かってしまいました。
自分自身の見通しの甘さに嫌気が指しますが、兎に角、無事書き終える事が出来て今はホッとしています。

絵は描き始めると、その過程を楽しめるのですが、
文章は元から苦手ですし、辛さの方が多かったですね(笑)
overwriteは生みの苦しみと言うのを大分味わった作品となりました。
楽しく書けた部分も無い訳では無いですけどね。

取りあえず、長編の執筆は当分の間封印しようと思います。

その分を、絵の方に力を注いで行きたいと思っています。
やっぱり自分は、文章より絵を描いている方が楽しいので・・・。
その絵の方はまだまだ厳しい評価を下されてしまっていますが、
必ず、多くの人に楽しんで貰えるような絵を描けるようになります!!
その為に、もっともっと精進します。

さて、完結と言う事で、少し裏話的な事を・・・。
このお話は、とあるアニメ映画(最近実写化もした)からヒントを得て作りました。
その映画で、主人公の少女は舞台の成功(正確には過程も含めて)をきっかけに、
過去の自分にかけていた呪いから脱却するのですが、
同じ事を、おもらしで出来ないかなと考えたのです。

最初は、亜理紗と珠樹の2人だけで、最後まで話を進めるつもりでした。
1話で野口さんの名前は出て来ますが、必要だから出しただけで、その後も出すつもりは一切ありませんでした。
でも、どんどん話が長くなり、いつの間にかレギュラー定着、気がついたらおもらしのコーチ役になってましたww
川名さんは個人的に気にいってしまった為に、出番が増えて行きました。
そして、川名さんにおもらしさせたいが為に出した薬が、
最後、重要な役目を果たす事になるとは自分自身想像もしていませんでした。
亜理紗が直前でおしっこをもらしてしまう展開は、前から考えていたのですが、
問題は、その後どうやってまた本番までにおしっこを溜めるのかでした。
全然浮かばなくて・・・、ある時ふと、亜理紗じゃないけど、
あの時出した、薬の事を思い出したのです・・・。
5話で川名さんにおもらしさせて無かったら、いまだに悩んでいたかも知れません。

川名さん、おもらししてくれてありがとう!!!www
(個人的にまたいつかおもらしして貰いたい・・・)

佐藤さんはこの話で一番割を食った形になってしまった気がします。
でもまぁ、珠樹の言ってたように、本人が幸せなら良いのかな?(^^;

最後に、自分は舞台についての知識が全くありません。
なので、舞台裏で行われている事などは、想像で書いています。
知っている人からすれば、全然違うと感じるかもしれませんが、ご了承ください。

おもらし小説なので、大事なのはあくまでおもらしですので。

長くなってしまったので、今後の予定などは、次回以降お知らせ致します。

前回の日記に拍手を頂きました。
ありがとうございます。
  1. 2017/12/03(日) 17:39:31|
  2. overwrite
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overwrite~第5話~

主な登場人物

『朝野亜理紗(あさのありさ)』
主人公。
中学時代にしたおもらしのトラウマを引きずっている少女。
中学時代はバレーのエースだったが、おもらしがきっかけで現在無期限休止状態。

『渡辺珠樹(わたなべたまき)』
黄水大附属高等学校演劇部現部長で、亜理紗の中学時代からの親友。
亜理紗のトラウマを消し去る為、『卒演』の舞台で亜理紗におもらしをさせる計画をした。

『野口良乃(のぐちよしの)』
演劇部部員で、役者の一人。
役者としての意識が人一倍高く、舞台でおもらしする事が決まったと同時に、
舞台上で最高のおもらしをお客さんに見てもらう為、熱心におもらしについて研究を始めた。

『佐藤栞音(さとうしの)』
演劇部員、ライバル役の珠樹に不測の事態が起きた場合の代役として、
亜理紗、珠樹、野口さんと共に、おもらしの練習に参加する事になった。

『川名美和(かわなみわ)』
演劇部副部長、裏方のまとめ役の他、全体を通して部を影で支える少女。
サバサバした男勝りの性格で、同性からの人気が高い。



これまでのあらすじ。
黄水大附属高等学校演劇部、3年部員の朝野亜理紗は、中学時代にしたおもらしのトラウマが消えずにいる少女。
中学時代はバレー部のエース&キャプテンとして活躍していましたが、おもらしをきっかけに止めてしまいました。
亜理紗の親友の渡辺珠樹は、亜理紗がおもらしのトラウマを克服し、再びバレーに復帰する為にある計画をします。
それは、高校最後の公演である『卒業記念公演(卒演)』の舞台でおもらしをして、辛いおもらしの記憶を、舞台成功という嬉しい記憶に上書きするというもの。
計画を知った亜理紗は、猛反発して「だったらヒロインを降りると」言い出します。
しかし、珠樹の必死の説得により、結局、亜理紗はヒロインを引き受ける事にしました。
そして、いよいよ『卒演』の練習が始まりました。
しかし、トラウマを抱える亜理紗はまともにおもらしが出来ない、裏方部員はおもらしを嫌がる等の問題が発生します。
そこで、役者と裏方の意思疎通を図るため、一度3年部員全員でおもらしをする計画を立てて、何とか無事に終える事が出来ました。
徐々におもらしへの耐性も付き始めた亜理紗、果たして舞台の行方は・・・。

それでは、本編をどうぞ



冬休みが間近に迫ったある日。

黄水大附属高等学校演劇部では、『卒業記念公演』(卒演)の練習が徐々に本格化して来ました。

台本の読み合わせが終わり、台本を持ちながらの動きの練習に切り替わったのです。

見せ場のシーンでの役者のおもらし練習は毎日行われてますが、
全員でおもらしをして、気持ちを一つに出来た事により、
練習が始まってから数週間が経過した今、
部員達は(男子含めて)おもらしに慣れ、変に意識する事はなくなりました。

ですが・・・。

or029.jpg
シャァァァァアアアアアアアア~~~・・・・・

「佐藤さん、早いってば!!もっと我慢して!!」

「ご・・・ごめん、良乃ちゃん・・・・」
おもらしするタイミングまで我慢できなかった佐藤さんは、
おしっこの池にしゃがみ込んで謝りました。

「反省は後、拭くから早くどいて」
バケツと雑巾を手にした副部長の川名さんは、
佐藤さんを池から退かせると、テキパキとおしっこを拭き取り始めました。

佐藤さんのおもらしの後、
直ぐに、亜理紗のおもらしのタイミングがやって来ました。

「・・・・・・」
ショロロロ~~~・・・・
タイミングはバッチリでしたが、おしっこの勢いはとても弱く、
とても印象に残るおもらしと言えるものではありません。

それに加えて・・・。

「う・・・うぅ・・・うぐっ・・・ひっく・・・いやぁ・・・、いやぁああ・・・」
中学時代のおもらしのトラウマを抱える亜理紗は、
おもらしをすると、その度におもらしした時の事がフラッシュバックして、どうしても泣いてしまうのです。

「亜理紗・・・、今日も良く頑張ったね」
珠樹はその度に、亜理紗に抱きついて落ち着かせます。

亜理紗の後におもらしをした、珠樹と野口さんの2人も・・・。

ポタポタポタ・・・・。

「うう~~~・・・、おしっこ・・・・思うように出てくれない・・・」
亜理紗以上におもらしの勢いが弱い野口さん。

「・・・ご・・ごめん、もう少し・・・、あ・・やっとでた・・・」
ショワァァァ~~~・・・
おもらしするタイミングでおもらしが出来ない珠樹。

野口さんの指導の元で、
おもらしする事自体は出来るようになって来た4人の役者ですが、それぞれに問題を抱えたままでした。



「よし、今日の全体練習はここまで、特別練習に入るから4人以外は早く帰れー」
川名さんの声に従い、男子部員と女子裏方部員達が部室を後にしていきます。

特別練習とは、もちろん「おもらし」の練習の事です。
全体での練習後、おもらしをする4人(2人は代役ですが・・)と、
監視役の川名さんの5人だけが残り行われていました。

まずは、1リットル入りのお茶を全員が一気に飲み干す所から始まり、
ミーティングをしながらその時(尿意)が来るまで待ちます。

「まぁ、言ってる事は毎日同じなんだけど・・・。
私と朝野さんは、後どれだけ勢いのあるおもらしを出来るか、
部長は決まった時間におもらし出来るように、
佐藤さんは、逆に我慢が出来るようにするって所ね」
野口さんの話を、残りの3人は真剣な表情で聞き、頷きました。

「朝野さんはそれに加えて、おもらしの度にパニック起こして泣くの、本当困るから早く直してね」

「分かってる・・・」
野口さんの言う事は最もです。
役者が舞台上で自分を失ってしまってはどうしようもありません。
でも、どうしても過去のトラウマを払拭出来ない自分が悔しくて、亜理紗は唇を噛みました。

「部長と佐藤さんは、出るおしっこの関しては合格点なだけに、
私と朝野さんを足して2で割ればちょうど良いんだよね~・・・」
野口さんは呟くように言いながら、鞄から350ml入りのペットボトルを取り出すと、
監視役の川名さんにそれを差し出しました。

「副部長も喉乾いたでしょ?コレ、どうぞ」
いきなりの事に、川名さんは、始め「え?私っ??」と自分に向けられた事に気が付きませんでした。

「どういうつもりだ野口?こんな事、今までしてなかった癖に」

「別に、ただ余ってたから・・・、いらないなら良いけど・・・」
そう言って、手を引っ込めようとする野口さんから、
川名さんは、スッとペットボトルをつかみ取りました。

「いや、悪い・・、そう言う事なら貰っておくよ」
そう言って、川名さんはペットボトルの蓋を開けると、中のお茶を飲みました。

(ニヤリ・・・)

「じゃあ、おしっこしたくなるまで、次は、おもらし動画で研究ね。
魅せるおもらしって段階では無いけど、予習も兼ねて・・・」
野口さんが持って来たおもらし系DVDをみんなで見て、それぞれ意見を出し合います。
どうすればより魅力的なおもらしが出来るか、
ギリギリ平静を装えるおしっこ我慢から、しっかりしたおもらしをするにはどうすれば良いか等。
亜理紗はこの時、「おもらし」に対してこれ程までに真剣に向き合っている女子高生は、
自分たち以外にはいないだろうなと、思いました。

やがて、4人に尿意が訪れると、それぞれ課題を意識しておもらしをしましたが、
結局誰一人課題を克服する事は出来ませんでした。

「う~ん、上手く行かないけど、時間はまだあるし、
とにかくたくさんおもらしして、身に着けるしかないね・・」
後始末を終えた後、野口さんは渋い顔を浮かべながら言います。

「だね・・・、亜理紗も良くなって来てるよ」
珠樹は隣で手で涙を拭っている亜理紗の方を叩きながら言いました。

「・・・ひっく、でも・・・、ま・・・また、泣い・・って」

「私も、また直ぐ、もらしちゃった・・・・」
佐藤さんも、もじもじしながら反省します。

「それでね、こうして毎日おもらしの練習をしてる訳だけど・・・」
そこで突然、野口さんが改まって話始めました。

「毎日おもらししてると、ついつい忘れがちになる事があるんだけど、部長、なんだかわかる?」

「え・・なんだろう?」
珠樹は泣いてる亜理紗の頭の撫でながら首を傾げました。

「じゃあ、佐藤さんは?」

「う~~ん、ちょっと・・・」
佐藤さんもわからないと言った様子です。

「じゃあ、答えるね、それは恥じらいの気持ちだよ、おもらしを恥ずかしいと思う気持ち」

「えっ、それは今でも十分持ってるけど・・」
珠樹が言うと、野口さんは、イヤイヤ・・と首を横に振りました。

「練習始めた最初の頃より、3人とも大分恥じらいが消えちゃってるよ。
おもらしする事に必死になって、もらした後は恥じらいより、
おもらし出来たって言う達成感の方が強くなっちゃってる、・・・違う?」

「言われてみれば・・・」

「ちゃんとおもらし出来たって安心してる所はあるかも・・・」
珠樹と佐藤さんは、確かに・・と険しい表情を見せました。

「おもらしは、恥じらいがあってこそって言われる程だから、
おもらしは恥ずかしい事って意識だけは、忘れないように気をつけてね」
野口さんの言葉に、3人は頷きました。

「・・・っと言う事で、おさらいの意味を込めて、
これから皆で、恥じらいのある生のおもらしを見ましょう」

「はーい・・・、って??良乃ちゃん、『生の』って?」

「えっとね、もうそろそろ準備OKだと思うんだけど・・・」
そう言うと野口さんは、体を震わし重い足取りで教室を出ようとしている人物に声を掛けました。

「副部長・・・、どこに行こうとしてるんですかー?」

「どこって・・・、見りゃわかるだろ!!」
川名さんは、右手で制服のスカートの前を押さえながら言います。

「駄目ですよ、はいこっち来てみんなの前に立って下さい」
野口さんは、川名さんの左手を握ると、強引に教室の真ん中付近に引き戻しました。

「野口、さっき言ってた『生の』おもらしって・・・、まさか・・・」

「だって・・・、その為に、さっき渡したペットボトルに、
おしっこしたくなる成分を入れておいたんですから・・・」
クスっと、小悪魔ような表情を浮かべる野口さん。

「舞台の成功の為に、飛び切りの恥ずかしいおもらしを、私達に見せて下さいね!!!」

「い・・嫌よ!!わた・・・そんな予定聞いてな・・・」
ジュワ・・・

「い・・・いや・・・、いやぁああああああああ~~~~~・・・・・っ!!!!」
シャアャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ~~~~・・・・

暫く我慢していた川名さんですが、結局我慢できずに(そもそも3年部員で一番我慢出来ないし(笑))
4人の視線を受けながら、あっという間におもらししてしまいました。

「う・・・いやぁ、見ないで・・・見ないでよぅ・・・・」
制服のスカートをビショビショにし、床に大海原を広げた状態で固まってしまった川名さん。
よっぽど恥ずかしかったのか、俯いた顔の両側から、涙がとめどなく流れていました。

「これが、恥じらいのあるおもらしです。
私も含めてだけど、皆、今の副部長の恥ずかしい姿を目に焼き付けて忘れないようにね」
まるでインストラクターのような口調で、野口さんは言いました。

or030.jpg
「の・・野口ぃ・・・、お前、卒演が終わったら覚えてろよ・・・・」
耳まで赤くした川名さんは、涙を流しながら野口さんを睨みつけます。

「そんな怖い顔しないで・・・、制服のクリーニング代は出しますから、許して下さいよ~」
その後、川名さんのお着替えと大海原の後始末を済ませると、その日の特別練習は終了しました。

「最後のは・・・流石にやりすぎだよね・・・」

「そうだね・・・、川名さん、ショックを受けてなきゃ良いけど・・・」

帰りの電車の中で、亜理紗と珠樹は川名さんに同情しました。



冬休みに入りました。

冬休み中、演劇部の練習は、卒演の練習のみとなります。(1・2年の部員は自宅で自主練です)
朝から晩まで練習できるこの期間をどう過ごすかが、卒演を成功させるためにはとても大事になります。

その初日、朝のミーティングで早速、珠樹は亜理紗に過酷な試練を与えました。

「冬休みの練習中、亜理紗はトイレの使用を禁止します」

「・・・は?」
亜理紗は珠樹が何を言っているのか分かりませんでした。

「トイレ使っちゃ駄目って言ったの」
改めて言い直す珠樹。

「な・・・何言ってるのよ!!練習中ずっと禁止って事!?
それじゃあ、もし、したくなっちゃったらどうするのよ」

「おもらしするしかないね」
珠樹はあっさり言いました。

「慣れすぎも確かに良くないけど、亜理紗の場合、
まず、おもらしの度に泣くのを何とかしないといけないから。
それには、練習以外でもおもらしして、多少慣れてかないと駄目でしょ。
野口さんと話し合って、可哀想だけど頑張って貰う事にしたの」

「頑張ってって・・・、幾らなんでも・・・」
難色を示す亜理紗ですが・・・。

「部長の指示だぞ、やるよな朝野?」

「朝野さん、舞台の成功の為には必要な事だよ」

「・・・もうっ!!わかったわよ、おもらしすれば良いんでしょ!!」
川名さん、野口さんに追撃され、ヤケクソ気味に指示に従う事にしました。

「うんそう、おもらしすれば良いの」
珠樹は亜理紗を方を見ながらニコッと笑いました。

「あ・・、お腹痛くなったりとか、大きい方は特例として使って良いから、でも、おしっこは駄目だよ・・」

それから亜理紗は、珠樹の指示通り、冬休みの練習中(大での1度の使用以外)
トイレを使わずに過ごしました。

「それじゃあ、シーン12から練習再開するよ」

「あ・・・待って部長、朝野さん、しちゃったみたい・・・」

真冬の中、暖房が効いているとは言え、やっぱりトイレは近くなるもの・・。
演技練習でのおもらし以外で、亜理紗は少ない日で3回、
日によっては7回程、部室の床に恥ずかしい水溜りを作り上げました。

or031.jpg
「はい、朝野さんパンツ脱ぐよ~」

「今日はこれで4回目だっけ・・・?替えのパンツとか足りる?」

「昨日のが乾いてるから、多分平気・・・」

亜理紗がおもらしをする度に、増岡さん、外川さん等裏方の女子部員たちが、
床を拭いたり、おしっこで濡れたパンツや服を洗ったり、お着替えを手伝ってあげたりしました。

それでも、やはり、過去の強烈なトラウマを払拭する事は難しく、
おもらしの度に泣いてしまうのを完全に止める事は出来ませんでした。
ですが、部員たちの心優しい対応に触れる事で、
大泣きしてパニックを起こす事はなくなりました。
泣いても精々、目に涙が溜まる位にまで気持ちを落ち着かせられるようになりました。

舞台自体の練習の方も、台本を外しての練習が始まる等、いよいよ本番に向けて実践的なものに切り替わって行きました。



年が明け、冬休み最後の特別練習の時。

「はいっ!!ここで朝野が感極まってのおもらし!!」

「・・・っ!!」
プシャアァァァァアァァァァァァァァアアァァァ~~~

「続いて部長が、ショックでおもらし!!」

「・・・・」
シュウゥウウウウウゥゥゥゥゥウウウウゥゥウゥ~~~

ポタポタ・・・
ポタポタ・・・

「おお~・・・」

「初めて上手くいったな・・・・」

「2人ともやったね!!沢山練習(おもらし)した成果だね!!」
川名さん、野口さん、佐藤さんの3人が、喜びの声を上げました。

「た・・珠樹ぃ、出来た・・・出来たよ!!」

「うん、出来た!!勢いも量もタイミングもばっちりの完璧なおもらし!!」
おもらしの特訓を始めてから約一ヶ月半、
個々の課題も克服されて来た中で、
初めて、納得できる2人同時おもらしをする事が出来ました。

「亜理紗ー!!」
嬉しさの余り、亜理紗に飛びつく珠樹。
その勢いで2人の足元に広がったおしっこの水溜りが辺りに飛び散りました。

「うわっ!!ちょっ!!珠樹!!おしっこ跳ねてるからっ!!」

「だって嬉しくて・・・、本番までまだ一ヶ月あるけど、この調子で頑張ろ」

「う・・うん」
亜理紗にとって、辛い思い出しかないおもらし。
おもらしをして嬉しいと言った珠樹の言葉は、とても変な感じがしました。
でもそう・・・、確かに今、ビショビショの下半身から伝わるのは、悲しみではなく、喜びの感情です。

(コレを、あの時みたいな大勢の前でやれれば、確かに変わる事が出来るかも知れない・・・)
珠樹の体をギュッと抱きしめながら、亜理紗は確かな手応えを感じました。

「驚きの中にちゃんと恥じらいも出てたし、
後は完全に泣かないで貰えればもっと良いけど、まぁ、遠目にはわからないから良いかな」
2人のおもらしを、評価した後、野口さんは続けて言いました。

「さてっ!!残り一ヶ月、明日からまた学校が始まるけど、そこで最後の仕上げね・・・」

「・・・?」

「3人とも、明日、始業式前に一度部室に来て。
あ・・、それと朝、トイレ行っちゃあ駄目だよ」



or032.jpg
「・・・ん?あ・・・、ちゃ~~~・・・」
翌朝、目覚めた亜理紗に、濡れた下半身と世界地図がお出迎え。

(またやっちゃった・・・、もう、ここの所毎日だなぁ・・・)
中学の時のおもらしを夢に見ている訳でも無いのに、
冬休みが始まった辺りから、亜理紗はおねしょを毎日するようになってしまいました。

(う~~、部活で毎日おもらししてるから、おもらしが体に染みついちゃったのかなぁ・・・)
外に布団を干しながら、亜理紗は。はぁ~・・っとため息を吐きました。
そして、台所で朝食の準備をしているお母さんに報告します。

「何!今日もなの!?亜理紗・・、どこかおかしいんじゃないの??」
流石に連日連敗続きだと、お母さんの表情も険しくなって来ます。

「病院に行った方がいいんじゃない?」

「だ・・・大丈夫、別に病気じゃないから!!」

「何でそう言い切れるの?
大きな病気の前兆って事も考えられるのよ?本当冗談抜きで・・・」

「本当にヤバイと思ったら、自分で行くから・・・。お願い、もう少しだけ様子見て・・・」

「・・・・・・」
下半身びしょ濡れ姿で懇願する亜理紗に、
お母さんはそれ以上何も言いませんでした。



「はぁ~・・・、今朝は流石に参ったわ・・・・」
亜理紗は珠樹との登校中、今朝のお母さんとの一件を、話しました。

「・・・よかったぁ」
それを聞いて、ホッとしたような表情を浮かべた珠樹は、小さな声で呟きました。

「良かったって・・・?何が???」
亜理紗が質問すると、珠樹は顔を俯かせて小声で答えました。

「その、実は・・・、わ・・・私もその・・・、
ここ2週間くらい、ま・・・毎朝・・・えっと・・・」

「え・・・まさか?おねしょ!?」
亜理紗の言葉に、珠樹は顔を赤くして頷きました。

「だ・・・だって、これだけ毎日のようにおもらししてたら、
体におもらし癖がついちゃってもしょうがないじゃん・・・」

「珠樹、家族にはどう言ってるの?
私は、前々からしてたからまぁ・・・、アレだけど」

「何も・・・、しちゃうようになってから、直ぐに、おねしょシート買って来て、
パジャマは、お風呂で洗って乾かして・・・」
珠樹は何とか誤魔化しているみたいです。
お母さんだけにでも事情を話して、協力して貰えば良いのに・・・、
と少し思った亜理紗ですが、そこは女のプライドがあるのでしょう。



「おねしょなら私も毎晩だよ・・・」
始業式前に部室に集まった、おもらし担当の4人。
自然と話題はおねしょの事になり、野口さんは恥ずかしげもなく、さらっとそう言い放ちました。

「舞台に向けて、体がそれだけ臨戦態勢を維持できてるって事だから、とても良い状態と見ていいわね!!」

「で・・でもさ、良乃ちゃん、もしこのまま治らなかったら・・・」
笑顔を弾ませる野口さんに対して、亜理紗達と同じく、
毎晩おねしょするようになってしまった佐藤さんが、不安そうな顔をして言いました。

「そんなの舞台が終われば治るでしょ、舞台で必要だからしてるだけなんだから・・・」
何言ってんの?と言わんばかりの口調で、野口さんは言いました。
野口さんにとって、おもらしはただの舞台演出。
徹底的に研究し、毎日のようにもらしているのは、舞台に必要だからであって、必要なくなればそれで終わりなのです。

(本当、見上げたプロ根性ね・・・)
亜理紗は、舞台が終わったら、野口さんはスパッとおねしょが止まるんだろうなぁと思いました。

「そんな事より、今回集まって貰った理由は・・・、コレ!!」
野口さんは、持って来た大き目の袋から、ある物を取り出しました。
それは・・・・。

「か・・・紙オムツ・・・・」
佐藤さん思わず顔を赤くしました。

「野口さん、ひょっとしてだけど・・・」
珠樹は何か勘づいた様子です。

「皆には始業式中にコレを穿いておもらしして貰うよ、あ、勿論私もね」
野口さんは手にした紙オムツを胸の前で掲げると、3人にニコッと笑顔を向けます。
それを聞いた3人は流石に動揺を隠し切れませんでした。

「そ・・・それって、全校生徒が集まる中でするって事・・・だよね・・・」
そう言う亜理紗の顔が少し青ざめていました。

「そうだよ、だって本番では不特定多数の前でおもらししないといけないんだから。
そろそろもっと大人数の前で出来るように練習しないと」

「そ・・・それなら、部活のみんなの前で毎日のようにしてるじゃない、な・・・何もそこまで・・」

「甘いわ朝野さん」
野口さんは、小さく首を横に振ると続けて言います。

「部員の前でって言うリミッターは解除できたかも知れないけど、
部員以外の不特定多数の前でとなるとまた違ってくるわ」

「そ・・・そんな事・・・」

「とにかく、これも練習の一環だからよろしくね。
普通におもらし出来れば一番なんだけど、流石に皆の前で水溜りを作る訳には行かないから」
言いながら野口さんは、3人に紙オムツを手渡しました。

「・・・・・」
渋々紙オムツを受けった亜理紗。
始業式中に紙オムツにおもらし・・・。
これまでの練習の成果もあり、恥ずかしさには何とか耐えられるかも知れませんが、
亜理紗にはそれ以外に大きな問題がありました。

それは、体育館と言う場所。

(体育館は、あの日の事を思い出して、今でも少し息が詰まる場所なのに・・・)
紙オムツに履き替えながら、亜理紗は一つ大きく息を吐きました。
その様子を見て不安を察した珠樹は、亜理紗の肩をポンポンと叩くと、

「大丈夫だよ亜理紗、私が傍にいるから」
そう言って励ましました。

「ありがとう・・・、でも、背の順で並ぶからさ、私ら大分離れるよね・・・」

「き・・・気持ちの問題だよ!!!」

その後、野口さんの用意していた1リットルのお茶を全員で一気飲みして、始業式に向かいました。



(やっぱり体育館は嫌だわ・・・)
始業式のプログラムが進行されて行く中、
亜理紗の頭の中では、あの日のおもらしの記憶が駆け巡って行ました。
紙オムツのゴワゴワした感触を肌で感じながら・・・。

(ああっ!!駄目駄目!!考えるな、あの日の事は!!)
幾らそう思っても次々とあの日の記憶が蘇って来ます。
限界ギリギリの時の事、おもらしした瞬間の事、台の上でおしっこまみれで泣いた時の事、
びしょびしょのスカートで体育館を出て行った時の事。
体育館に入ると大体いつもこうでしたが、
今回はこれからおもらしをするとあって、普段以上に強い意識が働いているみたいでした。

「はぁ・・・、はぁ・・・」
亜理紗の呼吸が段々荒くなり、顔色も悪くなって来ました。
普段はここまで酷くはなりません・・・。

(こんな状態でおもらししたら、私・・・・)
朝トイレに行かず、部室でも1リットルお茶を飲んだ事で、亜理紗は既に相当おしっこがしたい状態でした。
でも、今おもらしをしたら、またパニックを起こすのではないかと思い、したいけど出来ない状態に陥ってしまいました。
パニックを起こせば、水溜りを作る事は無くても、周りが騒然とするでしょう。
最悪の場合、紙オムツにおもらしした事がバレた上、舞台演出のネタバレにもなってしまい、
これまでの努力が全て水の泡となってしまう恐れがあります。

(野口さんには悪いけど、やっぱちょっと、ここではおもらし出来ないよ)

もじもじ・・・
もじもじ・・・・

しかし、生理現象は亜理紗の状況など汲み取ってくれるはずが無く、
強烈な尿意が容赦なく亜理紗に襲い掛かって来ました。

ゾワゾワゾワゾワ!!!

「はぁ・・・っ・・・くっ!!」
立っている事もあって余計に我慢が効きませんし、さらに1月の寒さが追い打ちを掛けます。
トイレに行かせて貰おうとも考えましたが、やっぱりそれを言い出すのも恥ずかしく、我慢する他ありませんでした。

(後は校長先生の話と校歌で終わり、それ位なら我慢できる・・・)
そう自信を覗かせた亜理紗が、同じ列の前から4番目に並ぶ珠樹の方を見ると、
小さく体を震わせているのが、列の最後尾からでも分かりました。

(珠樹もしてないんだ、そりゃそうだよね、幾らなんでもこんな所でなんて・・・、もしバレたら・・)
校長先生のありがたーい言葉をBGMに、亜理紗はおしっこ我慢を続けながら珠樹の様子をじっと見つめました。

(後は校歌だけ・・・、何とか終わるまで我慢しようね珠樹)
15分にも及ぶ校長先生のありがたーい言葉が収束に向かい始め、
亜理紗が心の中でエールを送った直後、珠樹の体の震えがピタッと止まりました。
そして、僅かに両足を広げて・・・。

「え?」
亜理紗は驚いて目を見開きました。
珠樹の一連の動きは、どう考えても「おもらし」へと向かう時のものだからです。
珠樹は顔を気持ち上に上げると、広げた足の動きをピタッと止めました。

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シュウウウウ~~~~~~~

そんな音が、亜理紗の耳にも聞こえてきそうでした。

(珠樹、おもらししてる・・・)
毎日のようにおもらしをし、他人のおもらしも見ている亜理紗には、
珠樹が今、紙オムツの中におしっこをもらしているのが直ぐに分かりました。
周りの人にわからない様に小さく体を震わせると、
珠樹はゆっくりと顔を亜理紗の方に向けて、そして、ニコッと微笑みました。
流石に相当恥ずかしいのか、顔は耳まで真っ赤です。

「珠樹・・・」
珠樹のその笑顔には、「亜理紗も頑張って」と言う気持ちが含まれている様に感じました。

(でも・・・やっぱり私・・・)
決心がつかない亜理紗、おろおろしながら周りを見渡すと、隣のクラスの野口さんを発見しました。
何かぶつぶつ言いながら、スカートの後ろをなんとなく気にしています。
おしっこを我慢してる様子は無く、既におもらしをした後のようです。
続いて見つけた佐藤さんを見ると、遠くてよくわかりませんが、下を向いて相当恥ずかしそうにしているのがわかりました。
佐藤さんも、ちゃんとおもらししたみたいです。

「~~~はぁ~・・・」
亜理紗は一度大きく深呼吸をしました。

(私だけ、逃げる訳には行かないよね)
3人の様子を見た亜理紗はようやく決心しました。

始業式の方は、校長先生の話が終わり、スピーカーから校歌の前奏が流れ始めました。

「・・・よしっ!!」
小さくつぶやいた亜理紗は、校歌を小声で歌いながら、
普段の練習の時と同じようにおしっこ我慢の力を抜きました。

「・・・ん」
プシュッ

その直後、亜理紗の身に着けた紙オムツの中に、
昨日の夜から溜まりに溜まったおしっこが吹き出しました。

or034.jpg
シュイイイイィィィィィ・・・ショロロロ~~~
モコモコモコモコ・・・・・

「はぁっ・・・・ん」
大量のおしっこを吸収した紙オムツは、ものすごい勢いでモコモコと膨らんで行きました。

(な・・・何これぇ、へ・・変な感じ・・・)
紙オムツにおもらしした事が無い亜理紗は、その独特の感触に戸惑いました。
そして、校歌の1番の歌詞が終わる頃、亜理紗のおもらしは無事終わりました。
おもらしの最中、昔の事がフラッシュバックするかと思いましたが、
紙オムツおもらしの独特の感触に気を奪われたおかげでその心配はありませんでした。

(出来た!!私ちゃんとここ(体育館)でおもらし出来たよ!!珠樹!!)
少し足をがに股にしながら、亜理紗は前方の珠樹に心の中で叫びました。

「・・・あ!?」
珠樹の方をよく見ると、珠樹も足をがに股にしていました。
それは、野口さん、佐藤さんも同じでした。
亜理紗を含めて、現在、体育館には4人の少女が紙オムツにおもらしをして、足をがに股にしていました。

(私達、こんな大勢の前で、紙オムツの中におしっこ溜めて立ってるんだ・・・)
亜理紗は、変に冷静になってそんな事を考えてしまい、途端に恥ずかしさが込み上げて来ました。



始業式が終わると、おもらしをした4人は周りに悟られないように細心の注意を払いながら部室に戻って来ました。

「お疲れ~、様子を見た限り皆ちゃんとおもらししたみたいだけど、一応確認ね」
野口さんはそう言うと、スカートの中に手を入れて、ずっしりと重たくなった紙オムツを下ろしました。
そして、吸収体の所を裏返して、皆に見せます。

「はい、御覧の通り、皆も見せて」
野口さんに倣って、3人は、恥ずかしがりながら紙オムツを下ろして皆に見せました。
全員吸収体は見事なまでに黄色に染まっていました。

野口さんは、皆から使用済み紙オムツを受け取ると、ビニール袋を二重にしてきつく縛りました。
そして、別の袋から何かを取り出して3人に配りました。
なんとそれは・・・・。

「え・・・、紙オムツ!!な・・・何でまたっ!!!」
亜理紗が動揺すると、

「今日一回だけな訳がないでしょ、
これから毎日、放課後までに最低一回、学校でおもらしして貰うから、
授業中でも休み時間でも、タイミングはいつでも良いよ」

「え・・・ええ~~!!」

「よ・・・良乃ちゃぁ~~ん、な・・・何もそこまで」
珠樹と佐藤さんも流石にそれはと言う顔をしました。

「舞台で最高のおもらしを見せる為の大事な練習だよ、
遊びじゃないんだから、もっと真剣に取り組んでよ」

「そ・・・そうだね、ごめん、野口さん」
珠樹がそう言って野口さんに謝ります。
部長がこうして折れたと言う事は、この練習が承認されたと言う事と同じです。

(た・・・珠樹ぃ~~、そうだねじゃないでしょ~~~!!!)
もう少し反抗してよと言いたい亜理紗、
そんな事はお構いなしに、野口さんは話を続けました。

「今渡したのは明日の分だから、明日はこれ着けて学校来てね。
それで放課後、皆が来る前にさっきみたいにちゃんとしたか確認するから。
っで、また次の日の分を渡すの繰り返しね」

「えっと、良乃ちゃん、放課後までにその・・・、溢れそうになっちゃったら・・・・」
佐藤さんが不安そうな顔を向けて言います。

「それは溢れる前にトイレで取っちゃって、皆にバレちゃったら元も子も無いんだから、
あ・・・でも、放課後の確認はするから、放課後まで使ったオムツは保管しておいてね」

「あ・・・うん」
佐藤さんは、納得したようなしてないような、曖昧な返事を返しました。
そんなリスキーな練習、わざわざしなくても・・・。
きっと亜理紗が考えているような事を佐藤さんも考えているのでしょう。

「それじゃ、今日の朝のおもらし練習は終わり、また放課後ね」
野口さんの一言で、この場は解散となり、それぞれの教室に戻りました。



こうして翌日から、放課後までに学校でおもらしする練習が始まりました。

時には授業中、時には移動中、友達との会話中等、
4人はあらゆる状況で、恥じらいの気持ちを忘れずの精神の元、紙オムツの中におしっこをしました。

(うわ!もう6時間目!!急いでおもらししないと!!!)
プシャアアアアア~~~~~・・・・
時間ギリギリで慌てておもらしをしたり・・・。

(起立!のタイミングでおもらししてみよう・・・)

「起立!」

「・・・んっ!!」
シィイイイイイイ~~~~・・・・
自分で目標を設定しておもらししてみたり。

毎日繰り返す中で、4人は、大人数の中でもおもらしをコントロール出来るようになって行きました。

「亜理紗ー、次、移動教室だから早く・・・」

「・・・・・」
ショロロロロロロロ~~~~~・・・・

or035.jpg
「亜理紗、今・・・してるの?」
珠樹が周りに聞こえない位の小さな声で尋ねました。

「・・・う・・・・うん」
椅子に座った状態で、亜理紗は紙オムツの中におしっこを出し切りました。
直後、体が小さく身震いします。

「・・・珠樹は?」

「さっきの授業中にしたよ、紙オムツずっしりだよ、なんかこの感覚にも慣れてきちゃったけど・・・」

「そうだね・・・、私も今のでずっしり・・・・」

2人は足をがに股気味して、廊下を歩いて行きました。

そして、月日は流れて・・・。



いよいよ本番前日・・・。

衣装・照明・音響・大道具・小道具、全ての準備が整いました。
明日の為に、舞台の練習も、おもらしの練習もバッチリこなして来ました。
舞台が行われる、コンサート用の特別ホールに集まった3年部員は、
本番さながらの、最後のリハーサルを行いました。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・。

「OK~!!」
終了と同時に、観客席の中央で見ていた川名さんは、両手で大きな丸を作りながら、声高らかに宣言しました。
それに合わせて、裏方部員たちは、即座に亜理紗と珠樹がおもらしした水溜りを片付け始めます。

「うん、良いよ、泣かなくなったし、恥じらいも完璧!!本番もこの調子でね!!」
そう言って、野口さんは亜理紗に向けてウインクをしました。

「うん」
びしょびしょパンツの冷たさを感じながら、亜理紗は頷きました。



「いよいよだね亜理紗」

「うん・・・・」
ホールの女子トイレ内で、お着替えをしながら、
2人はこれまでの事を考えて、暫くの間、感慨に耽りました。

「明日は最高の舞台にしようね!!
亜理紗ちゃ・・・、亜理紗と私のこれからの為に」

「勿論、今日までの努力は決して無駄にはしないわ。
明日は舞台もおもらしも、最高のものにして、
珠樹の言うように、あの日の私を上書きするの!!
だから明日も一緒におもらし・・・、頼んだわよ」

「当たり前じゃん!!」

or036.jpg
パンッ!!!

新しいパンツを穿き終えた2人は、
お互いの意思を確かめ合うようにハイタッチしました。
背丈は随分違いますが、意思の向かう先は全く同じの2人。

おもらしパンツを入れたビニール袋を手に、
2人は、明日へ向けて、トイレの外へと第一歩を踏み出しました。



こんばんは。

お待たせ致しました。
overwrite~第5話~をお送りしました。
本編が長いのでここは短く二つだけ。

周りにバレるおもらしも勿論良いですが、周りに分からないように人知れず・・・、
と言うシチュもなかなか良いなと、今回思ってしまいました。
神前生徒会長でなんかやれないかな~・・・。

川名さんは今回、おもらしさせる予定はなかったのですが、
個人的に気に入ってしまった為、して貰う事にしました(笑)
サバサバ系女子のおもらしって、大人しい系とは違った破壊力がある気がする。

overwriteも、いよいよ次回で最終回(の予定)です。
クライマックス、盛り上がるように頑張りたいと思います。
何とか来月末には上げれるようにしたいです。

前回の日記に拍手を頂きました。
ありがとうございます。
  1. 2017/09/03(日) 15:12:34|
  2. overwrite
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  4. | コメント:4

overwrite~第4話~

こんばんは。

少し間が空いてしまいました、申し訳ありません。
予告通り、お待たせしまくりの第4話をお送りします。
話の都合上とは言え、今回は、当ブログ始まって以来最大規模での・・・、
兎に角読んで頂ければと思います。

今回、いきなり人数が増えるので(読者に優しくない物語です(^^;)
軽く人物紹介を載せておきます。

3年女子部員
朝野亜理紗(ありさ)【ヒロイン役】
渡辺珠樹(たまき)【ライバル役】
野口良乃(よしの)【ヒロインの友人役】
佐藤栞音(しの)
川名美和(みわ)
増岡透(とおる)
九里靖香(やすか)
池上歌子(うたこ)
海老原渓南(けいな)
外川典(つかさ)

3年男子部員
星野勇飛(はやと)【主人公役】
矢野佑助(ゆうすけ)【主人公の友人役】
鈴木健志(けんじ)
豆田慶則(よしのり)
江草宏多郎(こうたろう)

佐藤さんと、川名さんだけでも覚えてくれれば良いかなと思います。
残りの女子と男子は別に(酷)

前回の日記に拍手を頂きました。
ありがとうございます。

それでは、本編をどうぞ。



前回までのあらすじ

最終打ち合わせ当日。
亜理紗にヒロイン役を承諾させる為、
珠樹は、自分がおもらしをして見せる事で、
亜理紗と同じ立場に立って説得しようと思い立ちました。
そこで珠樹は、朝からおもらしに向けて着々と準備を進めます。
途中で珠樹の企みに気づいた亜理紗は、「馬鹿な事は止めて」と再三止めました。
しかし、珠樹の意志は固く結局5時間目に限界が来て・・・。
亜理紗の機転により、教室でのおもらしを免れた珠樹は、
トイレの個室で、今まで亜理紗に対して押し殺していた想いを告白しました。
それを聞いた亜理紗は、ヒロイン役を受け入れる事にしました。
しかし亜理紗は、その時一つ条件を出したのです。
それは、珠樹と一緒におもらしする事でした。
それを受けて一部配役等を変更し、いよいよ『卒演』に向けて動き出そうとしていました。



12月に入ったある日の放課後。
黄水大附属高等学校旧校舎の一室に、演劇部3年の女子部員全員が集まって、ある事をしていました。

「う・・・、ううぅ・・、私・・・、そろそろやばい・・・」
小道具の外川典(つかさ)は小柄な体を小刻みに震わせました。
古いジーンズの上から両手で女の子の大事な所を押えています。

「な・・なに、も・・・もう限界なの典?」
外川さんの横に立つ音響の海老原渓南(けいな)も、脚をそわそわさせています。

「え・・えびちゃんだって・・・、人の事言えない気がするけど」

「な!?そんな事・・・」

「まぁ、海老原か外川のどちらかが、最初の脱落者かな?」
2人を正面から見つめるのは、着古した冬服を着た、副部長で制作の川名美和です。
言葉とは裏腹に、彼女もかなり強くポケット越しに股間を握りしめています。

「言い出しっぺなんだし、潔く第1号になりなよ典」

「う・・、それだけはやだぁ~・・・」
海老原さんの意地悪な言葉に、外川さんは股間を押える手の力を強めました。

「最終的には全員するんだから、別に良くない?早く楽になれるし」
珠樹がスカートの裾を握り、脚をクネクネ動かしながら言います。

「じゃ・・・じゃあ、部長お先にどうぞ・・・」
「そうそう、ここは部の代表として・・・」

「え・・・、それは・・その・・・」
外川さんと海老原さんの言葉に、珠樹は戸惑いました。

「第1号はその・・、この前やった私なんで・・・」
そう言ったのは衣装で、珠樹の代役の佐藤栞音(しの)。

この他に、音響の池上歌子(うたこ)、照明の九里靖香(やすか)、衣装の増岡透(とおる)
それから、看板女優(役者)の2人、野口良乃(よしの)と亜理紗を含めた総勢10人が、
普段着に着替えて、教室の真ん中に円を描くように立ち並んでいました。

10人とも程度は違えど、落ち着きなく体をそわそわさせています。
時々辛そうな声を上げる彼女達は一体何をしているのでしょうか?

「さっきも言ったけど、部長と朝野、それから代役の野口と佐藤は、
我慢の限界に関わらず指定時間には、・・・してもらうから、んっ・・・そ・・、そのつもりで」
副部長の川名さんが激しく足踏みしながら言いました。

言わなくてもお分かりでしょう。
彼女達は『おもらし』をしようとしているのです。

「わかってるわ、・・・っで副部長、私がもらす時間は?」

「の・・あっ・・、野口は後15分・・・後・・・んぁだ・・・あっ!!」
ぎゅ~~~~っ・・・。

「OK、・・・って、副部長大丈夫?もう限界?もらす??」

「なっ・・・!?ま・・あんっ・・、まだ・・へ・・平気よ!!」
必死に否定しますが、川名さんはもうかなり余裕が無さそうです。

「私は20分後か・・・、ちゃんと出来れば良いけど・・・、亜理紗はその後だね、行けそう?」
珠樹は横に立つ亜理紗に声を掛けました。

「わからない」
そう答えると亜理紗は、若干尿意を感じる下半身を気にしながら、
今にもおしっこをもらしそうにしている川名さんや海老原さん、外川さんを見つめました。

(頑張らなきゃ・・、今日こそ・・・頑張って、お・・・、おも・・しなくちゃ)

そもそも、彼女たちは何でこんな事をしているのでしょうか・・・。
話は数日前に遡ります。



ヒロイン役が正式に亜理紗に決まった次の日、早速、台本の読み合わせが行われました。
実際に動くなどはせず、ただ台本を読み進めて行くだけの練習です。

「お先に失礼します」
「朝野先輩!!野口先輩!!頑張って下さい!!」

練習の前に、1、2年の部員を帰宅させます。
観客の度肝を抜く演出こそが最大の魅力なだけに、情報流出は絶対にあってはなりません。
その為『卒演』で何をやるのかは、当日まで3年部員だけの秘密なのです。
よって、必然的に必要な準備は全て3年部員だけで行う事になります。
3年間の部活動の中で、実は最も忙しいのもこの『卒演』の伝統だったりするのです。

後輩が皆帰ったのを確認すると、野口さんが一つ、ある提案をしました。

「部長、私、最後のおもらしだけは、今日から実際にやってった方が良いと思うんです」

or017.jpg
(えっ・・・ええええ~~~~っ!!!!)
いくらヒロインを引き受けたとは言え、今日いきなりおもらしするだなんて。
心の準備が出来ていない亜理紗は物凄く動揺しました。

「どうして?」

「私、台本貰ってから何度か実際にもらしてみたけど、トイレ以外の場所で服着た状態だと、
出そうと思ってもなかなか出せないってわかったから」
珠樹の問いに野口さんはさらっと答えました。

「え・・、限界ギリギリなら出ちゃうんじゃないの?」
万が一の時、珠樹の代役を務める佐藤さんが問いかけます。

「そりゃ、本当の限界ならね・・・。
でもその状態だと演技は無理だし、全然関係ない所でもらしちゃうかも知れないでしょ。
だから、ある程度の尿意で意図したタイミングでおもらしする必要があるの。
それには、それなりの訓練が必要になって来るのよ」
野口さんの熱弁に、佐藤さんだけでなく、3年の部員全員が「なるほど~」と納得しました。

「ちょ・・・ちょっと待ってよ!!」
皆が野口さんの提案に従いかけてた所で、亜理紗が待ったを掛けました。

「野口さんの話は納得出来るけど・・・、いきなり今日って言うのは・・・その、
も・・、した後、下着とかどうするの?それにその・・・、男子が見てる中で?」

「下着なら大丈夫、もともとそのつもりで捨てる予定のパンツ人数分持って来たから、
私のサイズだと朝野さんはちょっときついかな?まぁ何とかなるでしょ・・・」

「いや、でも・・・男ー」

「本番じゃ同い年の人だけじゃなくて、色んな年齢の人が見る中でするんだよ。
部員の男子の前位で恥ずかしがっててどうするの?やる気あるの朝野さんっ?!」
野口さんは真剣な表情で亜理紗に迫りました。

「・・・わ・・分かったわよっ!!」

(あんたこの前、流石に恥ずかしいとか言ってたくせに!!)
何て事は思いつつも(笑)
言い返す事が出来なくなった亜理紗は、嫌々ながら承諾しました。

「後は部長の判断に任せるけど、どうしますか?」
右手を腰に当てた川名さんが珠樹に尋ねました。

「それじゃあ、おもらしを含めてやってみようか」

(た・・珠樹ぃ~~~っ!!!)
珠樹が止めてくれる事にちょっと期待していた亜理紗は、心の中で叫びました。

「でも、いきなりで亜理紗が恥ずかしがるのも分かるから。
私も、正直かなり恥ずかしいし・・。今日の所は、男子は後ろ向いててくれる?」
珠樹の言葉に5人の男子部員は頷きました。

「良しそれじゃあ・・・、部長に朝野さん、それから佐藤さんはちょっと来て」
方針が決まると、野口さんは3人を隣の部屋に誘導しました。

「それじゃあこれに履き替えて」
隣の教室に入ると、野口さんは3人にさっき言っていた捨てる予定のパンツを渡しました。

「今日使ったら捨てちゃうから、気にせずにもらしてねっ!」

「えぇ!!良乃ちゃん、私もおもらししないと・・・やっぱ駄目!?」
パンツを受け取りつつ、確認する佐藤さん。

「代役なんだから、万が一に備えて訓練するのは当然だよ」

「・・・だよねぇ」
佐藤さんは渋々そう答えました。

(佐藤さんごめん・・・、本当にごめん・・・)
亜理紗は佐藤さんに申し訳なく思っていました。
ライバル役はおもらしの予定が無かったのに、亜理紗の提案でおもらしが追加されしまい、
珠樹はともかく、代役の佐藤さんは完全にとばっちりの様な形になってしまったからです。
それにもともと佐藤さんがライバル役だった事も有り、余計に罪悪感を感じていました。

(面白くないって思ってるよね・・・)
複雑な表情の佐藤さんの事をぼーっとみていると、

「何してるの朝野さん、早く履き替えて」

「あ・・・うん、ごめん」
野口さんに急かされた亜理紗は慌てて、パンツを穿き替えました。

「良かった、穿けるみたいだね」

「ま・・・まぁ、何とか・・・」
長身の亜理紗には若干キツイですが、何とか穿くことが出来ました。

パンツの履き替えが終わると、次に、野口さんは1リットル入りのお茶のペットボトルを3人に配りました。

「私からの差し入れ、一気にググッと!!じゃあまず私からね」
笑顔で言う野口さんがまず先陣を切って一気にお茶を飲み干しました。

(お茶まで用意してるなんて・・・・)
野口さんの用意周到ぶりに驚きつつ、3人はお茶を一気飲みしました。
これで準備万端です。

4人が部室に戻ってから30分後、尿意を感じ始めた所で読み合わせを開始しました。



「○○○○○○○○~」
「○○○○~○○○○~」
主人公役の星野勇飛(はやと)とヒロイン役の亜理紗を中心に、序盤はスムーズに進んで行きました。
しかし中盤に差し掛かる所で若干の変化が起きました。

「○○っ・・・○○・・んっ・・」
珠樹の滑舌が悪くなって来たのです。

(あ・・、おしっこもれる・・・、まだ・・、まだ駄目・・まだ駄目・・・)

「部長、頑張ってー」
「集中集中っ!!」
裏方の部員たちが、珠樹にエールを送ります。

(集中って言っても・・・、お・・・、おしっこが・・・)
一度感じてしまった尿意を振り払う事が出来ず、どうしてもセリフに集中する事が出来ません。
そして、それは珠樹だけに止まらず残りの3人にも広がりました・・・。

後半は、野口さんは何とか喋れていましたが残りの3人は、最早台本を読むと言う状態ではありませんでした。
脚を擦り合わせて尿意に耐える事に必死です。

(あ・・・、は・・・、ぁう・・、も・・・もれる・・・)
男子が後ろを向いている事を良い事に、佐藤さんなんかは両手でスカートの前を握りしめています。

その後、何とか主人公が2人の女の子のどちらを選ぶか決断すると言う、物語後半のシーンまで進めました。

「ん・・・、くぅ・・・」
そわそわ・・・、そわそわ・・・。
佐藤さんはもう本当に限界みたいで、顔を上げる余裕すらなく、ただただ迫りくる尿意の限界に耐えていました。

(さ・・・佐藤さん大丈夫かな・・・)
亜理紗は心配そうに見つめました。
周りの裏方担当の子も一番つらそうな佐藤さんの動向を見守っていました。

「も・・、もう・・げ・・・、んか・・・」
激しい尿意の波がやってきたのか、佐藤さんはしゃがみ込み必死に前を押えました。

(いやっ!!佐藤さん!!!)

「○○○○○○○○!!」
星野くんが、決意を固めたシーンを読み終えた時・・・。

or018.jpg
しゃあああああああああああああああぁぁぁぁ~~~~~~~
ぴちちちちちちちちちちちちちちちち・・・・・・・・・・・

しゃがみ込んだ佐藤さんの足元に、湯気を立てながら水溜りが一気に広がって行きました。

「ひぃぃっ!!!!」
佐藤さんのおもらしを目の当たりにした亜理紗は、
その瞬間、中学時代の失敗をフラッシュバックしてしまい、反射的に目を背けました。
心臓の鼓動も激しくなって来ました。

「うわうわ・・・、やだぁ・・、超恥ずかしい・・・」
佐藤さんは、股間を押えていた両手で口元を押えて恥ずかしそうに俯きました。

「役者はそのまま進めて!!佐藤、良いからさっさとどく!!増岡、九里は床拭いて!!」
すぐさま川名さんが指示を出します。
佐藤さんは恥ずかしがりながらも立ち上がって自ら作り上げた水溜りの上から移動しました。
すると直ぐに、衣装の増岡さん、照明の九里さんが水溜りを拭き始めました。

「うう~ごめんね、透ちゃん、靖香ちゃん・・・」
川名さんから手渡されたタオルで体を拭きつつ佐藤さんが、
床のおしっこを拭いている2人に謝りました。

「き・・気にしないで」
「これが私たちの仕事なん・・だから・・」
2人は佐藤さんの方を向いて言いました。

(佐藤さん・・・もらしたのか・・・)
(・・・ごくっ)
(音だけでもかなり・・・)
(後3人も・・・)
(見てぇ・・・)
女子たちが後始末に追われる一方で、
ほのかにおしっこの臭いが漂う中、音だけとは言え、男子たちが冷静でいられる訳がありません。
部活動の練習と分かっていても、5人とも程度の差はあれ下半身の一部を固くしてしまいました。

「男子、振り向くなよ・・・、振り向いたらシバく」
そんな男子の様子を察知したのか、川名さんが釘を刺しました。

その言葉で気持ちを引き締めた星野くんは、落ち着いて台本を読み進め
いよいよヒロインに告白をするシーンに来ました。

「亜理紗、いよいよだよ」

「・・・え、あ・・うん・・・」
珠樹の囁きに亜理紗は上の空で答えました。
佐藤さんのおもらしと後始末の様子を見て、一気に気が動転してしまったのです。

(お・・も・・・、私も今からするんだ・・・。
み・・・皆が見てる中で、あんな恥ずかしい事を・・・。佐藤さんみたいに、また・・・)

「あ・・・、は・・・、は・・・、はっ、はっ、はっ、はっ・・」

「・・・亜理紗?」

(中学・・・の・・時・・みたいに、また・・・、また・・・、や・・・や・・)

「あ、あ・・、はっ・・はっ、はっ、はっ・・」

(苦し・・・、い・・息が・・・)
星野くんが告白のセリフを言った丁度その時。
おもらしするはずの亜理紗は過呼吸に陥り、真っ青な顔をして膝をついてしまいました。

「ちょっ!!亜理紗!!大丈夫!!!」
珠樹が慌てて、亜理紗の背中を摩ります。
・・・がその直後。

「うわ・・・、まずぃ・・・出・・・」

or019.jpg
じょおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおお~~~・・・・

一瞬気が緩んだ珠樹は、亜理紗の横でしゃがんだままおしっこをもらしてしまいました。
珠樹のおしっこは亜理紗の足元にも広がって行きます。

「いやあああああああああぁ~っ!!!!!」
亜理紗は更に動揺して、まるで襲われたかのような悲鳴を上げました。
そして、今度は胸の下辺りから何かこみ上げてくるような感じがして・・・。

「・・・うぇっ」
亜理紗は立ち上がると、口を押えて慌ててトイレに駆け込みました。

・・・・・。

「うぇぇぇぇ~~~」
便器の前に膝を付き、こみ上げて来た物を吐き出した亜理紗は、そのままの格好で呼吸を整えました。

(他人のお・・・、すらまともに見れないどころか・・・、こんな・・・)

「う・・・、ぐすっ・・・」
情けなくて自然と涙が溢れて来ました。

「朝野ー、大丈夫かー?」
暫くすると川名さんがトイレに入って来ました。

「う・・うん、何とか」
亜理紗は慌てて涙を拭います。

「部長が今日はここまでだって、まだ我慢してるならしちゃっていいぞ」

「そう・・・、分かった、ありがとう」

「でもさ、恥ずかしいのはわかるけど・・・、そこまでなるか普通?何かあるの?」

「・・・・・」
亜理紗は口をつぐみました。

「言いたくないなら良いけどさ、お前そんなんでヒロインちゃんとやれるの?」

「・・・ごめん」

「・・・悪い、その言い方は無いよな、初日だってのに」
川名さんは後ろ髪を右手で掻きながら言いました。

「それに、駄目だったのは朝野だけじゃないよ。
部長も佐藤も、もらしはしたけど、あれじゃただもらしただけだしな。
裏方だって、全員おしっこの後始末に嫌悪感を抱いてたし・・・、申し訳ないけど私もだよ。
クソッ、口では斬新だの何だの言ってても、
実際に水溜りを目の当たりにすればこんなもんかよ、ったく!!自分自身に腹が立つ!!」
川名さんは壁に寄りかかって両手を組むと、歯を食いしばって悔しそうな顔をしました。

「川名さん、野口さんは?」

「野口?そろそろ来るんじゃないか・・・」
疑問に思った亜理紗が尋ねた直後、扉を開けて野口さん本人がトイレの中に入って来ました。

「う~~ん、やっぱり出そうと思っても上手く出ないな~・・・。
佐藤さんは膀胱が小さいのかな?もう少し我慢が聞くようにして貰わないと・・・
朝野さんも困ったものね~~、う~~ん、どうしよう・・・。う~~~~ん・・・う~~~~ん・・・」
そして、亜理紗と川名さんに気づく事も無く、独り言を呟きながら個室に入って行きました。

「見ての通り、アイツももらせなかった」
川名さんが説明を終えた直後。

or020.jpg
しょおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおぉぉ~~~~・・・・・
じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ・・・・・

野口さんの入った個室から、とても大きなおしっこの音が響き渡りました。

「ほら・・・、便・・を前に・・ばこん・・・単に・・・、何が違・・・なぁ~~、ど・・・の勢い・・舞台上で・・・・」
おしっこの音に混じって、なんかぶつぶつ呟いている声も聞こえて来ました。

「野口・・・、音消し位しろよな・・・ったく」



初めての読み合わせから一夜明けると、直ぐに反省会が行われました。

「私達4人は、読み合わせと並行しておもらしの特訓が必要だと思うの、
昨日の失敗から、野口さんが個々に特訓メニューを組むみたいだから、それに従って・・」
珠樹が今後の方針を伝えていると、

「部長・・、私、思ったんですけど・・・」
外川さんが話を遮って言いました。

「おもらしって、物凄く恥ずかしいでしょ・・・。
あ・・当たり前だけど、でも私、実際見るまで甘く見てたって言うか・・。
恥ずかしいて言っても、単におしっこするだけじゃんって・・・。
部活でやる事だから、割り切れるだろうなって・・・。
でも、昨日栞音ちゃんがした時、練習でわざとだって分かってても、
栞音ちゃん、めちゃくちゃ恥ずかしがってたし、私も見ててその・・・」

「何が言いたいの外川?もっと簡潔に話せ」

「だからえっと、『卒演』までの間、部長達だけに
恥ずかしい思いをさせるのは申し訳ないなって・・・・」

「どうしたいのよ?それを早く言ー」

「川名さん」
珠樹は急かす川名さんを諫めました。

「・・・すみません」

「良いよ外川さん、ゆっくりで・・・」
珠樹は外川さんに先を促しました。

「私、一度、部員全員でおもらしを経験した方が良いと思うの。
そうすれば、役者も裏方も一体感が強まるかなって」
外川さんの発言に、部室に残った3年部員全員が驚きました。

「ちょ・・・、それって、俺達男子も?」
主人公の友人役の矢野佑助君が動揺しながら言いました。

「全員だってば、じゃないと意味無いし、もちろん部屋は男女で分けるよ」

「えーーっ」
「マジかよー」
男子の何人かは不満そうな顔をしました。
それを見た外川さんはムッとしました。

「何よその顔!新しいだのなんだの言っておいて、人に押し付けるだけ!?
舞台は皆で作り上げて行くものじゃないの!!」

「別に押し付けてねーよっ!!俺はただ・・」

「喧嘩は止めて!!」
珠樹の一言で言い争いが収まると、次の言葉を発したのは亜理紗でした。

「えっと・・、別にそんな事しなくて良いよ。
演技でやる事なんだから・・・、役者である以上それは私達の仕事なんだし。
申し訳ないとか思う必要ないよ、そんな事言ってたら切りがないし。
裏方は裏方の仕事が有るんだから、そっちをしっかりやって貰った方が」

「そうそう、俺が言いたかったのはそんな感じ、亜理紗ちゃんグッジョブ!!」
矢野君は亜理紗に向かってナイスと言った仕草を見せました。

「うん、私もそう思うな。
裏方さんはおもらしよりも他にやる事があるでしょ」
野口さんも亜理紗の援護射撃をしました。

(良い感じ、ありがとう野口さん・・・)
亜理紗は、このまま外川さんの提案が却下される事を願いました。
さっき意見として言った事も勿論理由の一つですが、それはあくまで建前の理由です。
本音は、もしそんな事になったら、9人もの他人のおもらしを直視する事になり、
とてもじゃないけど耐えられないと思ったからです。

「亜理紗ちゃんと良乃ちゃんが揃ってそう言うなら・・・、良いけど」

(・・・良し)
考え直した外川さんの様子を見て亜理紗はホッとしました。
しかし、そこに思わぬ伏兵が現れました。

「私は外川の意見に賛成。やるべきだと思うぞ、少なくとも一人1回は」
副部長で、裏方の責任者を務める川名さんです。

「昨日の練習、裏方のおもらし後の対応は最悪だったからな。
おしっこに触れるのは嫌だと皆顔にかいてあった、・・・まぁ私もだけどな。
役者じゃないし、おもらしは自分には関係ないって何処かで思ってたんじゃないか?
その辺どう思う、裏方の人?反論できる奴いる??」

「「・・・・・・」」
その言葉に裏方の誰も反論出来ませんでした。

「今の状態じゃ、何処かで必ずひずみが生まれる。
そうなったら裏方の仕事にも影響し兼ねないと思うんだけど」

(ちょ・・・!!川名さん!!!)
亜理紗は慌てました。

「そ・・そんな事無いと思うよ。
それぞれがそれぞれの事をやった方が、スムーズだし。
やんなくて良いよ!!やんなくて」

「なんでそんなに必死なんだ朝野?」

「そそっ、そんな事にゃいし!!
それに、お・・おも・・、・・て、思ってる以上に相当恥ずかしいんだからねっ!!
冷たくて気持ち悪いわ惨めになるわ死にたくなるわ・・・、そんな事皆でわざわざやる事ないよ!!」

「お前は昨日やれてないだろ?やけに知ったような口聞くな??」

(しまっ!!!)
熱くなってつい余計な事を言ってしまいました。
これ以上突っ込まれたら、黒歴史を暴かれる事に成りかねません。

「まぁいい・・・、どのみち決めるのは部長だ」
川名さんは突っ込んで来る事は無く、最終判断を部長の珠樹に委ねました。

(珠樹、私無理だよ、また立ってられなくなっちゃう・・・)

これまでのやり取りをじっと黙って見つめていた珠樹は、一呼吸置いてから言いました。

「やりましょう」

(た・・・珠樹ぃ~~~~っ!!!!)
その一言に亜理紗は顔を真っ青にして項垂れました。
亜理紗以外にも不満そうな顔をした部員が何名かいましたが、
部長の決定なら仕方がないと、皆納得しました。

「外川さん、川名さんの言う事に私も賛成だし、
それに、私や亜理紗、代役の2人にとっても、良いおもらしの練習の場になると思うしね」

「れ・・・練習なんて、他で幾らでも出来るでしょ!!」

「朝野、部長が決めた事だぞ。黙って従え」

「・・・・」
川名さんの言葉に、亜理紗は唇を噛みしめました。



その日の帰り。

「珠樹の鬼!!どうして外川さんの提案OKしたのよ!!私また気が変になっちゃう・・・」
どうしても不満な亜理紗は、横を歩く珠樹に文句を言いました。

「どうしてって・・・、部室で話した通りだけど」
ケロッとした顔をして珠樹は答えます。

「一昨日の読み合わせの時の私を見たでしょ?それなのに・・・」

「それは亜理紗にまだ覚悟が足りてないだけだよ。
言っちゃ悪いけど、ヒロイン役やるって言ってくれた時の方が、全然マシだった」

「な・・なにそれ?何を根拠に!?」

「あの時は、小声だったけど「おもらし」ってちゃんと言えてたよね?
あれから幾らも経ってないのに、亜理紗、また言えなくなってるよ」

「・・・そ・・・そんな事」
珠樹に指摘された亜理紗は、とっさに顔を背けました。

「じゃあ言ってみて」

「い・・嫌よ、何で意味も無くそんな事言わなくちゃー」

「おもらし」

「!?」
珠樹のいきなりの声に、亜理紗は思わず歩みを止めて固まりました。

「はい次、亜理紗の番」

「・・・・・」
珠樹に振られた亜理紗は、嫌々ながらもその言葉を口にしようとしました。

「お・・・、お・・・、お・・・も・・・」

「お・も・ら・しっ!頑張れ亜理紗!!」

「お・・も・・・、う・・・」

「亜理紗?」

「う・・・うぅ・・・」
気付けば亜理紗は目に涙を溜めていました。

「ちょ・・ちょっと!!亜理紗!?」

「ごめん、言おうとすると、あの日の事が頭を過って・・・、苦しくなって・・・」
苦しそうな顔をする亜理紗に、珠樹は「もう良いよ」と言って肩に手を乗せました。

「亜理紗はまず、おもらしに目を向けられるようになる所からだね」
そう言うと珠樹は鞄から少し大きめの巾着袋を取り出して、亜理紗に渡しました。

「なにコレ?・・・って、いやぁ!!!!」
袋の中身を目にした亜理紗は、顔を真っ赤にして驚きました。
そこに入っていたのは、数枚のおもらし系DVDだったのです。

「実はさっき、野口さんから亜理紗に渡しておいてって言われててね。
野口さんが言うには、おもらしから目を背けない事、それが出来るようになるまで繰り返し見るようにだって」

「い・・嫌よそんなの!!第一こんなの見てる所、親にバレたら・・・」

「バレないように見れば良いじゃん、どうとでもなるでしょそんな事」

「な・・・ならない、ならないってばっ!!」

「頑張るって決めたんでしょ!!亜理紗ちゃんっ!!」

「わ・・・わかったわよ!!み・・見るわよ。見れば良いんでしょ、見れば!!」
涙ぐむ珠樹に根負けした亜理紗は、嫌々ながら承諾しました。

「そうだよ、見れば良いんだよ亜理紗っ!!」

それから皆でおもらしする予定の日までの数日間、
亜理紗は自室にいる時間の殆どを、渡されたDVDを見て過ごしました。
やはり最初は目を背けたり、見ている内に気分が悪くなったりしましたが、
繰り返し見て行く内に、平常心でいられる時間が徐々に長くなって行きました。



12月に入って、いよいよ皆でおもらしする日になりました。
放課後、通常の活動を終えた3年の演劇部員達は、
おもらしで汚しても良い服装を各自で準備して旧校舎に集まりました。

「それじゃあ、男子は1階の教室、女子は3階の教室でそれぞれ行います」
珠樹の指示の元、まずは1階の一室に男子5人が入りました。

「分かってると思うが、絶対上に上がって来るなよ」
川名さんが男子に釘を指すと、女子10人は3階の一室へと向かいました。

部屋につくと、まずは各自制服を脱いで持参した服に着替えました。
その後1リットル入りのペットボトルのお茶を全員一気飲みして、時が来るのを待ちました。
お茶を飲んでから1時間半が過ぎた頃、
円を描くように立ち並んだ彼女達に、一人、また一人と尿意が襲って来たのです。



(大分したくなって来た・・・)
亜理紗のおもらし予定時刻まで、残り20分。
スポーツウェアに身を包んだ亜理紗は、時々股間に手を添えて尿意を抑えます。

その一方で、いよいよ限界が近い海老原さん、外川さん、川名さんの3人は、
最早話す余裕すらなく、ひたすらに激しさを増す尿意に耐えていました。
最初の一人にはなりたくない・・・。
3人はその思いを胸に必死になって尿意と戦いました。

亜理紗のおもらし予定時刻まで、残り15分。

「も・・もう、無理、もれ・・・るぅ~~・・・」
3人の熾烈な我慢合戦に、遂に終止符が打たれました。

シュウウウウウウウウウウウウウウウ~~~~~
パシャパシャパシャパシャパシャ~~~~・・・
一人の女の子の足元に、黄金色の液体があっという間に広がって行きました。

「あ・・・、ああっ・・・んっ!」
本日、10人中1番乗りでおもらしして、
これまで感じた事のない感触に、慌てふためき、
恥ずかしさと開放感に満ち溢れた不思議な表情を浮かべている少女の名は・・・。

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副部長の川名美和。

「あ・・、あんっ・・、いやぁ、見ないでぇ・・・」
一番最初におもらししてしまったのがショックなのか、
川名さんはスカートの前をびしょびしょにしながら、今にも泣きそうでした。

「あ・・あはは、足冷たぁ・・・、こりゃ、かなりきついわね・・・」
濡れたスカートを握りしめ、恥ずかしそうに水溜りの上に佇むその様子は、
いつものサバサバしたイメージからかけ離れていてとても色っぽく感じました。

(川名さん、か・・可愛い・・・)
亜理紗は川名さんのおもらしの一部始終を、目を背ける事無く見続ける事が出来ました。

「・・はぁ~」

「・・・ほっ」
おもらし一番乗りを免れた海老原さん、外川さんは安堵の息を吐きました。

「美和ちゃん、いつもそれ位しおらしくしてれば、男子がほっとかないのに」

「さ・・・佐藤、それどー言う意味よ!!」
佐藤さんの言葉に反応して足を動かすと、足元の水溜りが小さく波打ちます。

「副部長、気持ち悪いだろうけど、そのまま待機でお願いね。
後片付けは10人全員のおもらしが終わった後に一斉にやるから」

「分かってるよ」
野口さんの言葉に川名さんはつまらなそうに答えました。



亜理紗のおもらし予定時刻まで、残り10分。

「野口、時間だ」
現在ただ一人、おしっこの上に立っている川名さんが指示を出します。

「はい」
今日に備えて、さらなる特訓を重ねた野口さんは、
まだ余裕のある膀胱の、おしっこを止める力を徐々に緩めて行きました。

「・・・んぅ」

しょぱ・・・ぱぱぱぱぱぱ・・・・
ぽとぽとぽとぽとぽと・・・・・

チビチビとではありますが、野口さんの足の間から薄黄色の液体が床に落ちて行きました。

or022.jpg
ジョオオオオオオオオオオオオ~~~~~・・・・
ビチャビチャビチャビチャビチャ・・・・・

「「!?」」
皆が野口さんのおもらしに注目している時、突然別の所からも、
女の子のおもらしの音が聞こえて来ました。

「ううぅ~~~、出ちゃったぁ~~~」
音の発生元は海老原さんでした。
脚を大きく広げて、幼稚園児のような格好でおもらししてしまいました。

「うわ・・ちょっ!!何この量!!マジやだぁ、見ないで!!見ないで!!!」
海老原さんの水溜りは、川名さんと野口さんのを合わせてもお釣りが来る位でした。
水溜りと言うか、最早、海です。

「そうっ、それよ!!勢いとしてはそれ位のおもらしが理想ね」
おもらしを続けながら、野口さんが海老原さんを見て言いました。

「やめてよ良乃っ!!ああんもう、超最悪~っ!!!」

それから、珠樹がおもらしをする予定の5分間で、
増岡さん、九里さんの2人が足元に水溜りを作ってしまいました。
残りは半分です。

or023.jpg
「う・・うわぁああん、うわぁ~~~~ん・・・」
九里さんは余りの恥ずかしさに耐えきれず、水溜りの上に座り込んで子供のように大泣きしてしまいました。

「泣くなよ、皆でしてる事だろ?恥ずかしいのはわかるけど・・・」

「九里さん、その格好じゃどんどん濡れちゃうからさ、取りあえず立とう・・ね。もう少しで終わるから」
珠樹と川名さんの慰めで、何とか泣き止んだ九里さんはゆっくりと立ち上がりました。

バチャン・・・ッ!!
その拍子に、服に溜まったおしっこが一気に水溜りの中に落ちて、周りに飛び散りました。

「ご・・ごめんなさい・・・・」
九里さんは、隣にいた増岡さんと池上さんに、飛び散ったおしっこが掛かってしまった事を謝りました。
既にもらしている増岡さんは、「気にしないで」と返しましたが、
池上さんは、我慢に必死でそれどころではない様子です。



「時間だね、それじゃあ今からするから、亜理紗、ちゃんと見ててね」
珠樹は亜理紗の方を向いてウィンクをして見せました。

「わかってる、だ・・・大丈夫よ、早くやっちゃってくれる」
ここまで5人のおもらしを見た亜理紗は、若干精神的疲労が出てきていました。
でも、ここでへこたれる訳にはいかないと、必死に気持ちを奮い立たせます。

or024.jpg
プシュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥ~~~~~~
ピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャ・・・・

宣言から2分が過ぎて、ようやく珠樹の股間からおしっこが吹き出しました。
スカートとニーソックスを綺麗に染めあげたおしっこは、珠樹の足元に静かに広がって行きました。

「はぁ~~、やっと出た、ごめん上手く行かなくて・・・」
おもらしを終えた珠樹は、下を向いて前髪を弄りながら言いました。

「亜理紗、ちゃんと見てくれた?」

「・・・み・・・見たよ、珠樹の恥ずかしい姿」
この前のトイレの時は、ドアの壁に阻まれて足元しか見えませんでした。
でも今回は、手で押さえたスカートの前がおしっこで染みになっていく様子、
おしっこが足を流れて行く様子、足元に水溜りが広がる様子、
そして、水溜りが広がるのを恥ずかしそうに見つめる表情まで、
珠樹のおもらしの全てをしっかりと見る事が出来ました。

「今度は私が見る番だね」
珠樹と亜理紗が話していると。

しゃあああああああああああああ~~~・・・・
しょろろろろろろろろろろろろろ~~~・・・・
2人分のおもらしの音がほぼ同時に響き渡りました。
音の主は、佐藤さんと池上さんでした。

「ご・・・ごめんなさい私、まだ時間じゃないのに・・・」
佐藤さんは両手で口元を隠しながら謝りました。

or025.jpg
「あはは・・・、わざととは言え結構恥ずかしいね・・・」
池上さんは水溜りの上で照れ笑いを浮かべました。

残るは、亜理紗と外川さんの2人です。



「朝野、時間だ」
亜理紗がおもらしをする時間が来ると、川名さんが言います。

「・・・う、うん」

「亜理紗、頑張れ!」
おしっこまみれの珠樹がエールを送りました。

(大丈夫・・・、落ち着け、皆の失敗を見ても大丈夫だったんだ、やれる・・・やれるわ・・・!!)

「・・・んっ!!」
亜理紗はおしっこの出口の力を抜きます。

「・・・あれ?」
でも、おしっこは出てきてはくれませんでした。

「出ない!?な・・何で・・・」
限界ではありませんでしたが、おしっこは間違いなく溜まっています。
なのに、トイレでする時のように出せません。

「限界でもないのにパンツ穿いたまま出しちゃうって言うイレギュラーに
体が拒否反応を起こしてるの、トイレでも無い所だし尚更ね」
2分を過ぎてももらせずにいる亜理紗に、野口さんが丁寧に説明してくれました。

「でも、珠樹は出来たのに・・・」

「私は、家で何度か練習したから・・・。お・・お風呂とかで」

「そう・・・なんだ・・・」

「その辺のリミッターを解除するのが結構大変だけど、まぁ慣れだから。
朝野さんには慣れて貰わないと困るし、・・・佐藤さんも」

「慣れって言ったってぇ・・・」
野口さんは簡単に言いますが、それをその場で習得するのはどう考えても無理そうです。

「とにかく落ち着いて、余計な力を抜いて・・、そうすれば出せるよ」

「・・や・・やってみる」
野口さんのアドバイスに従って、亜理紗は体の力を抜きました。

すると・・・。

ジュッ

僅かですが、パンツにおしっこが広がる感触がしました。

(!?)
その瞬間、中学で失敗した時のあの感触が蘇って来ました。

ジュワァァ~~・・・

暫くすると、おしっこはパンツを突き抜けて、ズボンを染め始めました。
一部のおしっこは、足の間から直接床に落ちて行きます。

ポトポト・・・

「あ・・・あああああっ!!!」
足の間から落ちる自分のおしっこを見た瞬間、亜理紗は叫び声を上げました。

自分を中心に広がる恥ずかしい水溜り。
びしょびしょの制服姿で先生に連れられ体育館を去る様子、それを見て嘲笑う周りの生徒達。
保健室での恥ずかしいお着替え。手渡されるみっともないお土産袋。
お土産袋を見て呆れ顔の母親。翌日のバレー部員たちの冷たい態度。

亜理紗の脳裏に、これら中学時代の屈辱的な記憶が津波のように押し寄せて来たのです。

「いやぁ~~~、何で!!なんでぇ~~~!!!
う・・うわぁああああ~~~っ!!!」

おもらしを続けながら、亜理紗は泣き叫びました。

「亜理紗っ!!!」
心配した珠樹は亜理紗に抱きついて背中をさすりました。

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「大丈夫、落ち着いて・・・。私がついてるから・・・」

「珠樹・・・、あ・・・、わ・・私・・・ううっ・・」

「よしよし・・・」
その後、何とか亜理紗は落ち着きを取り戻しました。

「泣くなよ・・ったく、先が思いやられるな・・・・」
川名さんに呆れられてしまいましたが、何とか亜理紗はおもらしをする事が出来ました。



さて、残る一人は・・・・・。

「言い出しっぺが最後まで残るとか・・・・」

「なんだかねー」

「そ・・・そんな事言ったってぇ~~~・・・」
既におもらしを終えた部員からの冷やかしの声を受けながら、必死に尿意に耐えているのは、
この全員おもらしの提案者、外川さんです。

「外川さん、皆待ってるからそろそろ・・・」
珠樹が困った様子を見せます。
室内はアンモニアの臭いが漂い始め、
最初にもらした子達は体を震わせてとても辛そうにしています。

「出したいけど・・・、でも、出そうと思っても出ないんだもん・・・」
外川さんは苦悶の表情を浮かべて言いました。

「お前、最初にもう駄目とか言ってたくせに・・・、どんだけ我慢強いんだよ・・・」
川名さんがため息交じりに呟きます。

「うう~、だってだってぇ~~・・・」

「うーーん、それじゃあトイレ行こう、普通にする時みたいにすれば出やすいかも。それでも良いですか、部長?」
野口さんがそう提案し、珠樹に確認を取りました。

「良いよ、後始末もしないといけないし」
珠樹の許可を受けて、外川さんは野口さんに連れられてトイレに向かいました。

・・・・・。

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「皆、お待たせ~・・」
5分程して、外川さんはジーンズをぐっしょり濡らした姿で戻って来ました。

こうして、3年女子部員10人全員のおもらしが終わりました。



「それじゃあ、次は後始末ね。水溜りは自分のじゃなくて隣の人のを拭く事。
お着替えも自分でしたら駄目だよ、これも隣の人にやって貰うようにね」
珠樹の指示で各々が後始末に入りました。
ですが、人の水溜りを拭くようにとは言っても、
実際には床のおしっこは、時間の経過と共に広範囲に広がって混ざり合い、誰のともつかない状態になっていました。
なのでとにかく皆、目に映るおしっこを持参した雑巾で綺麗に拭いて行きました。
おもらしをしたことでおしっこに対する抵抗が薄れたのか、誰も嫌な顔をすることなく完了しました。

「良し・・・」
川名さんは手ごたえを感じているようでした。

続いてお着替え。

「亜理紗、ズボン下ろすよ・・・」

「うん・・・」
亜理紗は珠樹にお着替えをして貰いました。

下半身が露わになった時、再び中学時代の記憶が蘇って苦しくなりましたが、何とか耐えきりました。
全員が制服に着替え終えると、外川さん提案のおもらし会は無事終了しました。



「男子ー、終わったー?」
1階の男子の居る教室を覗くと、制服姿の3年男子部員5人が、しゃがみ込んでだらけていました。

「え・・・?ああ、遅いじゃねーか、待ちくたびれちゃったぜ」
矢野君が立ち上がると、ズボンのお尻を軽く叩きました。

「それじゃ帰ろう」
続いて、主人公役の星野君も立ち上がります。

「ごめんごめん、女子は人数多いし、なかなか上手く行かない子もいてね・・・。そっちはいつ終わったの?」

「え・・と・・・」

「・・・?」
珠樹の問いに、5人の男子はお互い顔を見合わせてバツが悪そうな顔をしました。

「怪しい・・・」
腰に手を当てて、そう言ったのは川名さんです。

「「!?」」

「お前等、本当にしたんだろーな?床に拭いた後もないし・・・」

「それは、ずいぶん時間が経ったから・・・、なぁ、皆?」
そう答える星野君ですが、明らかに目が泳いでいました。

「そうか・・、なら持って来た服見せろ、ちゃんともらしたなら濡れてるはずだ」
川名さんは左手を突き出して、証拠を見せろと言う仕草をしました。
すると・・・。

「・・・あっ、そうか!?やべっ!!」
星野君が思わず口を滑らしてしまいました。

「おいっ!!星野!!!」
矢野君が慌てますが、時既に遅し・・・。

「もしかして男子、やってないの!?も~~っ、何してるのよ!!」
珠樹は苛立ちました。

「す・・・すみません」
頭を下げて謝る星野君。

「・・・てか、女子スゲーな・・・、マジでやったのかよ」
「やっぱ覗きに行くべきだったな・・・、勿体ね~・・・」

「馬鹿な事言ってる場合か!!なんだよやってねーって!!ふざけるのも大概にしろっ!!」

「「・・・・」」
川名さんが怒り出すと、男子達は何も言えずに下を向きました。

「・・・しょうがない、今からやるぞ」
川名さんは、一つ大きなため息を付いた後言いました。

「え・・?今から!?」

「廊下に出て待ってやるから早く着替えろ。全員もらすまで私が見ててやる・・・」

「ええええ~~~っ!!!」
「み・・見てるって」

「そうでもしないと真面目にやらないだろ」

「軽くいじめじゃね?何で川名が見てる前で・・・」
矢野君が愚痴った直後。

「あ、私も見ててあげるよ、慣れないとおもらしは難しいしね」
野口さんが、川名さんと共に男子の見張りに名乗りを上げました。

すると・・・。

「おおお~~っ!!」
「マジすか良乃ちゃん!!」
「・・・なんか頑張れる気がする」

男子のテンションが一気に上がりました。

「亜理紗ちゃんも居てくれればもっと頑張れるかも、俺」
「うんうん・・・」
「副部長の代わりに是非・・・」

「あ・・・あはは」
調子づく男子に亜理紗は複雑な表情を浮かべました。

「お前等・・・、マジでシバく!!!」
結局、川名さん野口さんに珠樹を加えた3人で男子を見張る事になりました。
残りの女子たちは、その場で解散となりました。



「佐藤さん!!」
解散後、昇降口で亜理紗は佐藤さんに声を掛けました。
どうしても言っておきたい事があったのです。

「亜理紗ちゃん、どうしたの?」

「あのね、その・・・、私、佐藤さんに謝らないといけない事があって・・・」
濡れた服の詰まった鞄を手に亜理紗は言います。
亜理紗の方に体を向けた佐藤さんは「え?何??」っと首を傾げました。

「もともとは佐藤さんがライバル役だったのに、私の我儘で変えちゃったから。
代役に代わった上におもらしの練習までする事になっちゃったし・・・」

「・・・・」

「ごめんなさい」
亜理紗は頭を下げました。

「そんな事気にしてたの、私全然気にしてないから平気だよ」

「え・・・」
亜理紗が顔を上げると佐藤さんは顎に手を当てて続けます。

「ごめん、全然って言うのは嘘、変更になった直後は少しガッカリしたけど・・・。
でも、その方がより舞台が良いものになるって皆で決めた事だから、気持ち切り替えて頑張ろうって思ったんだ」

「でも、佐藤さん・・、おもらしは・・・」

or028c.jpg
「まぁ、おもらしする事になるとは思わなかったけど、それも私に与えられた役割だもん、頑張るよ!!」
佐藤さんは小さくガッツポーズをして見せました。

「亜理紗ちゃんは、私の事なんか気にしないで良いから、しっかりおもらし出来るように頑張ってよね」

「う・・・うん、頑張るよ、おもらし・・・」

「って、私もだけどね、我慢が足りないって良乃ちゃんに怒られちゃった」
佐藤さんは悪戯っぽく舌を出して言いました。

「それじゃあ、一緒に帰ろうか?」

「うん、良いよ」
佐藤さんに誘われて、亜理紗は途中まで一緒に帰りました。

・・・・・・。

「じゃあね亜理紗ちゃん」

「うん、バイバイ」
佐藤さんに手を振って別れた直後、亜理紗はふと思いました。

(私、『おもらし』って・・・、普通に言えてる・・・)

亜理紗の心に少しずつ変化が生まれ始めていました。

続く。
  1. 2017/04/02(日) 20:54:57|
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overwrite~第3話~

こんばんは、一ヶ月以上間が空いてしまいましたが、
『overwrite~第3話~』をお送りします。
今回は、決して得意では無い我慢描写を頑張りました。
ちょっと長いですが、読んで頂ければ嬉しいです。
今後もこの位のスパン(大体一ヶ月に一度)でやって行こうと思います。
後半分位です。・・・あくまで現段階の構想上は・・・(^^;
次回は、絵中心の短いものを、と考えています。

前回の日記に拍手を頂きました。
ありがとうございます。

それでは、本編をどうぞ。




前回までのあらすじ。

珠樹が亜理紗におもらしをさせようとしていた理由は、
舞台でおもらしをする事で、過去のおもらしの苦い記憶を上書きする為でした。
それを知った亜理紗は、そんな理由でおもらししたくないと拒否。
次の打ち合わせまでに亜理紗がOKしないと、舞台は別の演目に変更になってしまいます。
期日が迫る中、珠樹は亜理紗を説得しますが、亜理紗の気持ちは変わりません。
そして運命の打ち合わせの日。
焦る珠樹は、3日前の亜理紗との会話を思い出し、ある行動に出たのでした。



「おはよう」
教室に入って亜理紗が挨拶をすると、

「朝野さんおはよう」
「おはー」
「おはようー」
仲の良いクラスメイト達が返事を返しました。
奥の方を見ると既に珠樹も来ていました。
机に向かって、何やらペンを走らせています。

「おはよう珠樹」
珠樹に挨拶をした亜理紗でしたが、

「・・・おはよう」
珠樹は机に目を向けたまま素っ気ない返事を返しただけでした。

「・・・?」
その態度に、亜理紗はアレ?と言う顔をしました。

(てっきり猛烈な勢いで迫って来るかと思ってたんだけど・・・、
なんか拍子抜けね、流石に諦めてくれたのかな・・・?)
それならそれで良かったと思い、
亜理紗は、先程挨拶を交わした仲良しグループの方に向かいました。

「朝野さん、渡辺さんと何かあった?なんか近頃仲悪いよね?」
さっきのやり取りを見て心配した、グループの1人の子が言いました。

「え・・別に、そんな事ないけど・・・」

「嘘バレバレ~、『卒演』絡みっしょ?亜理紗は看板女優なんだから、
ちゃんと珠樹を支えてあげないとだめじゃん」

「あはは・・・、そうっすよねぇ・・」
別の子のダメ出しに、亜理紗は苦笑いを浮かべるしかありませんでした。

(私だってそのつもりだったわよ。
でも、私の人生最大のトラウマである、お・・・、アレを、
舞台上でやれだなんて言われたら・・・、支えようなんて思える訳ないじゃん!!)

「・・・はぁあ!!・・・っ!!」
ギュッ!!!

生徒が続々登校してきて、教室がざわつく朝のHR直前の時間。
机に向かってペンを走らせる一人の少女が、そっと左手で股間を抑えた事に、誰も気が付きませんでした。



1時間目、現国の授業中。

「それじゃあ次、渡辺さん。ここから次の段落まで読んでくれる」

「・・・はい」
先生に指された珠樹は、教科書を手に立ち上がりましたが・・・。

ブルッ!!

「あっ・・んっ」
その時、ほんの一瞬、珠樹は小さくそう呟きながら、
さりげなく机の側面に股間を押し当てるような仕草をしました。

(・・・?)
その後、珠樹は普通に朗読をこなして席に着きましたが。
その様子を見た亜理紗は、何か変だなと思いました。
・・・と言うより、思い当たる事は一つしかありませんでした。

(トイレだよね・・・)

チャイムが鳴り、クラスメイトの数人が席を立って教室から姿を消す中、
亜理紗は珠樹の様子を見ますが、席を立つ素振りを見せません。

(・・・気のせいかしら??)
珠樹の事が気になりつつも、亜理紗は自分の尿意を解消しにトイレに向かいました。



2時間目、世界史の授業中。

「え~、丁度その頃、フランスでは~・・・」
板書をノートに書き写す作業をこなしつつ、亜理紗は、珠樹の様子を確認しました。
珠樹は凄く小さな動きで、時々腰を浮かせたり、太ももをすり合わせたり、
スカートのポケット越しに、手を股間にもって行ったりしていました。
流石にもう疑う余地はありません。

(やっぱり珠樹、おしっこ我慢してる。
でも・・・、だったら何で、さっきの休み時間にトイレに行かなかったの?)
さっきまでは我慢出来ると思ったのかも知れませんが、今は、かなり切羽詰まっているように見えます。
しかも次の授業は2組合同の体育、もし次の休み時間でもトイレに行かなかったら・・・。
下手をすると最悪の結果になる恐れも十分に考えられます。



2時間目終了後。

亜理紗は着替え一式を片手に、席に座る珠樹の元に向かいました。

「珠樹、行くよ」

「え・・!?、うん、ちょっと待って・・・」
珠樹は着替えを持つと席を立って、亜理紗と共に教室を出ました。

体育の授業では、男子は女子の居なくなった教室内で着替えをするのですが、
女子には、ちゃんと更衣室が用意されているので、そこで着替える事になっているのです。
昨日までとの態度の違いや、謎のおしっこ我慢に疑問を感じた亜理紗は、
並んで歩きながら、珠樹に問いかける事にしました。

「昨日まで散々、LINEやらなんやらでヒロインやれやれって五月蠅かったのに、
今日は一体どうしたのよ?期日だったから身構えてたのに、なんか拍子抜けだわ」

「・・・・」

「まぁ、諦めてくれたのなら、それはそれで良いんだけど・・・」

「・・・・っん」
モジモジ・・・・。

そうしている内に、女子トイレの前まできました。
そこで亜理紗は、並んで歩く流れで珠樹と共にトイレに入ろうとしました。

ですが。

「ちょっと、亜理紗、何?!」
ドアを目の前にして珠樹は立ち止まりました。

「何って・・・、さっきから珠樹、トイレ我慢してるでしょ?」
怪訝そうな顔をする亜理紗に、珠樹は、

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「してない、入るなら亜理紗一人で入って」
そう言って、走って先に行ってしまいました。

「ちょっと、珠樹!!!」
亜理紗は慌てて呼びかけますが、もう姿はありませんでした。
でもこれで確信が持てました。

珠樹はわざと、おしっこを我慢し続けていると。
でも、亜理紗は、何で珠樹がそんな事をしているのか分かりませんでした。

(誰かに脅されてるとか?そういう趣向の変態男子に・・・!?)
そんな的外れな事も考えてはみましたが、
タイミング的に、恐らく原因は、自分にある確率が高いと亜理紗は考えました。

(私がヒロインを拒み続けてるから・・・?
でも、それがどうして、トイレに行かずに我慢を続ける事に結び付くの???)
更衣室に入ると、そこに珠樹の姿はありませんでした。
さっさと着替えてグラウンドに行ってしまったみたいです。

(そんな事してたって、最終的に珠樹がお・・、おも・・、ら・・・、
するだけじゃない・・、一体何考えてるのよ、珠樹・・・)



3時間目、体育の授業中。

「あ・・・っ!!・・・くぅっ!!」
授業の中盤に差し掛かると、珠樹の尿意は益々強くなった来たようで、
時折、かなりつらそうな表情をするようになりました。

(ちょっと・・・、本当に、も・・・、しちゃうわよ!!)
亜理紗は気が気ではありませんでした。

授業終盤、

「よーし最後にトラック5週なー、運動部の奴らは6週ー、終わったら終わりでいいぞー」
体育の若い女の先生は、サバサバとした口調で言いました。

「えー」
「何それー!?」
「人種差別反対ーっ!!」
運動部員から不満の声が上がる中、問答無用でランニングがスタートしました。

・・・・・・。

「はぁ・・はぁ・・・」

(クソ・・・、やっぱり現役には敵わないか・・・)
亜理紗は、運動部のキャプテンクラスとほぼ変わらないペースで6週を走り終えました。
演劇部員なので5週で良いのですが、そこは元バレー部キャプテンの意地でしょうか・・・。

殆ど息も切らしてない亜理紗は、未だにトラックをトボトボと走る珠樹を、心配そうに見つめました。
球技はいつも補欠、それどころか、キャッチボールもまともに出来ない程、運動音痴な珠樹。
当然走るのも苦手で、クラスで一番ふくよかな体の子と最下位を争っていました。
おしっこ我慢もしている珠樹は、余計つらそうに見えます。

(やばそうになったら、問答無用でトイレに連れ込むわ)
亜理紗は、トラックから少し離れた位置に立って珠樹を見守りました。
場合によっては、お姫様抱っこも辞さない覚悟は出来ています(笑)

暫くすると、5週を走り終えた直後で、
ぜぇぜぇ息を切らしたある人物が、亜理紗の方に歩み寄って来ました。

「はぁはぁ・・・、キツイ・・・、朝野さん、流石元運動部ね・・・・」
それは、亜理紗と同じ演劇部の2枚看板女優の一人、野口さんでした。
となりのクラスの野口さんとは、体育の授業は一緒になるのです。

「全然よ・・・、相川さんや、沢口さんにはいつも勝てないし・・・」

「そりゃあ・・・、あっちは陸上部と女バスのエースだもん・・・」
無理もないよと野口さんは苦笑いを浮かべました。

「教室戻らないの?」
野口さんの問いに、亜理紗は「うん・・・ちょっとね・・・」と
珠樹に視線を向けたまま曖昧な返事を返しました。

「・・・部長を待ってるの?」
野口さんは、亜理紗が珠樹の事を目で追っている事に直ぐに気が付きました。

「え・・、まぁね」

「友達思いだねぇ~」
言いながら野口さんは、走った事で乱れた髪の毛を両手で整えました。

(・・・丁度いいわ)
亜理紗は珠樹の行動に関する疑問を、野口さんに尋ねてみようと思いました。

「ねぇ、野口さん」

「何?」

「今走ってる珠樹を見てさ、どう思う?」

「え・・・?遅い」
ガクッ!!!
野口さんの返答が余りに的外れで、亜理紗は大げさにコケる仕草をしました。

「あっ上手い上手い!!でもあざとさが前面に出過ぎって言うか、もう少しこう・・」

「今は部活じゃないから、そう言うのいらない・・・」
野口さんの熱血演技指導が始まりそうなので、亜理紗は慌ててそれを止めました。

「ごめんつい・・・」
軽く謝ると野口さんは続けました。

「なら、おしっこ我慢の事?見た感じ、大分切羽詰まってるね。
このままじゃおもらしするかも・・・。もって後、1時間か2時間位?」

「野口さん、もしかして直ぐ気が付いてた!?」
野口さんの鮮やかな返答振りに、亜理紗は驚きました。

「うん、まぁ・・。おもらしについて、少しずつ研究始めたから。割と敏感かも・・」
おもらしについて研究などと言う、一般人が聞いたら、間違いなくドン引きするようなフレーズを、
野口さんは恥ずかしげもなく平然と言い放ちました。

「それって・・・」

「朝野さんに何かあったら、代役は私だもん・・・、不測の事態に備えるのは当然よ」
野口さんの演技に掛ける姿勢は並大抵ではありません。
前回の文化祭での某国の姫君役の時も、
姫君に関する書物、資料を片っ端から読み漁るのは当たり前で、
その他にも、姫君が登場する映画や舞台を何種類も、何百回も繰り返し見て研究し、
終いには実費で、物語の舞台の現地まで赴き、取材を行ったりする程なのです。
演技に関しては一切の妥協を許さない・・・、それが野口さんと言う人です。
演じる役の人の事を、ちょっと図書館で調べるくらいの事しかやらない亜理紗とは、まるで違います。

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「台本貰って帰った日に、とりあえずネットでおもらしの事色々調べて・・・。
次の日は、実際学校で限界までおしっこ我慢してみて・・・。
帰りに寄り道して、おもらしがテーマの本とかDVDとか買って研究して・・・。
あ・・、あと実際にもらしてみないとって思って、真夜中の公園で一度おもらししてみた」

「・・・・」
亜理紗は言葉が出ませんでした。

「昨日は紙オムツ穿いて学校来て、ずっと我慢してたら・・・。
最終的に部活中に我慢できなくて・・・。もらしちゃった・・・、えへっ」
野口さんは、頬を赤く染めて悪戯っぽく舌を出しました。

「嘘でしょ!?全然気が付かなかった・・・」
驚く亜理紗に、野口さんは「それなら良かった」とホッとした顔を浮かべました。

「男子にバレちゃったら、研究とは言え流石に恥ずかしいもん・・・。まぁ、女子でも恥ずかしいけど・・」

「えっとさ、所詮代役でしょ?何でそこまで・・・、私が降りれば別の脚本って、珠樹言ってたし・・・」

「ああ・・、それなんだけど・・・。
私ね、あの台本何度も読んでる内に、朝野さんが降りても、
そのまま私が同じ脚本でヒロインやりたいって思って来ちゃってね」

「そうなんだ・・・」
(自分から進んでお・・、したいだなんて・・・・)

「だから台本を貰った次の日から、ずっと部長と交渉してるの。
部長も私がしつこいもんだから、だいぶ折れて来てる感じ・・」

「そんな事までしてたんだ・・・」

「私がもしヒロインやる事になったら、最高の演技(おもらし)をお客様に見せたいしね、これ位当たり前だよ」

「・・・なるほどね」
いかにも野口さんらしい・・・と、亜理紗は思いました。

「まぁ、あの脚本の本来のヒロインは朝野さんなんだから、朝野さんがやるべきだと、私は思うけどね」
野口さんは亜理紗を流し目で見ながら言いました。

「・・・それはそれとして、珠樹だけどさ」
野口さんの問いには答えずに亜理紗は言いました。

「野口さんが言ったように、おしっこ我慢してるのよ。しかも朝からずっと」

「ふ~ん・・・、忙しかったの?」

「わざとよ」
亜理紗は、野口さんの問いに若干苛立ちを込めて言いました。

「・・・え?何で?って言うより、何でわざとってわかるの?」

「さっきの休み時間に、一緒にトイレに入ろうとしたら、珠樹のやつ
したくないって言って逃げたのよ、2時間目からずっとモジモジしてたのに・・・」

「ふ~ん、変なの~・・」
野口さんはそう言うと、未だに最下位争いを続けながら走る珠樹を見つめました。

「あれじゃない?私と同じで研究の一環で・・・」

「それは違うと思う・・・」
そこまでやるのはあんた位だよ・・・。
と言う言葉を亜理紗は必死で飲み込みました。

「たぶん、私に原因があるんだと思うの。
私がヒロインを拒み続けてるから・・・」

「そうなの????」
野口さんは首を傾げました。

「タイミング的にそうとしか考えられないっ!!」
語気を強めて言う亜理紗ですが。
野口さんは怯む事なく言いました。

「タイミングねぇ・・・。まぁ、仮にそうだとしてだよ、
それと、部長のおしっこ我慢がどう結びつくの?」
亜理紗の話を聞いた野口さんも、行きつく疑問は同じでした。

「それが分からないから悩んでるの、ねぇ、野口さんはどう思う?」
懇願する亜理紗に対し、善人の塊と称される野口さんは、
「仕方無いなぁ・・」と言って、一緒に考えてあげる事にしました。

暫くの間、亜理紗と共に走り続ける珠樹を眺めていた野口さんですが、

「もしかしたらだけど・・」
と、亜理紗の方を向いて問かけました。

「朝野さんは、おもらしをしたくないからヒロイン降りたいんだよね?」

「そうよ」

「どうして、おもらししたくないの?」
野口さんの質問に、亜理紗は、突然額を銃で打ち抜かれたかのような衝撃を受けました。

「そ・・・れは」
亜理紗は物凄く後悔しました。
ちょっと相談に乗って貰おうとしただけなのに、
絶対人に言いたくない事を言わなきゃならない流れになるなんて・・・。

「え・・と、あ・・」

「言いづらい?」

「・・・う・・、まぁ・・その」
亜理紗の慌てた様子を見て、野口さんは何かを悟ったかのような顔をしました。

「じゃあいいよ、分かったから、部長が考えてる事」

「ほ・・・本当?」
亜理紗は、早く教えてと言わんばかりに野口さんに迫りました。

「部長はさ、朝野さんの気持ちを理解しようとしてるんじゃないかなぁ。
・・・で、その為には『おもらし』をしないといけないと思ってる」

「私の気持ちを・・・」

(・・・!!っ)

「分かる?分からないならもっと具体的に言っちゃうけど・・・」

「やめて!!分かったわ、成程・・・そう言う事か」
亜理紗は野口さんの言わんとしている事を理解しました。

「んんっ・・・と」
すると突然、野口さんは、その場で小さく伸びをしました。

「朝野さんの悩みも解消されたみたいだし、私、もう戻るね。
後は部長と朝野さんの問題だから・・・。それじゃあね~」
そう言って野口さんは、亜理紗に背を向けて歩き出しました。

・・・のですが。

「朝野さん、・・・えっとね」
野口さんは直ぐに振り返ると、少し顔を赤くして言いました。

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「私も小2の時にね、おしっこ・・・・、もらした事あるよ。
放課後だったから、あんまりからかわれなかったけどね・・・。
保健室でパンツ借りて、お着替えして、恥ずかしかったなぁ~・・」

「え・・・っと・・・」

「嘘だと思うなら保健の先生に聞いてみて、たぶん覚えてると思うから」
そう言うと今度こそ、校舎の方に消えて行きました。

(野口さんなりの慰めのつもりなのかなぁ。
小2ならまだ良いじゃない、・・・私なんて。
ってか、私の黒歴史を知られてしまった・・・・・。
し・・・死にたい・・・・。
まぁ、善人の塊みたいな人だし、誰にも言わないとは思うけど・・・)
そんな事を考えていると、
ようやく5週を走り終えた珠樹が、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来ました。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
未だに肩で息をしている珠樹。
そんな珠樹に向かって、亜理紗は言いました。

「あんたって本当に馬鹿ね、そんな事したって私は・・・」

「・・・あっ、ひょっとして気が付いちゃった?
野口さん、んぁっ・・っと、何か話してたのは見えたけど・・・。
まぁ・・あんっ・・・、どうせ昼休みには話すつもりでいたから、別に良いけどね」
言いながら珠樹は、ずっと太ももをすり合わせています。
限界は近づいているみたいです。

「早くトイレに行って!!本当にも・・・、しちゃうわよ!!」

「行かない」

「いい加減にしてっ!!!怒るわよ!!!!」
声を荒げる亜理紗、でも珠樹は意に介しません。

「私がおもらしした後で、最後にもう一度、ヒロインをやるかどうか答えて欲しいの。
それでも降りるって言うならきっぱり諦めるから・・・っくぅ」

「勝手に話進めないでよ!!何でそこまでするの!!
意味わかんない!!!あんたがもら・・・所なんて、
見たくもないし、見た所で私の気持ちは変わらないわ!!
だからトイレに行って!!お願いだから・・・」

「行かないよ。
私、亜理紗が何と言おうと、おもらしするから・・・」

「・・・っ」
ブチッ!!
頭に来た亜理紗は、珠樹に接近して手を伸ばしました。

「ちょっ!!」
それを見て慌てた珠樹は、素早く後ろに身を引きました。

「・・・なんのつもり?」

「口で言っても聞かないなら、無理やりトイレに連れて行くまでよ。
あんたみたいな鈍間なチビ、抑え込むのは簡単よ、元バレー部キャプテンを舐めないでくれる?」

「元キャプテン~~??
おもらしして、そのまま行かなくなったような人が、
・・んくっ、よく言うわね・・・」
珠樹は鼻で笑いながら言いました。

「珠樹ぃいいいいーーーっ!!!」
プライドを逆撫でされて、さらに怒りを増した亜理紗は、また珠樹に迫りました。
しかし、珠樹は声をあげて言います

「これ以上近づいたら、私、今ここでもらすからね!!!
もうだいぶヤバいし、ちょっと力を込めれば出るよ、おしっこっ!!」

「・・・っ!!」
亜理紗は動きを止めました。

「もう、亜理紗には私のおもらしを止める事は出来ないのよ。
分かったら、私の言う通りにしてくれる?」
その言葉に、完全にキレた亜理紗は、

「なら勝手にすれば!!!!もう知らないっ!!!!!」
と言って、校舎に向かって走り出しました。

「・・・・・あっ!!」
ギュウ~~~ッ!!!
亜理紗の後姿を、珠樹は両手で股間を必死に抑えながら見つめました。

(やっばいな~私、後どれ位もつかなぁ・・・・。
おもらしかぁ・・・、やっぱ、いざとなると恥ずかしいな・・・。
この歳でやらかしたら、皆ドン引きだろうなぁ・・・)
珠樹はゆっくりと校舎に向かって歩きました。

「はぁっっ!!うぅっ・・」
足を動かす度に、膀胱に溜まったおしっこが出口を求めて暴れ回ります。

「きっつぅ~・・・、でも、亜理紗ちゃんの為だもん」

(珠樹の馬鹿!!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿っ!!!!)
更衣室で着替えながら、亜理紗は珠樹の事を考えていました。

(勝手に、も・・、しちゃえば良いのよ!!!
どれだけ惨めで恥ずかしいか、知りもしないで・・・。
大恥かいた後で後悔して泣きついて来たって、知らないからっ)



4時間目、生物の授業中。

「え~、このように地球上には未だに発見されていない未知の生物が無数に存在し~~・・」
先生の熱弁をよそに、亜理紗は珠樹の様子を確認します。

「・・・ふっ、んっ・・、はぁ・・」
そわそわ・・。
そわそわ・・。
平静を装ってはいますが、かなり辛そうです。

(やれるもんならやってみなさいよ・・・。
どーせ途中で怖くなるに決まってるわ・・・)

「・・・んあっ」
ギュッ!!
珠樹は股間を強く握りました。

(まだまだ・・・、もっと、ギリギリまで我慢して、
あの時の亜理紗以上の大おもらしをしないと・・、
きっと亜理紗は納得してくれない・・・)
珠樹はこの時間を何とか乗り切って、昼休みを迎えました。



昼休み。

辛そうに席を立って、廊下に出ようとする珠樹に亜理紗は声を掛けました。

「珠樹、一緒にトイレ行こう。これが私からのラストチャンス・・・」

「・・・・」
珠樹は無言で亜理紗の横を通り過ぎて行きました。

(わからず屋!!本当にどうなっても知らないわよっ!!!)
心の中で叫びつつ、亜理紗は鞄から可愛いお弁当箱を取り出すと、
朝、挨拶を交わした、クラスの仲良しグループと一緒にお昼ご飯を食べる事にしました。

「亜理紗ぁ~、早く仲直りしなよ~」
食事中、今日の2人を様子を眺めていて、心配したグループの子の1人が言いました。

「え・・・?ああ、珠樹の事?もう知らないわよ、あんな奴!!」
苛立ちを抑えきれずに言う亜理紗に、
グループの皆はお互いに目配せをし合いました。
そして、先程話した子が、

「まぁ、私達で相談に乗れることがあれば、遠慮なく言ってよね。
友達なんだからさ・・・」
と言って亜理紗を励ましました。

「・・・ありがとう」
皆にお礼を言ったその直後、ポケットのスマホから着信音が鳴りました。

「・・・?」
画面を確認すると、野口さんからLINEが届いていました。
一応登録はしていたものの、友達と呼べる程親しい間柄ではないので、
これまでやり取りした事は一度もありません。
一瞬何だろうと思った亜理紗ですが、用件は一つしかない事に直ぐに気が付きました。

(珠樹の事かな・・・)
確認すると案の定、このように書き込まれていました。

《部長、もう、おもらししちゃった?》

それを見た亜理紗は、

《してないよ》
と返しました。

それに対して、野口さんは、

《良かった。私、心配してたの》

《でも・・・、さっきの様子じゃ、
5時間目には確実におもらしすると思うよ・・・》


《朝野さんはそれで良いの?》
と返してきました。

《言いわけないでしょ!!
でも、どうすれば良いか分からないもん》

グループの子達が、「どうしたの~?」と声をかけてくる中、亜理紗は書き込みます。

《朝野さんが、本気で部長のおもらしを止めたいと思うなら》

《もう、腹を括るしかないと思うよ・・・》

「・・・・・」
野口さんの書き込みを見ながら、亜理紗はしばらく固まりました。
そうこうしていると、再び野口さんから、

《朝野さんが部長のおもらし止めてくれる事、私、願ってるからね》
っと、可愛らしい『じゃあね』のスタンプと共に書き込みが来ました。
恐らくこれで最後でしょう。

(腹を括るって・・・)
それはつまり、ヒロイン役を引き受けると珠樹に告げると言う事でしょう。
ですが、それで珠樹のおもらしを止める事が出来るかもしれないとしても、
亜理紗にとって、その決断は、とても苦しい事です。

(嫌よ・・・、お・・・、なんて、もう2度としたくない!!絶対嫌っ!!)

その後。
昼休みも残り数分と言う頃に、珠樹は購買部のパンの袋を手に教室に戻って来ました。
相変わらず、もじもじと落ち着かず、辛そうです。

(やっぱり、トイレには行ってないみたいね・・・)
亜理紗は珠樹の様子を見ながら思いました。

「あぁっ!!」
珠樹は自分の机に向かう途中で、一度しゃがみ込みました。
袋でガードしながら、隠れた手で一度、股間をギューーーっと強く握ります。

(やばいやばいやばい・・・、もう限界・・・。
たぶん次の時間で私、やっちゃうわね・・・・。
私のおもらし、しっかり見ててよね、亜理紗・・・)

「渡辺さん大丈夫?」
と心配して声をかけるクラスメイトに、

「ありがとう、大丈夫」
と言うと、珠樹はゆっくり立ち上がって自分の席に着きました。

(さて、もうじきこの辺り一帯をおしっこまみれにしちゃう訳だけど・・・。
その前に、最後の仕上げね・・・)
珠樹は購買部の袋からあるものを取り出しました。
それは・・・。
ペットボトルのお茶、300mlです。

「ゴクゴクゴク・・・・、プハァ~~」
蓋を開けると、珠樹はそのお茶を一気に飲み干しました。
冷たいお茶は一気に珠樹のおなかを圧迫し、
ただでさえ限界に近づいてる尿意を更に強めました。

ゾクゾクゾク・・・・。

(ああ~っ!!もう駄目!!本当にやばい!!
出るっ・・・出ちゃう!!おしっこ・・・、おもらししちゃう!!!)
珠樹は必死に股間を抑えて、おしっこを我慢しました。
最早、取り繕う余裕は無く、その表情は必死そのものです。
周りのクラスメイトも流石に珠樹の異変を感じとってきたのか、
珠樹を横目に、ヒソヒソと会話をする様子があちこちで見て取れました。

(・・・・あの馬鹿!!!)
じっと様子を見ていた亜理紗は慌てました、でも、体は動きませんでした。
野口さんの言う『腹を括る』が、やっぱりどうしても出来ませんでした。
あたふたしている内に、チャイムが鳴って、先生が教室に入って来てしまいました。

(ほ・・本当にする訳ないわよ、ギリギリまで粘って、
さ・・・最後にはトイレに駆け込むわよ・・。
どうせそうよ、う・・うん・・・そうに決まってる・・・)
亜理紗はもう、そう願うしかありませんでした。

「あ・・・、あぅ・・、も・・もれ・・・」
(何か・・・この感覚・・・、・・・しいなぁ)



五時間目、数学の授業中。

「f(x+h)g(x+h)-f(x+h)g(x)+f(x+h)g(x)-f(x)g(x)
=f(x+h){ g(x+h)-g(x) } + { f(x+h)-f(x) } g(x)」
教室には、数式を黒板に記入しながら説明する先生の声が響き渡ります。
しかし亜理紗には、最早先生の声も板書のコツコツ音も耳には入りません。
授業開始から、ずっと珠樹の事を見守り続けました。

(もう限界でしよ珠樹、本当に・・・するつもり!?
早く先生に言いなさい!!お願い・・・早く言って!!!)

授業開始から15分。

「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・ばい、やばい」
珠樹はつぶやくようにそう言って、足をすり合わせ、股間を抑えて最後の限界まで我慢を続けました。

(で・・・るぅ~~・・・・)

授業開始から20分。

「はぁはぁ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・、
したい・・、おしっ・・したいぃ・・・」
先程から珠樹の呼吸は一気に荒くなってきました。
せわしなく動いていた足も、その動きを鈍くしていきました・・・。
もうあと5分も持たないでしょう・・・・。

(珠樹・・・、もう良いよ、止めてよ!!
お願いだから、先生に言ってよ!!トイレ行きたいって!!
ああもうっ、許可なんていらないから、早く立って駆け込んじゃいなよっ!!!
お願い・・・、お願いだから立ってよ・・・、お願いだからぁ・・・)
亜理紗の目に熱いものがこみ上げて来ました。

(何で・・、何でよ・・・、何で私なんかの為にここまでするのよ!!
分かんない!!全然分かんないよ!!ねえっ!!答えてよ珠樹ぃっ!!!!)
そしてとうとう、目から頬を伝って涙が流れて来ました。

「・・・だめぇ~」
朝、駅前で買って一気飲みした500mlのお茶と、
さっき飲んだ300mlのお茶が、珠樹の体の中で暴れまわっています。
珠樹には最早、それらを抑え込む力は残されてはいませんでした。
そしてとうとう、机の上に突っ伏して、足の動きを完全に止めました。
それまでピッタリ閉じられていた両脚が徐々に開かれていき・・・。

(いやぁ!!!!!)
そんな珠樹の姿を見た亜理紗の脳裏に、自分がおもらしをした時の映像が、
瞬時にフラッシュバックしました。

そして、その次の瞬間。

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「やめてぇええええええええええっ!!!!!!!!!」

立ち上がり、大粒の涙を流しながら叫んでいました。

隣の隣のクラスまで届いてそうな大声に、
珠樹を含めて、教室中の視線が亜理紗に集まりました。

そんな事はお構いなしに、亜理紗は珠樹の席まで歩いて行くと、
とっさの事に動揺して固まっている珠樹を、
即座にお姫様抱っこして抱きかかえると、そのまま廊下に向かって歩きました。
少しずつおもらしが始まっているのか、珠樹を抱きかかえた亜理紗の左腕に、
じわっ・・と、濡れた感触が伝わりました。

「おいっ!!こら待て、お前らどこ行く気だ!!」
先生の問いに亜理紗は

「トイレです!!!!」
と答えると、そのままトイレに駆け込みました。



トイレの個室のドアの前まで着くと、亜理紗は珠樹を下ろしました。

「亜理紗・・・、その・・・」

「話は後!!良いからさっさとおしっこ済ませて!!!!」
溢れる涙を拭いながら、亜理紗は言いました。

「う・・、うん」
亜理紗の鬼気迫る物言いに、珠樹は素直に従い個室に入りました。
その時一瞬、亜理紗は珠樹のスカートのお尻の部分を見てしまいました。
そこにはかなりハッキリと、おもらしの丸い跡が出来ていました。
また、自分の制服の左袖も、かなりびっしょりと濡れてしまっていました。
お姫様抱っこ中に、珠樹はかなりの量のおしっこをおちびりしてしまったみたいです。

「あっ!!」

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シュウウウウウウ~~~~~~~。
パチャパチャパチャパチャパチャパチャ・・・・。

個室に入った直後、
珠樹はパンツを脱ぐ余裕も無く、立ったまま、おしっこをもらしてしまいました。
亜理紗の視界に、タイルとドアの隙間から除く珠樹の足と、
そこにおしっこが流れ込んで黄色い染みが広がる様子、
タイルに直接落ちたおしっこが、
珠樹の足の周りにみるみるうちに広がっていく様子が飛び込んで来ました。

「いやっ!!!」
亜理紗は再び実体験をフラッシュバックしてしまい、慌てて視線をそらしました。

パチャパチャパチャパチャパチャパチャ・・・・。
おちびりもあったと言うのに、珠樹のおもらしは相当な量で、約1分程続きました。

・・・・・。

「・・・ごめん、間に合わなかった」
おもらしを終えた珠樹はドア越しにそう言って謝りました。

「・・・する気満々だった癖に、今更何言ってんのよ」

「それもそうね」
そう言って珠樹は照れ笑いを浮かべました。

「あんたは、お・・、おも・・、がどれだけ恥ずかしいか、まるでわかってない。
あのまま教室でやってたら、皆に・・・、男子にまで見られて大恥かく所だったのよ、分かってる!?」

「わかっ・・・・。
そうだね、分かってなかったかもね」
珠樹はスカートの中に手を入れて、スルスルとパンツを下ろしました。

「・・・んしょ、うわぁ~びっしょり・・・、どうしようコレ・・・」
ポチョン・・・。
手にしたパンツを絞ると、薄黄色のおしっこが滲み出て、便器に落ちて行きました。

「ねぇ亜理紗、ヒロインの事だけど・・・・、
ひょっとして、少しは気持ち・・・変わったり・・・した?」
絞ったパンツをスカートのポケットに入れると、
次にトイレットペーパーを引き出して、大事な所を拭き始めました。

「その前に、一つ答えて」

「・・・何?」

「この前聞きそびれちゃったけどさ、何でここまでして私にまたバレーをさせようとするの?」

「え・・・だって、それは・・・」

「そりゃ・・、確かに私はバレーに未練持ってるよ。
情けない理由で足踏みしてる自分が、今でも不甲斐ないし、泣くほど悔しい。
でもさ・・・珠樹には関係無いじゃん」

(えっ・・!?)

「関係無い・・・、何それ・・・」
珠樹の下半身を拭く手が止まりました。

「珠樹には、脚本家になるって言う夢があるんでしょ!!
私なんかにかまってないで、もっと夢に向かって突き進んでよ!!」

「勝手な事言わないで!!!」
珠樹は手にしたトイレットペーパーをギュッと握り閉めました。

「関係ない・・・、関係ないって何よ・・酷い・・、
酷いよ亜理紗・・・・、亜理紗ちゃん・・・」

「・・・珠樹?」

「私は亜理紗ちゃんの大ファンなのよ!!!
中1の時、亜理紗ちゃんのプレーを初めて見た時からずっと・・、今でもずっと!!!」

「ちょっ・・、ええっ!?」
意外な言葉に、亜理紗は動揺を隠せませんでした。

「中2で同じクラスになれた時は、それだけで、飛び上がるほど嬉しかった。
初めて亜理紗ちゃんに話しかけた時に、私、言ったじゃん、大ファンだって!!」

「・・・・そうだっけ?」

「ウソでしょ!!本当に覚えてないの!?」

「・・・ごめん、ちょっと」
(あの頃は、私もバレーの事で頭が一杯だったし・・・、
ファンだとか言って、身勝手な理由で近づいてくる奴も多かったしなぁ・・・。
私にとっては、珠樹も最初はその中の一人だったのかも・・・・)

「ショック・・・、電車で聞かれた時は、冗談だと思ってたのに・・・」
落ち込んだ珠樹でしたが、何とか気を取り直して、話を続けました。

「チビで鈍間な私にとって、同い年なのにずっと背が高くて、
年上の先輩達をいとも簡単に倒しちゃう亜理紗ちゃんは憧れの存在だったのよ。
だからね・・・友達になれて、本当に嬉しかった・・・。
日本一・・・ううん、世界一のバレー選手なって欲しいって思ったし、
亜理紗ちゃんなら絶対になれるって信じてた・・・」

「どうも・・・」

「そんな、亜理紗ちゃんが、
トラウマ抱えて、ずっとやりたいバレー出来ないでいるのに、
何もしないでいられる訳ないじゃない!!」

「・・・・・」

「それなのに・・・。関係ないって・・・、あんまりだよ」

「・・・・・」

「私は亜理紗ちゃんに戻って来てほしいの。
誰よりもバレーが上手くて、凛々しくて、まぶしい位に輝いてた。
私の憧れの、あの頃の亜理紗ちゃんに!!」

(私はここにいるんだけど・・・?)
亜理紗ちゃんは私の事のはずなのに・・・。
さっきから珠樹の言う亜理紗ちゃんは、まるで別人の事を言っているような感じでした。

「本当は私、あの時から今迄、ずっと我慢してたんだよ。
でも、もう我慢できない、亜理紗ちゃんの活躍を、もう一度見たい」

(亜理紗ちゃん?・・・て??)

「それは亜理紗も同じなんでしょ?
だったらさ、つらいかも知れないけど、頑張ってみようよ、おもらし。
亜理紗ちゃんの為に・・・」
お尻の辺りがびっしょりのスカートを身につけ、
その中に何も穿いていない珠樹が、
そんな事はお構い無しと言わんばかりに、思いの丈をぶつけました。

(・・・そうか)
今の珠樹の言葉で、亜理紗は気が付きました。

(珠樹にとって、『亜理紗ちゃん』は黒歴史以前の、バレー頑張ってた頃の私で、
『亜理紗』はそれ以降の、ただの友達としての私なんだ・・・)
無意識か、意識してかは分かりませんが、
そんな風に区別する程、当時の自分は珠樹にとって特別なんだと、
亜理紗は身に染みて感じました。

「はぁ~~~・・・、もう、分かったわよ、降参っ!!降参よ!!」
亜理紗はため息交じりに言いました。

(ならそうと早く言えば良いじゃない・・・。
こんな事までしちゃってさ・・・。
珠樹・・・、あんたって本当に鈍間で馬鹿ね・・・)
ただのファンならいざ知らず。
ドア越しに、おもらししながら内に秘めた思いを告白したのは、
どん底の自分を救ってくれた大親友、渡辺珠樹です。
そこまで言われて、何もせずに引き下がる事は、亜理紗には出来ませんでした。
親友の為にも、つらいけど立ち向かおうと、亜理紗は決めました。

「え・・・?それって・・・??」

「ヒロインやるわ、お・・・、おもら・・・し、も・・・頑張って・・・する」

or016.jpg
「亜理紗ーーーーーっ!!」

その言葉を聞いた珠樹は、ドアを開け、亜理紗に抱きつきました。
タイルに広がるおしっこから、微かにアンモニア臭が漂う中、
珠樹はしばらく、亜理紗の胸に顔を埋めました。

闇の先には光あり・・・。
亜理紗にとって、珠樹こそが光の頂点にあたる存在なのでした。

「頑張ろうね!!そうすれば必ずもう一度、コートの中に帰れるから・・」

「・・・ただし、一つだけ条件があるわ」
亜理紗は抱き着く珠樹を引き離しながら言いました。

「・・・え?」

・・・・・・・。



その後、2人は大急ぎでトイレを掃除して、おもらしの痕跡を誤魔化しました。
そしてそのまま保健室に行って、
保健の先生に、おもらししたと素直に話し、パンツと予備のスカートを借りました。
珠樹は、そのまま体調不良と言う事にして、放課後まで身を潜めていた方が良いと考え、
教室には亜理紗一人で戻りました。



5時間目が終わり、休み時間になると、案の定クラスメイト達が

『さっきのは何だったの??』
『渡辺さん、どうかしたの?』
『お姫様抱っこ~激萌え~~!!』
『アレも部活動の一環??』
と、とっかえひっかえ亜理紗に質問して来ました。

皆の関心がなくなるまで、適当に誤魔化した亜理紗は、取りあえず、
誰一人、珠樹がおもらしをした事に気が付いてないと分かって、ホッと胸を撫でおろしました。



放課後、1、2年の部員を帰宅させると、
予定通り『卒演』に関する2回目の打ち合わせが行われました。

「それで、前回決まらなかったヒロインの件ですが、
予定通り、亜理紗が引き受けてくれる事になりました」
珠樹の発言に、部員からは歓声が沸き起こりました。

「皆、迷惑かけてごめんなさい・・・。
精一杯やらせてもらいます、どうかよろしくお願いします」
亜理紗が頭を下げると、皆は拍手で賛同の意を示してくれました。

「野口さんは、ヒロインの友人役ですが、
亜理紗に不測の事態が起こった場合は代役を務めて貰います」

「はい」
野口さんは一言、真剣な表情で答えました。

「それと・・・、一つ配役と台本を変更します」

「「???」」
亜理紗と珠樹以外の部員が、不思議そうな顔をしました。

「ヒロインのライバル役ですが、この役を私がやります。
そしてラストの、主人公に告白されて、ヒロインがおもらしするシーンですが・・」

「「・・・・・」」

「横で争いに敗れたライバルも、ショックで同時におもらしをする事に変えます」
その変更に、部員からは歓声ともどよめきとも取れる声が上がりました。

「私、珠樹と一緒に、お・・・、おも、・・らし、したい」
それが、トイレの中で亜理紗が出した条件でした。

ヒロインが決まり。

黄水大附属高等学校演劇部『2016年度、卒業記念公演』は、いよいよ動き出そうとしていました。

続く。
  1. 2017/01/21(土) 14:11:56|
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overwrite~第2話~

こんばんは。

overwrite~第2話~をお送りします。
前回で過去の話は終わり・・・・。
と思いきや、第2話開始2行でまた過去に戻ります・・・。
ああ・・・、この文章構成力の無さよ・・・(× ×)。。。
なんか色々矛盾してないよな・・・とかもかなり怪しいし不安です・・・。
致命的なの以外は、おおめに見てもらえると助かります(^^;
(もし致命的な矛盾点があったらお知らせ下さるとありがたいです)
兎に角、文章も自前絵もなかなか上達しませんが、少しでも楽しんでもらえれば嬉しいです。
今日は、昼間に、莉穂ちゃんの誕生日記念日記も上げました。
よかったらそっちも見て下さい。

前回の日記に拍手を頂きました。
ありがとうございます。

次回は、1回overwriteはお休みしまして。
悠奈ちゃんの、この季節にちなんだお話をあげようと思います。
(続きは、正月明けになると思います)

それでは本編をどうぞ。




前回までのあらすじ。

黄水大附属高等学校演劇部で、2月に行われる『卒業記念公演(卒演)』のヒロインに選ばれた朝野亜理紗は、
その打ち合わせの場で、親友の渡辺珠樹が自分に『卒演』でおもらしをさせようとしている事を知ってしまいます。
中学2年の時に失敗して、心に深い傷を負っている亜理紗は、どうしてそんな事をさせるのかと、珠樹に問いかけます。
珠樹は、そんな亜理紗にこう返しました。

「何で、大して興味の無い、演劇部に入ったの!?」

「それは・・・」
元バレー部のキャプテンであった亜理紗、バレーにはもう完全に未練は無いのか・・・。
それとも・・・。



「中学の時は仕方が無いと思ったよ・・・、でも高校では、またバレー始めると思ってたのに・・・」
少し悲しそうな目をしながら言う珠樹・・・。



おもらし後。
保健室登校を続ける亜理紗の元に、
顧問の先生が、バレー部に復帰するよう説得をしに来た事がありました。

「朝野、お前がいないと地区予選突破すら厳しい状況だ・・・。頼む・・・、戻って来てくれ・・・」
必死に訴えかける先生。
ですが亜理紗は、下を向いて言いました。

「・・・ごめんなさい、先生、無理です。」

「お前が心配してるのは例の件だろ?あんなもん気にするな。
それに、俺からもきつく注意してある・・・。何も心配はいらん・・・な?」

(気にするなって・・・?!気にするに決まってるじゃんっ!!!
それに、先生の注意なんて、あの子達には無意味よっ・・・)

「戻りません!!早くどっか行ってください!!」
そう言って、亜理紗は復帰を拒否しました。

その後も、何度か先生は説得に来ましたが、亜理紗は頑なに拒否し続けました。

(私だって、バレーはしたい・・・。でも、あんな風に馬鹿にされるのはもう嫌・・・)
その時の亜理紗は、ある種の対人恐怖症に侵されていました。
生徒の顔を見るだけで、おもらしした事を馬鹿にされるのではないかと考えてしまい、恐怖で体が動かなくなってしまうのです。
なので、唯一の例外であった珠樹を除き、
亜理紗は、中学を卒業するまで、生徒の誰とも接触せずに過ごしました。

そんな状態のまま、亜理紗は黄水大附属高等学校に入学しました。
珠樹とクラスが違ってしまった亜理紗は、やっぱり最初はクラスメイトの顔を見る事が出来ませんでした。
ですが、それが返って功を奏したのか亜理紗は、

(なんの為にここを選んだのよ!!しっかりしろ私!!!)
っと、自分自身に活を入れ、さらに

(ここには私の失敗を知る人は一人もいない・・一人もいない・・・、一人もいない・・・、珠樹は別だけど・・・)
と、呪文のように心の中で唱える事で、対人恐怖症を克服したのでした。
友達・・と呼べるかは微妙でしたが、話しができるクラスメイトも何人か出来て、
亜理紗の高校生活は上々のスタートを切りました。



「私は、前から話してる通り演劇部に入るわよ、その為にこの高校選んだんだし!!」
昼食中、珠樹は亜理紗に向かって生き生きとした口調で話しました。
入学して2週間、そろそろ部活を決めないといけない時期です。

「ここの演劇部は全国的に知名度あるの、
亜理紗にも見せたでしょ、例の動画、・・・ってまぁ違法なんだけどさww
私の脚本が『卒演』で採用されれば、夢の脚本家への道がぐっと近づくわ、きっと・・」

「珠樹は凄いなぁ・・・、中学の時からそこまで将来の事を考えてたなんて・・・」
珠樹と同じじゃないと不安だから。
おもらしを知ってる人がいない場所じゃないと無理だから。
それだけの理由で、高校を選んだ自分とは大違いで、
亜理紗は、珠樹が自分を置いて何処か遠くへ行ってしまいそうな不安に駆られました。

「亜理紗はバレー部入るんでしょ」
珠樹は、さもそれが決定事項のように言いました。
その言葉に、亜理紗は、突然背後から襲われたかのような衝撃を受けました。

「え・・・と、どうしようかなぁ」

「え・・?入らないの?!!保健室では、やりたいけど・・・、って言ってたじゃん!!!」
生き生きと自分の事を語っていた珠樹の顔が、どんどん絶望に満ちた顔になって行きました。

or006.jpg
「やりたいけど、馬鹿にする人がいたから出来なかったんでしょ?もう平気になったんじゃないの?違うの?」
若干取り乱しながら話す珠樹。

(な・・・何、何???何で、珠樹がそんな顔するのよ)

「そうね・・・、でも、その、え・・演劇もなんか良いかなぁ・・なんて・・・」
ドギマギしながらそう言うと、珠樹は間髪入れずに、「何で?」と返しました。

「それは・・・・」
とても情けない理由だったので、亜理紗は言えませんでした。

「亜理紗ちゃ・・、亜理紗はバレーやらないと駄目だよ!!」

「ま・・まぁ、そんなに熱くならないでよ珠樹、自分の事は、自分で決めるから」

「・・・・・」

でも結局、それから数日後の演劇部の部室には、珠樹とそろって入部届を提出する亜理紗の姿がありました。

「バレー部、入らなかったんだね・・・」
そう呟く珠樹の表情は、凄く寂しそうでした。

でもそれも、その日1日だけの事でした。
珠樹は、それ以降、亜理紗に言及する事はありませんでした。

今日まで、ずっと・・・。



「バレーに未練がないって言うなら別に良いよ。
でも、違うよね?
この前も全日本の試合結果気にしてたし・・・」

「私、野球の結果も気にしてるけど・・・・、バスケのBリーグも・・・」

「屁理屈言わないでよ・・・」
しょうもない反論をする亜理紗に、珠樹は大きなため息をつきました。
そして右手を腰に当てて強めの口調で言いました。

「じゃあこの場でハッキリ言ってよ、バレーボールには一切興味はない、未練も無いって・・・」

「え・・・っ」

「言えたら私、もう何も言わないわ。
『卒演』のヒロインも降りて良いよ」

「・・・・・」
『卒演』のヒロインを降りれば、『おもらし』しないで済む・・・。
でも、亜理紗は言えませんでした。
やりたくても出来ないだけで、今でもバレーは大好きなのです。

「言えないのね」

「た・・・珠樹の役に立ちたかったの、バレーはそりゃ好きだけど、
ブランク開いちゃったしさ、だからいっそ新しい事やろうと思って。
それで演劇部に」

「そんなの自分に対する言い訳でしょ!
さっきも言ったけど、あんたがバレー部に入らなかったのは、
中学のおもらしのトラウマを引きずったままだからよ」

「違」

「違わない!!」
亜理紗に反論の隙を与える事無く珠樹は続けます。

「亜理紗は、おもらしを馬鹿にされるのが相当嫌だったもんね・・・。
バレー部に入ったら、対外試合とかで、おな中の人と接触するかも知れない、
そこから話が伝わって、また馬鹿にされるかも知れないとか考えたんでしょ?」

「・・・・」
図星でした。
果たしておな中の人と対外試合でぶつかったりする事が、そんなに頻繁に起こり得るのか。
また、仮におもらしした事が発覚したとして、遥か昔(と言っても数年ですが)の、
しかも、話で聞いただけのおもらし事件について、
高校生が馬鹿にしたりするのかと聞かれれば、だいぶ疑問が残ります。
でも、ネガティブ思考と言うものは、本人が気にしていれば気にしている程、
深い深い疑心暗鬼の闇に陥ってしまうものなのです。(経験談(笑))

「私の役に立ちたいって言うのが本当なら、別におもらしを躊躇しないよね。
それを嫌がってる事自体が、トラウマを引きずってる何よりの証拠よ」
ミステリードラマで、犯人を追い詰めたような口ぶりで、珠樹は言いました。

本音をズバリ言われてしまった亜理紗は、一度大きく息を吐きだすと話し始めました。

「そうよ、全部珠樹の言う通り・・・・。
未だに私は、あの時の事を馬鹿にされるのが怖くてビクビクしてるの。
だから、入りたかったけど、バレー部には入れなかった・・・。
情けないわよね・・・、自分でもそう思うけど、どうしようもないのよ・・・」
続きを話そうとすると、目に涙が溜まって来ました・・。

「トイレに行くと・・今でもあの時の事が頭をよぎって・・・、スンッ・・、
は・恥ずかしくて・・な・・、泣き・・そ・・、なる・・グス・・し・・・。
夢も・・、エグ・・・、グス・・、見・・・る・・し・・、ヒック・・ヒック。
な・・何で・・、グスッ・・・、あんな・・、あの・・と・・・き・・、
ちゃんと・・、トイレに・・行って・・・グス・・・おけ・・・ば・・・・・」

「あ・・・亜理紗、ちょっと・・・」

or007.jpg
「ふぇぇえええ~~~・・・・」
話の途中で亜理紗は、とうとう泣き出してしまいました。

「や・・やめてよ、私が泣かせたみたいじゃん・・・もう!!こっち来てっ!!」
珠樹は、泣きじゃくる亜理紗の手を取ると、グラウンドの流し台まで引っ張って行きました。
そこで珠樹は顔を洗うように亜理紗に促しました。

・・・・・・・・。

「ふぅ~~~、・・・ってか冷たっ!」
晩秋の冷たい水を顔に浴びて、亜理紗は落ち着きを取り戻しました。

「はいコレっ、少しは落ち着いた?」
そんな亜理紗に、珠樹はハンカチを手渡しました。

「ありがとう」
亜理紗は、珠樹から受け取ったハンカチで顔を拭うと続けて言いました。

「どう?わかったでしょ?私のトラウマっぷりが・・・」

「あ・・うん・・・。まさか泣く程とは思わなかった」

「思い出しただけでもこんななのに、
舞台でお・・・、おも・・、なんて、幾ら珠樹の頼みでも、悪いけど無理よ」
そう言って亜理紗はハンカチを珠樹に返しました。

「違うわ亜理紗、こんなだからこそ、やらないと駄目なのよ」
ハンカチをバックにしまいつつ、珠樹は言いました。

「はぁ?意味わかんない、って言うか、最初に戻るけど、
どうして私に、お・・・、も・・・をさせようとしてるのよ?
私のトラウマと『卒演』のおも・・・、がどう関係するの?」
亜理紗の問いに、ゆっくりと珠樹は話し始めました。

「亜理紗が演劇部に入部した時、私思ったの、
亜理紗は、まだおもらしのトラウマを引きずってるって・・・。
それで、どうすればトラウマを克服する事が出来るのかって考えて・・・」

「それが『卒演』でお・・・、する事だって言うの!?」
訝し気な表情でそう言った亜理紗に、珠樹は即「そうよ」っと返しました。

「スポーツの世界でも良く有るじゃない、誰かに負けた嫌な記憶を、
もう一度同じ相手にリベンジして打ち負かす事で、その記憶を上書きする、みたいな・・・」

「・・・・・・・はぁっ?」
亜理紗は珠樹の言わんとしている事がわかってきました。

「つまりね。中学時代の苦いおもらしの記憶を、『卒演』でおもらしする事で上書きするの」
それが、亜理紗におもらしをさせようとしている一番の理由でした。

「ば・・・、ばっかじゃないの!!何が『上書き』よ!!!
セーブデータじゃあるまいし。そんなんで克服できるわけ無いでしょ!!!」
馬鹿馬鹿し過ぎる珠樹の言葉に、亜理紗は少しイラッとして言いました。

すると、

「そんなのやってみないと分からないじゃん!!」
っと、珠樹は真剣な表情で言い返しました。

(ッ!!!何マジな顔してんのよっ!!!)

「分かるわよ!!人前でお・・・、おも・・、
した事ないあんたにはわからないと思うけどね!!!
そんな簡単な問題じゃないのよっ!!あんたまで私の事馬鹿にする気なのっ!!!」
頭に来た亜理紗は、怒りを込めて大声で言い放ちました。

「ち・・違う、馬鹿になんてしてない、私は真面目に・・・」
珠樹は驚いて、ちょっと涙目になって言いました。

「・・・・はぁ」
その表情を見て、言い過ぎたと感じた亜理紗は、一呼吸置くと、続けて言いました。

「ごめん、ちょっと言い過ぎた・・・。
けど・・、悪いけどやっぱりヒロインは降りるわ。
私の事、色々考えてくれてたのは嬉しいけど・・・。
そんな、なんの根拠もない実験みたいな理由で、
また、お・・・、したく無い・・・。
本当に、今でもつらいんだ・・・、ごめんね、珠樹」
亜理紗はそう言うと、珠樹の横を通り過ぎて行きました。

「ちょっと待ってよ亜理紗!!
昔のトラウマ蒸し返すような事をして悪いって思ってるよ。
でも、私には、これ位しか思いつかなかったの・・・、無理やり復帰させるのは違うと思ったし・・・」
珠樹は亜理紗の背に向けて言いますが、亜理紗は振り向きませんでした。

「次の打ち合わせまでに、亜理紗がOKしないと、
野口さん主演の別の脚本で行く事になる・・・。
トラウマを克服する機会を失って良いの!?、ねぇっ!!」

「ごめん珠樹・・・」
そう言うと亜理紗は駆けだしました。
直ぐに、珠樹の姿は見えなくなりました。

・・・・・。

「はぁ・・、はぁ・・・」
亜理紗は駅までの約1.5kmを走り向けました。
電車に乗り込むと、暇つぶしにスマホゲーをしながら、珠樹の事を考えました。

(珠樹、入部した時に・・・とか言ってたな・・・。
それって、その時からさっき言ってた事を考えてたって事??2年以上も前から・・・・)
亜理紗の脳裏に、珠樹と過ごしたこれまでの部活動の記憶が蘇って来ました。
努力に努力を重ねて、部長に登りつめ『卒演』の脚本を手掛けるまでになった珠樹・・・。

(今迄の努力は、私にトラウマを克服させる為だったの・・・・??全てがその為だけだとは、流石に思えないけど・・・、でも・・)
自宅の最寄り駅に着くと、亜理紗は電車を降りました。

(私なんかの為に、何でそこまでするの??・・・珠樹)



(はぁ~~、まぁ、そう簡単に納得してくれるとは思って無かったけど・・・)
亜理紗に遅れる事、数分。
珠樹は、駅までの道を一人、黙々と歩いていました。


「早く戻って来てよ。亜理紗ちゃん」




「はぁ・・、はぁ・・」
(お・・・おしっこ・・・、おしっこ・・したい)

「あ・・、ああっ!!はぁ・・」
(え・・、もうすぐ出番!?ど・・どうしよう、おしっこ・・もれ・・ちゃ」

「はっはっ・・、はぁあああっ!!ああっ!!」
(あ・・う・・、手・・離さないと、指揮できない・・でも・・でも・・・)

「あああっ!!や・・・てぇ・・やっ・・やっ・・!!」
(あっ・・手が・・勝手に・・駄目!!手を離したら・・・おしっこ出・・・)

「あっ・・・、あっ・・・、あっ・・・」
(シャアアアアアアア~~~~~~~・・・・パシャパシャパシャパシャ・・・・)

「あっ!!うぅ!!いやぁ・・・、見・・・で・・」
(止まって!!止まってぇ!!嫌ぁ!!見ないでぇ!!!)


or008.jpg
ガバッ!!!

翌日の朝。

「はぁ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・」
亜理紗はベットから、勢いよく体を起こしました。
体中から冷や汗をかいて、動悸が激しいです。

「もう・・、またあの時の夢・・・・」
亜理紗は、今でもあの日の事を夢に見ては、うなされていました。

「って事は・・・」





「お母さん・・・、その・・・、やって・・・しまいました・・・」
亜理紗は朝食の準備をしているお母さんにそう告げました。

そうです。

亜理紗は、高校3年生にもなって、おねしょをしてしまったのです。
お尻も背中もびしょびしょのパジャマを着て、亜理紗はお母さんの前に立ちました。

or009.jpg
「えっ・・・また!?この前しちゃったばっかりじゃない??」
お母さんは驚いて言いました。

「・・・見ちゃったんだもん、仕方無いじゃない」

「全くもう、早くシャワー浴びて来なさい・・・、
あ・・・、パジャマは水洗いしてから洗濯機に入れるのよ!!」

「分かってるわよ・・・」
亜理紗は、お風呂へ直行しました。

バシャッ、ゴシゴシッ、ゴシゴシッ・・・・
(もう!!珠樹のせいで、この前見たばっかだったのに、また見ちゃったじゃない!!)
昨日の事を思い出して、亜理紗は、
お風呂でパジャマとパンツを洗いながら、珠樹に悪態をつきました。
別に亜理紗のおねしょは、常習と言う訳ではありません。
あの日の事を夢に見た時だけ、夢の中のおもらしと同時に、
現実でも布団の上に世界地図を描いてしまうのです。
あの日の夢を見るのは、大体一ヶ月に1回程。
今月は先週見たばかりだったので、お母さんが驚くのも無理はありません。

「行って来ます」
その後、準備を整えた亜理紗は家を出ました。
ベランダに目をやると、僅かに見える布団の影・・・。
いくら布団を干す場所が、人目に付かない場所にあるとは言え、
自ら描き上げた世界地図付きの布団が、
外に堂々と干されていると思うと、恥ずかしくて堪りませんでした。



駅に着くと、いつも通り珠樹と会いました。

「おはよう亜理紗」

「・・・おはよう」
挨拶を交わすと、それきり会話は途絶えました。
昨日までは、他愛の無いおしゃべりで盛り上がれてたのに、
お互いに、何を話せば良いか分からず、ただ黙る事しか出来ませんでした。
電車の乗車位置に着くと、
間が持たなくなった亜理紗は、スマホを取り出してゲームを始めました。

「・・・・」
珠樹は、そんな亜理紗の姿をただじっと見つめていました。

そうこうしている内に、電車がやって来ました。
電車に乗り込んでも、亜理紗はそのままゲームをし続けました。
暫くして、珠樹はそんな亜理紗に向かって、意を決して話しかけました。

「亜理紗、昨日の事なんだけど・・・、考えてくれた?」

「・・・・・」
亜理紗は無視して、ゲームを続けました。

「ねぇ・・、聞いてる?」

「今良いとこなのよ、ちょっと待ー」

「そんなゲームなんかより大事な話をしてるのっ!!!」
大きな声を出す珠樹に、周りの乗客が一斉に目を向けました。

「ちょ・・、周りの迷惑考えなよ」
亜理紗は、慌ててスマホをしまうと、周りの人にすみませんのジェスチャーをしました。

「昨日答えたでしょ。降りるって」
亜理紗はきっぱりとそう言いました。

「今のままだと、大学行ってもバレー出来ないままだよ。
亜理紗はそれで良いの?本当に良いの?」

(バレー、バレーって・・、何なの全く・・・)
珠樹が望んでいるのは、トラウマの克服と言うより、寧ろバレー復帰の方。
そう感じ取った亜理紗は、珠樹にこう言いました。

「あのさ珠樹、私の事心配してくれるのは嬉しいんだけど。
何でそこまでして、私をバレーに復帰させようとするの?」

「え・・・っ!!」
聞かれた珠樹は、虚を突かれたかのようにハッとして、

「だって・・・、それは・・・・、」
直後、顔をほんのり赤くしました。

「・・・・覚えてないの?私は、亜理紗ちゃんー・・・」

「????」

プシュウウウウウ・・・・
っと、そこで扉の開く音がしました。
会話に夢中で気が付きませんでしたが、よく見ると、もう降りる駅についていました。

「わ・・降りないと!!!」
2人して慌てて電車から降りると、込み合う駅構内の影響で、お互いを見失ってしまいました。
そして結局、2人はそのまま教室まで再会する事はありませんでした。

(珠樹、一体何て言おうとしたんだろう・・・?)
授業を受けながら、亜理紗は珠樹が最後に何を言おうとしていたのかをずっと考えていました。
同じクラスなんだから直接聞けば良いだけの話なのですが、
教室で会った後は、またお互い何となく、話しかけ辛くなってしまったのです。

(亜理紗ちゃん・・・???)

その日、亜理紗と珠樹が会話をする事は、もうありませんでした。



放課後。

この日の部活は、発声練習や、後輩への演技指導等が行われました。

「朝野先輩ーっ!!『卒演』のヒロイン役!!凄く楽しみにしてます!!頑張って下さい!!!」
演技指導中、後輩の女子生徒が亜理紗に話しかけて来ました。

「私もです!!先輩なら、どんな役でも絵になりますからね~。この前の文化祭の時も最高だったし~」
そこに、直ぐにもう一人、後輩が便乗して来ました。

実は亜理紗は、持ち前のルックスと、バレーで鍛え抜かれた美脚とスタイルで、
校内で相当モテる(男女問わずw)存在だったりします。
演劇部内外では、二枚看板女優の一人として『美の朝野』と呼ばれており、
もう一人の『技(演技)の野口』とは、人気を2分する存在だったりするのです。
まぁ、周りが騒いでるだけで、
当の本人たちは、自分の事も相手の事も、別に何とも思っていないのですが・・・。
(新聞部は、勝手にライバル関係と決めつけて、面白可笑しく記事にしていますけど・・)

「ありがとう。でも私、ヒロイン降りるから・・・」
その言葉に、後輩たちは酷いショックを受けました。

「えええええ!!!!!なななんあななんでですかぁぁぁ!!!!」

「駄目です駄目です駄目です絶対に駄目ですそんな事!!!」
凄い形相で亜理紗に迫る2人。

「野口先輩に何か言われたんですか!!そうなんですね!!」

「待って紗季ちん、あの善人の塊のような野口先輩に限って、それはまずあり得ないわ」

「そうか・・・、じゃあ一体誰が、・・・そうか!!!」

「そうだよ紗季ちん、犯人は・・・」

「そう・・犯人は・・・・」

「あの・・君たち・・・・」
勝手に盛り上がる後輩2人に、亜理紗は戸惑いました。


or010.jpg
「部長ですね!!部長に何か言われたんですねっ!?」

(当たり(苦笑)・・・ってか、別に犯人とかじゃないから!!!)

「先輩、私達で部長に文句言って来てあげますよ?」
そう提案する後輩達に亜理紗は言いました。

「心配してくれてありがとう、でも別に珠樹は関係ないから、自分自信の問題なの」

「・・・・・」

「明後日の打ち合わせで、どうなるかは分からないけど・・、あんまり騒いだりしないで、お願い」
亜理紗がそう言うと、しぶしぶ後輩達は頷きました。

「分かりました・・・、でも先輩。私達、信じてますから・・・」



翌日。

亜理紗はわざと時間をずらして家を出ました。
珠樹と顔を合わせる機会を少しでも減らす為です。

(このまま明日の打ち合わせまで逃げ切れば、それで終わりよ。
何でそんなに、私をバレーに復帰させたいのかは分からないけど・・・。
たとえ演技でも、もう2度と、あんなみっともない事、したくない・・・)
狙い通り、駅には珠樹の姿はありませんでした。
電車に乗り込むと、スマホを取り出してゲームを始めました。

(珠樹には分からないんだよ・・・、お・・おもら・・が、
どんなに、みっともなくて・・・、情けなくて・・・、恥ずかしくて・・・)

(そして・・・・)

(死にたくなる程、絶望的な気持ちになるって事が・・・・)
そんな事を思ってゲームをしていると、直後、ゲームオーバー画面が表示されました。
それを見ながら、亜理紗は、スマホを持つ手に力を込めました。

「チッ!!課金しないともう先に進めねーじゃん!!このクソゲー・・・」

その日は亜理紗と珠樹が会話をする事はありませんでした。



そして、運命の打ち合わせの日。

(どうすれば良いんだろう、どうすれば亜理紗を説得できるんだろう・・・)
駅までの道を歩きながら、珠樹は正直焦っていました。

(昨日も結局話せなかったし・・・、LINEは既読スルーだし・・・)

「このままじゃ、亜理紗ちゃんが・・・・」
そんな珠樹にふと、あるものが襲って来ました。
まだほんの僅かではありますが、それは、『尿意』。

(トイレ行ってから家出たのに・・・、まぁ・・大分冷えるもんね・・・、
駅着いたら、取りあえずトイレに・・・)

「!!!!」
その時、珠樹の頭の中に、3日前の亜理紗との会話が浮かんで来ました。


『ば・・・、ばっかじゃないの!!何が『上書き』よ!!!
セーブデータじゃあるまいし。そんなんで克服できるわけ無いでしょ!!!』

『そんなのやってみないと分からないじゃん!!』

『分かるわよ!!人前でお・・・、おも・・、
した事ないあんたにはわからないと思うけどね!!!
そんな簡単な問題じゃないのよっ!!あんたまで私の事馬鹿にする気なのっ!!!』


「そうか・・・、そうだよね」
珠樹は、ある決心をしました。

そして・・・・・。

「ゴクゴクゴクゴク・・・・」

続く。
  1. 2016/12/18(日) 20:30:00|
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overwrite~第1話~

こんばんは。
2016年も、あっという間に後一ヶ月を切りました。
今年最後の締め括りとして、最後は長編ストーリーをお届けします。
この前のアンケートで、長編を望む声の方が多かったので、
分量を気にせずに、ビシバシと色々と盛り込んで行こうと思います。
今回は、RINさんのコメントを大いに参考にさせてもらっています。(・・・今回に限った事では無いですが)
今年一年の集大成として、良い作品にしたいと思いますので宜しければ暫くの間お付き合いください。
全3~5話位の予定。
大抵最終的に頭の中の構想の1.5倍位にはなるので・・・、まぁ5話で終わらすのを目標に(^^;

前回の日記に拍手を頂きました。
ありがとうございます。



11月も半ばに差し掛かった、ある日夕暮れ時。
ここ、黄水大附属高等学校演劇部の部室では、2月に行われる『卒業記念公演』の打ち合わせが行われていました。
この高校に通う生徒は、ほぼ全員、卒業後、附属の黄水大学にエレべーター方式で進学します。
受験勉強に追われる事が無いこの学校では、
演劇部の3年生は、卒業間近の2月に最後の公演を行う事が、毎年恒例の行事となっているのです。

「まだ不完全ではあるけど、これが今年度の『卒演』の台本よ、目を通して見て・・」
そう言って、部長の渡辺珠樹(たまき)は、
1、2年生の部員が帰った後の部室に残った3年の部員に、自ら書いた台本(β版)を手渡しました。

既にヒロイン役に決定していた、朝野亜理紗(ありさ)は、
珠樹から受け取った台本を、早速、食い入るように読み始めました。
自分の役回りはどんなものか・・・、動きは、セリフは???
一心不乱に内容を理解しようと努めました。
実は、亜理紗がそれ程まで真剣になるのには、一つ、大きな理由があるのです。

(最後の方まで来たけど・・・、何の変哲もない、フツーの恋愛劇よね、コレ???)
内容を要約すると、主人公の男が、2人の女の子の恋心に思い悩み、最後にヒロインを選ぶと言うもの。
たったそれだけでした・・・。

(珠樹ってば、最後の最後でこんなつまらない劇をやりたかったの・・・??)
珠樹と亜理紗は中学時代からの親友です。
亜理紗は、珠樹が「将来は構成作家か脚本家になるのが夢です」と言っているのを常々聞いて来ました。
そして実際、口先だけでは無く、
これまで沢山の素晴らしい台本を書き上げて、先輩達を唸らせて来ました。

(『卒演』でしょっ!!こんなので良いの!?)
その実力が認められて、部長に選ばれた経緯を、亜理紗は間近で見て来ているだけに、
この(言っては悪いけど)余りに稚拙な内容には少し愕然としました。
それは亜理紗だけでは無かったらしく、台本に目を通している全員が、
酷くがっかりした顔をしているのがありありと見て取れました。

(まぁ・・私としては助かるけどさ・・・)
亜理紗がそう思ったその時、不満そうな顔をした男子部員が珠樹に言いました。

「部長・・、言っちゃ悪いけどこの内容じゃ・・・」

「うん・・・、客も喜ばないし、俺達もやる気起きないと言うか・・・」
一人が言い出すと、大半の部員が不満をぶちまけ始めました。
珠樹は両手を突き出してそれを制すと、話し始めました。

「ちゃんと最後まで目を通してから言って・・・、それと初めに言ったでしょ・・。
まだ不完全だって、コレは最低限の流れと最後の見せ場だけ取りあえず書き出しただけよ」

「最後の・・見せ場・・・??」
不安になった亜理紗が、まだ見ていない最後の最後のページを見ると・・・・。
そこには衝撃的な内容が記されていました。

「おおーー!!」
「これは・・・・!!」
「流石部長!!」
「新しいですねー!!」
「やっぱ『卒演』はこうでなくちゃ!!」
亜理紗と同じく、最後のページを見た部員からは、感嘆の声が次々と上がりました。

でも亜理紗はと言うと・・・、
顔を真っ赤にして怒りを堪えていました。
そして、珠樹に目を向けて言いました。

「何よっ!!最後に書いてあるコレは!!」

「何って、『卒演』なのよ?別に驚く事じゃ無いでしょ?」
珠樹は何をそんなに怒っているのかと言わんばかりに返しました。

黄水大附属高等学校演劇部の『卒業記念公演(略して卒演)』には、
伝統とも言うべき、あるお約束が存在していました。
それは、見ている観客が引くような、どぎつい演出を劇の中に最低1つ入れると言うものです。
勿論、亜理紗は、その事を承知の上で、ヒロイン役を引き受けました。
ヒロイン役を推薦してくれたのが、今、目の前で対峙している、
親友であり、恩人でもある珠樹だったからです。
珠樹の為なら、ちょっと位嫌な事でも我慢しようと言う気持ちでした。
ですが、最後に書いてる内容については、話が別です。

「こんな事出来る訳ないでしょ!!主人公の告白に、
感情の高ぶりが頂点に達したヒロインが、・・・お・・・思わ・・ず・・・」
亜理紗は一旦そこで言葉を切りました。
亜理紗にとって、その後に続く言葉を発するのは、かなり精神的な苦痛が伴う事なのです。

「お・・・お・・・・」
ドクン・・、ドクン・・・、

「お・・・おもら・・・・し・・・、をしてしまう・・・なんて・・・」
亜理紗は、冷や汗を滲ませながらなんとか言いました。

「ほ・・本気で言ってるの・・・、ってか本当にするの・・・?舞台上で!?」

「当たり前でしょ、『卒演』なんだから。それに、演技としてするだけよ、別に恥ずかしがること無いわ」
珠樹のその言葉に、

「そうそう」
「去年までとは違ったインパクトあるし」
「誰もガチでやったなんて思わないよ」
「伝統の『卒演』に、新たな伝説を作ろうぜ!!」
「今年もネットで話題騒然間違いなし!!」
と他の部員たちも続きました。

黄水大附属高等学校演劇部の『卒業記念公演』は、
そのお約束の過激さから、昔から地元では注目されてきました。
ですが近年、何処の誰の仕業か分かりませんが、公演中の動画が、動画サイトに上げられてしまい、
それを皮切りに、注目度が飛躍的に上昇してしまったのです。
今では『今年はどんな演出が来るのか!?』『今年も凄かった』等、
毎年ネット上で騒がれる程、全国的に注目されています。
公演の当日券が売られていたのは、もう昔の話。
今年度の一般チケットは、昨年度に続いて、既に予約だけで完売していました。

(何よ皆してっ!!他人事だと思って・・・)
見に来てくれる人や、これまで伝統を保って来たOB・OGの先輩たちの期待を裏切るわけには行かない。
亜理紗もその辺の事は重々承知しています。
他の過激な事なら幾らでもやるつもりでいた亜理紗でしたが。

『おもらし』

これだけは、とても承諾できるものではありませんでした。

「珠樹・・・、悪いけど、この内容なら私はヒロインを降りるわ」

「えっ!!」
「ちょっ!!」
「何でっ!!」
亜理紗の言葉に、部員たちは驚きの声を上げました。

(・・・はぁ)
でも、珠樹だけは表情を変えずに、じっと亜理紗を見つめていました。

「去年までに比べれば可愛いもんじゃん」
「おもらしって、漫画のテーマになったりして、今、結構注目されてるんだよ!!」
「今更降りるとかなしでしょ!!」
「その選択は超勿体ないよ、朝野さん」
部員たちは、何で?どうして?と言わんばかりに、亜理紗に迫りますが、全部無視しました。

「とにかく、私、降りるから・・・」
そう言って、帰り支度を始める亜理紗に、珠樹がようやく口を開きました。

「まぁ、そんなに怒らないでよ亜理紗。まだ時間はあるし、もう少し考えてみてくれない」

「考える必要ないわ。野口さん、代わりにやりなよ」
亜理紗は自分の代わりに、演劇部で最も演技が上手いと評判の野口さんを推薦しました。
野口さんは人が良いので、亜理紗がヒロインに決まった時も、特にこれと言った批判をしませんでした。
でも心の底では、きっと今でも、一番演技力のある自分こそが、ヒロインに相応しいと思っているハズです。

「え・・・、良いの!?伝統ある『卒演』のヒロインを、私なんかがぁ~~っ!!!」
亜理紗の予想通り、案の定、野口さんは一瞬驚きましたが、直ぐに顔が緩んで、満更でも無いと言う顔をしました。

「悪いけどそれ無理。このお話は、亜理紗がヒロインをやる事を前提に書いてるものだから」
珠樹のその言葉に、亜理紗はショックを受けました。

(何よそれ・・、つまりおもらしは、演出としてするんじゃなくて、私にさせる為にするって事じゃないっ!!)
そして珠樹に対して、怒りが込みあげて来ました。

(酷い珠樹・・、中学時代の私の事、知ってるくせに・・・)

「・・・帰るわ」
亜理紗はそう言うと、足早に部室を後にしました。

(・・・亜理紗)
亜理紗の居なくなった部室で、珠樹は深くため息をつきました。

(いきなり過ぎたかな・・・、でもこれも亜理紗の為・・・)

その後、次のミーティングまでに、ヒロイン問題をハッキリさせると決めて、この日は解散となりました。



それから数分後、
珠樹が一人で下駄箱までやってくると、そこで亜理紗に会いました。

「帰ったんじゃなかったの?」
そっけなく話す珠樹に、亜理紗は語気を強めて言いました。

or001.jpg
「どういうつもり・・・?」
頭に血が昇って、一度は帰ろうとした亜理紗でしたが。
下駄箱に辿りついた頃になると、少し落ち着きを取り戻していました。
そして、珠樹が、何のつもりで自分におもらしをさせようとしているのか、その理由を知りたくなったのです。
同じクラスなので、明日でも良いと言えば良いのですが、
直ぐに珠樹から話を聞きたいと思った亜理紗は、下駄箱の前で珠樹が来るのを待っていました。

「珠樹は知ってるでしょ!!私の事・・・!!なのに何で・・・」
問い詰められた珠樹は、下駄箱から取り出した革靴を床に置きつつ言いました。

「亜理紗がそういう考えだからよ・・・」

「・・・は?」
亜理紗には、珠樹が何を言おうとしているのかが、良く分かりませんでした。

「亜理紗、あなたは今だに中学時代のトラウマを引きずったまま、あそこで時間が止まってしまっている・・・」
そう言われた亜理紗は、胸に針を刺されるような痛みを感じました。
ですが、そんな痛みに耐えながら反論しました。

「そ・・・そんな事無いわよ、そりゃ、あの時は死にたいって思った事もあったけど。
高校入ってからは、あの時の事は忘れて、毎日明るく楽しく・・・」

「嘘よ、だったら何で・・・。何で大して興味の無い、演劇部に入ったの!?」
こんな今更の時期に今更な質問を、珠樹は凄く真剣な目つきで言いました。

「それは・・・」
もう殆どの人が、亜理紗の事情についてはお察しだと思いますが(笑)、ここで、お話します。

亜理紗は小学校低学年のころから、ずっとバレーボールをやっていました。
本人の努力に加えて、圧倒的な才能を秘めていた事もあり、
中学に上がる頃には、バレー界では期待の子として注目されていました。
中学レベルでは、並び立つ子は他にいなく、
1年の夏の大会の時点で、既にエースとして活躍していました。
2年の秋には当然キャプテンとなり、その実力でバレー部を引っ張って行きました。
っと、そこまではとても順風満帆な中学生活を送っていた亜理紗ですが、
その年の晩秋に悲劇が起こったのです・・・。



それは11月に行われた、合唱コンクールの時の事でした。
指揮者に選ばれていた亜理紗は、次が自分たちのクラスの番と言う時に、必死にあるものと戦っていました。

勿論、それは『尿意』。

その日は、登校直後に1度トイレに行ったきりだった亜理紗は、
緊張と冷え込みにより、おしっこを相当溜めてしまっていたのです。
自分たちのクラスの番の時には、もうスカートの前をぎゅうぎゅうに抑えてないと、
直ぐにでもおしっこが出て来てしまいそうな位、切迫した状況になっていました。

『指揮者なんて先生に任せて、スカートの上から股間をぎゅうぎゅうに抑えたままでも、
とにかくトイレに駆け込めばよかったんだ・・・』と、
亜理紗は、後にその時の事を何度も後悔することになりました。

でも、後悔は先に立たず・・・。
その時の亜理紗は、指揮者を放棄してトイレに行くなんて、考える事が出来ませんでした。
結果、指揮をするために、股間から手を放した瞬間に・・・。

or002.jpg
シャァァァァァァアアアアアァァァァアァアアァァァアアァァァァアア~~~~~・・

前にはクラスメイト、後ろには残りの全校生徒に教職員、
更に教育委員会のお偉いさん方まで見つめていると言う状況の中で、
亜理紗は指揮者の台に立った状態で、盛大におしっこをもらしてしまいました。

「い・・・いやぁ!!止まってぇ!!止まってよ!!!」
亜理紗は直ぐに両手でスカートの前を抑えて止めようとしましたが、
そんな事で一度出てしまったおしっこが止まる訳がありません。

パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ・・・

おしっこは、スカートの中から、大きな湯気を立てながら、勢いよく吹き出して、
指揮者用の足場に落ちて、周りに飛び散りました。
また一部は、パンツから亜理紗の細いながらもしっかりと筋肉のついた太ももを伝い、
靴下と上履きを薄黄色に染めあげて行きました。
前を抑えてしまったことで、スカートの前、袖口、制服の上着の一部もおしっこでびっしょりと濡らしてしまいました。
溜まりに溜まったおしっこは、なかなか終わらず、亜理紗を中心とした広範囲におしっこの大海原が広がりました。

更に・・・

「うわっ!!きたね~」
「かかった!!」
「どうしてくれんだよ!!」
「ふざけんな!!」
亜理紗の立つ足場の近くにいた何人かの生徒に、飛び散ったおしっこが掛かり、2次被害をもたらしていました。

「う・・っ、うわ~~~ん」
余りの恥ずかしさに、亜理紗はその場にしゃがみ込み、幼稚園児のような声をあげて大泣きしました。

『ザワザワ・・、ヒソヒソ・・・』

突然の事に、会場である体育館は騒然としました。
暫くすると、保健の先生が、泣いている亜理紗の元に駆け寄りました。
先生は、亜理紗の腰に持って来た大き目のタオルを巻くと、肩を抱きながら保健室に連れて行きました。

「朝野先輩・・・」
「うわぁ・・・」
「・・・赤ちゃんみたい」
体育館を抜ける途中、部活の後輩達の嘲笑うような会話が聞こえて来て、
亜理紗は、心臓が張り裂けそうになりました。

保健室に来ても、亜理紗は泣き止むことが出来ませんでした。

「えーーーん、うわぁあああ~~~ん!!」

(皆に私のおもらし姿見られた・・・。あんなみっともない姿を、男子にも、部活の後輩にも・・・)

「う・・うぐ・・・、ヒック・・・、うえぇえ~ん」

(終わった・・、私の人生終わった・・・、もう死にたい・・・、今すぐ、死にたい・・・)

「朝野さん、大丈夫よ、失敗は誰にでもあるんだから。取りあえず、お着替えしましょう、ね?」

「ぐす・・・、ヒック、ヒック・・」

「一人で、着替えられる?って無理か・・・」
とても一人で着替えられそうにないと判断した先生は、
その場にしゃがみ込むと、亜理紗のスカートのホックに手を掛けました。

「じゃあ、スカート脱ごうね~、片足ずつ足あげようか?うん良しっ、はい、脱げたね、偉い偉い~」

「えぐ・・、うう、ふぇぇぇえ・・・」

or003.jpg
「次はおパンツ脱ごうね、びっしょりで気持ち悪いもんね・・・、片足あげて~・・」
この調子で先生は幼稚園児をあやす様にして、亜理紗のお着替えを進めて行きました。

お着替えが終わると、亜理紗は先生からお土産袋を受け取りました。
着ている物のほとんど全てをおしっこで汚してしまった為、
その量は、ビニール袋2つ分と言う、相当な物になってしまいました。

ジャージ姿となった亜理紗は、ようやく泣き止むと、通学鞄にその恥ずかしいお土産を強引に詰め込みました。
自らのおしっこで汚した衣類で、不自然に膨らんだ通学鞄を見つめると、
情けなさが込み上げて来て、また泣き出しそうになりました。

まだコンクールは続いていましたが、今日については、そのまま帰る事が許されました。

「・・・ありがとうございました」
小さな声でお礼と言うと、亜理紗は鞄を背負いました。

「気を強く持ちなさい、ショックなのはわかるけど、明日もちゃんと学校に来るのよ、良いわね」

「・・・・・・・」
先生の問いに亜理紗は応える事が出来ませんでした。
そんな亜理紗を見てかねて、先生は、亜理紗の頭を手で掴むと強引に、「うん」と頷かせました。

「良し!!それじゃ気をつけて帰るのよ」

そうして一人、不自然に膨らんだ通学鞄を背負って亜理紗は家に帰りました。

家に帰ると、亜理紗は直ぐにシャワーを浴びました。
そして、そこでまた涙が枯れるくらい泣きました。

その後、亜理紗は母親におもらしをした事を話しました。
怒られることはありませんでしたが、母親は保健の先生と同じく、
「明日も休まず学校に行くように」と言いました。



「学校、行きたくないなぁ・・・」
翌日、亜理紗は嫌々ながらも、勇気を振り絞って学校に行きました。
亜理紗的には、小学校低学年時代にやらかした子が、
男子から「おもらし女、おもらし女」と、連呼され続けられたイメージが強く、
特に男子からの嫌がらせを警戒していました。
ですが以外にも、いやらしい目で見つめて来る感じがおもらし以前より強くなった位で、
男子が本格的にからかって来ることは殆どありませんでした。
その代わり、同性である女子の、
これでもかと言う程の陰湿極まりない悪口爆撃には、正直かなり疲弊しました。
特に酷かったのが女子トイレ内で、亜理紗が個室に入っているのを分かった上で、
意地汚い女子の集団が、悪口を言い続けました。

「さっきの授業中、危なかったぁー、昨日の朝野なんとかさんみたいになるとこだったぁー」
「ちょっとー、勘弁してよねー、超汚いじゃーん」
「それにしても昨日のあれさー、凄い量だったよねー」
「流石、バレー部の天才キャプテン様はおしっこの量も天才的だわー」
「私達じゃあ、到底真似できないわよねー」
「アハハー、したくねぇーー!!!」
しかも率先して、亜理紗のおもらしを馬鹿にしているのは、同じバレー部の部員達でした。

光の指す所に闇あり。

天才的なバレーのセンスで、周囲にその名を轟かす亜理紗に憧れを抱く人もいれば、
一方でそれと同じくらい、僻んだり妬んだりする者も存在します。
体育館でのおもらしは、そんなアンチ亜理紗勢力の、格好のネタになってしまったのです。

(き・・・気にしない、気にしない、負けるな亜理紗!!
あんな才能の無い奴らに何言われたって平気よ!!
・・・部活に行けば、私の事助けてくれる子だってきっといるわ・・・)
そんな淡い期待を込めて、亜理紗は放課後、部活に向かいました。
しかし、そんな期待は直ぐに消し飛んでしまいました。

亜理紗が、ネット張りなどの準備をしている後輩の横を通り過ぎた時、その後輩は挨拶をしませんでした。
その事に怒った亜理紗は、

「挨拶は!!」
と怒鳴りました。
すると後輩は、ようやく、しぶしぶ小さな声で挨拶をしました。

(何なの・・・、たるんでるわね・・・)
そう思った直後、その後輩が小さな声で言いました。

「威張ってんじゃねーよ、おしっこもらしたくせに・・・」

(!!!!)
その一言に、亜理紗は衝撃を受けました。

「ちょ・・・、今なんて言ったの!!!」
亜理紗は、動揺しながら後輩に迫りましたが、後輩は、

「別に何も、・・ってか邪魔なんですけど」
っと酷く人を見下したような目をして言って来ました。
これまでの、凛々しいキャプテン像と、
昨日の、赤ちゃんみたいに泣きながら体育館を去っていく姿とのギャップが、余りに激し過ぎたからでしょうか。
その後輩だけではなく、部の後輩すべてが、亜理紗に対して舐め切った態度で接して来ました。
代わりに後輩は、同じクラスの副キャプテンを支持する態度を取りました。
この副キャプテンこそ、女子トイレで最も声高々に亜理紗の悪口を言っていたアンチ勢力の大元締めです。
その日、亜理紗がいくら部員に指示を出しても、誰も相手にしてくれませんでした。
聞こえてくるのは、

「もらしが何か言ってる」
「もらしうるさいんだけどー」
「さっさと帰れよもらし」
と言った悪口の声だけです。

(もらし、もらしって、な・・何よ!!私の・・・、キャプテンの言う事が聞けないの!!!)
一方で、副キャプテンの指示には、皆しっかりと従いました。
たった1日、たった一度のおもらしで、亜理紗は部活内で孤立してしまいました。
居た堪れなくなった亜理紗は、部活を途中で抜けて帰宅しました。
もちろん呼び止めるものは誰一人として居ませんでした。

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(・・・・本気で死にたい)
帰りながら、亜理紗は本気で自殺を考えました。
その衝動を必死で抑え、何とか家に帰ると、
亜理紗は直ぐに自室のベットの中に潜り込んで、声を殺して泣き続けました。

(もう無理だ・・・、学校無理・・・、バレーも無理、全部無理!!!!!!無理無理無理無理!!!!!)

翌日、亜理紗は、ベットから一歩も外に出る事が出来ませんでした。

(学校に行ったら、また皆に馬鹿にされる、もらし、もらしって・・・、もう嫌・・・)
その日から暫く、亜理紗は部屋に引きこもりました。
その間、トイレでおしっこをするだけで、おもらした時の事がフラッシュバックして、
その度に、涙が止まらなくなりました。



亜理紗が部屋に引き籠ってから4日目の夕方。
一人のクラスメイトが亜理紗を訪ねてやって来ました。
2年生になって新しく友達になった、渡辺珠樹でした。

「あ・・・、朝野さん?大丈夫」
ドア越しに声をかけた珠樹でしたが、亜理紗からの返事はありませんでした。

「入るよ・・・」
亜理紗の返事を待たずに、珠樹は中に入りました。
亜理紗はベットの上で布団に包まって顔を出そうとしませんでした。

「その・・・、げ・・・元気?」

(・・・元気な訳ないじゃない、さっさと帰れ!!)

「何・・?学校だけじゃ飽き足らず、わざわざ訪ねて来てまで、バカにしに来たの。ご苦労な事ね」
亜理紗は完全にやさぐれてしまっていました。

「良いわ、聞いてあげるから、早く言ってよ・・・。満足したらさっさと帰って・・・」
自嘲的にそう言うと、亜理紗は布団の中でさらに身を丸くしました。

「ち・・違う、違うよ、朝野さん!!私、その・・・心配で・・・」

「・・・・・」

「学校・・、来なよ。み・・皆も心配してるし、その・・、悪口言ってた子達も、言い過ぎたって」

「嘘よ!!そんな事言って、学校行ったらまた馬鹿にするんでしょ!!もらし、もらしって!!!」

「嘘じゃないよ!!皆、謝りたいって言ってる。だから朝野さんと一番仲良しな私が励ましに行く事になって、こうして・・・」

「うるさい!!誰がそんな事信じるもんか!!帰れ!!帰れぇえええーー!!」

疑心暗鬼に陥っていた亜理紗に、そんな話はとても信じられませんでした。
頭に来た亜理紗は、突然むくりと起き出すと、近くにあった枕を珠樹に投げつけました。

「・・・分かった、今日は帰るね」
そう言うと珠樹は、ドアの方へ向かいました。

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「今日はごめんね、亜理紗ちゃん・・・。明日また迎えに来るから・・・」
最後にこう言って珠樹は帰って行きました。

(行かないわよ、学校なんて・・・。もう2度と行くもんか!!)

翌日、珠樹は言った通り、亜理紗を迎えに来ました。
でも、亜理紗は学校に行こうとしませんでした。
すると、放課後にまた珠樹はやって来て、また亜理紗を説得しました。

・・・そんなやり取りを、1週間程続けていると、珠樹の根気が遂に実りました。

「渡辺さん・・・、私、その・・・、学校、行ってみようかなって・・・」

「本当!!!良かった・・・、本当に、良かった・・・」
その時の珠樹の目には、涙が浮かんでいるように見えました。

その翌日、亜理紗は珠樹と共に教室に向かおうとしました。
でも、途中で足がすくんでしまい、無理でした。
保健室には何とか行く事が出来たので、
それから、中学を卒業するまで、亜理紗は、保健室登校をする事になりました。
キャプテンとして頑張っていたバレー部には、
あの日以来、結局戻る事は出来ず、事実上退部と言う形になってしまいました。
ちょっと悔しい気持ちはありましたが、そんな穴を埋めてくれたのは、珠樹でした。
珠樹は暇を見つけては、ちょくちょく保健室を訪れて、亜理紗の話し相手になってくれたのです。

3年生になり、進路の話題になると、珠樹は『黄水大附属高等学校』を受けると言うので、
亜理紗も、そこを受験することにしました。
珠樹と同じ高校に通いたいと言う気持ちは勿論ありましたが、もう一つ、大きな理由がありました。
『黄水大附属高等学校』は幼稚園から大学までの一貫教育制を敷いている学校で、
進学はエレベーター式の人が殆どで、途中で他所から入る人はごく僅かなのです。
つまり珠樹を除いて、同じ中学の人が存在しない環境で、学校生活をやり直す事が出来ると言う訳です。

(落ちたら、働きながら夜間学校にでも通おう・・・)
そう考えていた亜理紗ですが、決して得意ではない勉強を必死で頑張り、
「保健室登校」と言う内申書でかなり不利になりそうなハンデを乗り越えて、
珠樹と共に無事に合格することが出来ました。

「やったー!!珠樹!!珠樹のおかげだよ!!本当にありがとう!!高校でもよろしくね!!」

「ええ、高校では、教室で沢山お話ししましょう、亜理紗!!」
こうして二人の高校生活は幕を開けました。

そして。

月日は流れて、約2年半後・・・、現在に至ります。

続く。
  1. 2016/12/05(月) 20:04:42|
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